先日、日本郵政グループが、かんぽ生命保
険の不適切な商品販売に関する調査につい
て、中間報告をしましたが、その際、日本
郵政グループの経営者の説明をきいて、私
は不快感を感じました。
「取締役会のガバナンスが機能していない
のでは?」との報道陣の質問に対して、日
本郵政の長門社長は、「現場からまったく
情報が上がってこなかったから、ガバナン
スが発揮されなかったが、議論する材料が
十分あれば、きちんと機能できる取締役会
だ」と回答しました。
これは本末転倒で、日本郵政グループの経
営者は、上がって来た情報だけで意思決定
をしてきた、すなわち、単に神輿の上に担
がれていたにすぎないということを、自ら
述べているようなものです。
本来なら、悪い情報はなかなか経営者には
届かないという前提で、もっと現場で起き
ていることが伝わるしくみをつくっていな
ければ、今回のような状態に陥ることは、
必然と言えるでしょう。
100歩譲って、経営者はすべての情報を
集めることが極めて困難であるとしても、
かんぽ生命には、法令違反や社内ルール違
反の可能性のある契約が6,327件もあ
るのに、それに経営者が気づかないでいた
ということは、経営者の感度は極めて低い
と言えるでしょう。
さらに、昨年4月に、日本放送協会が、か
んぽ生命の不正販売問題に関する番組を放
送した際、それが事実かどうか、社内で調
営委員に抗議をしています。
(ちなみに、長門社長は、その番組の内容
について、「今となっては全くその通り」
と、適切であったことを認めています)
このように、少なくとも昨年の時点で自ら
状況を確認する機会があったにもかかわら
ず、それを逃してきたことについては、経
営者としては失格だと思います。
ちなみに、日本郵政グループの体質につい
ては、日本経済新聞OBで、2014年か
ら、ゆうちょ銀行の社外取締役も務めてい
る、ジャーナリストの町田徹さんが、同グ
ループでは郵便局長が力を持っており、本
社には現場で起きていることについてなか
なか情報が上がって来ない体質になってい
ると指摘しています。
(ご参考→ https://apple.co/2o5Kd8z )
そのような会社であれば、なおさら、日本
郵政グループの経営者は、その体質を壊す
ことに、多くの努力をはらってこなければ
ならなかったはずです。
ところで、ここまでが前振りで、今回の記
事の本旨は、日本郵政グループの経営者の
方の批判ではありません。
日本では、経営者というと、経営戦略を立
案して実践したり、収益目標を達成するた
めの陣頭指揮をとる役割と考えられがちで
あり、日本郵政グループの経営陣もそのよ
うなことを実践しようとしていたのでしょ
う。
時の報道陣からの、「高い営業目標を現場
に課した責任をどう考えるか」という質問
に対して、「収益は当初の見通しから上ぶ
れており、耐えられないような目標を課し
ているという印象は当時はなかったが、結
果として厳しい目標を課していたのだと思
う」と回答しているように、収益目標につ
いては高い意識を持っていたようです。
もちろん、経営者が収益に関して責任感を
持つことは当然ですが、日本郵政グループ
の場合は、前述の通り、経営者は神輿に担
がれていた状態で、「ガバナンスが発揮さ
れていなかった」と自ら認めることになる
ような状態でした。
ですから、収益を達成しようとするために
は、まず、ガバナンスが有効な体制が整備
されていなければ、不祥事などが起きて、
本来の目標が達成されなくなってしまうと
いうことが、今回の記事の結論です。
中小企業でも、あまり数は多くありません
が、従業員の不祥事で思わぬ損失が発生す
ることがあります。
その典型例は横領や癒着ですが、そのよう
なことが起きることを防ぐために、定期的
な配置転換の実施を経営者に提案したりす
ると、負担の大きさを理由に拒まれてしま
うことが多いと私は感じています。
実は、中小企業の方が、社長と従業員の距
離が近いので、配置転換などは実施しにく
いのかもしれません。
ただ、経営者は「攻めの姿勢」だけに気を
とられていると、不意に身内に足をすくわ
れることになりかねません。
今回の日本郵政グループの事例を他山の石
として、事業の成長のためには、まず、不
祥事が起きない体制づくりが欠かせないと
いうことを理解する機会にしていただけれ
ばと思います。
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