鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

月次決算速報は翌月3営業日までに報告

[要旨]

岩田松雄さんが社長を経験した3つの会社では、月次決算数値は、翌月の20日前後に報告されていましたが、岩田さんは、概算値で構わないので、3営業日に提出するよう改善したそうです。そうすることで、投資や出店の可否に関し、強気でいくのか、慎重にいくのか、様子を見るのかといった経営判断を、迅速、かつ、的確に行うことができるようになったそうです。


[本文]


今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、経営というのは、雨が降っている真夜中に飛行機を操縦しているようなものなので、飛行機が墜落しないよう、正しく「計器」を見ることができるようにしておかなければならない、すなわち、適時に会計データを取得できるような体制を整え、それを経営判断に活用しなければならないということについて、説明しました。

これに続いて、岩田さんは、月次決算の迅速化が重要ということについてご説明しておられます。「経営で知っておくべき数値は、最終的には、経理的な情報です。ですから、どの会社でも、概算でもよいので、前月の決算速報値を早めに欲しいというお願いをしました。投資や出店の可否などの経営判断をするときに、強気でいくのか、慎重にいくのか、様子を見るのかの判断材料として、足元の数字が欲しいのです。私が社長を経験した3社とも、いわゆる月次決算数値は、翌月の20日前後に情報が提供されていました。

それを、速報値は、精度が高くなくても、100万円単位でよいので、3営業日ぐらいに欲しいと経理部門にお願いしました。精度の高い月次決算値は、8営業日前後を目標にしてもらいました。私の経験上、月次決算を20日→8日ぐらいまでに短縮するのは、業種にもよりますが、そんなに難しいことではありません。システム投資などをせずに、各事業部の「しつけ」の部分でなんとかなります。それをさらに縮めようとすると、かなり高額なシステム投資が必要になってきます。ですから、8営業日を目標としました」(91ページ)

岩田さんが社長を経験した会社は、スターバックス、アトラス、ザ・ボディショップなど、大手ばかりですが、そんな会社でも、前月の会計情報は20日前後にならないと入手できないようでした。それくらい、会計情報を迅速に入手することは容易ではないということが実態なのだということも分かります。ただし、そのようになっている理由は、会計取引の記録は管理業務であり、直接的に収益に結びつくものではないという考え方をする経営者が多いからではないかと思います。

確かに、会計取引の記録は管理業務なのですが、岩田さんのように、迅速な経営判断を行うためには欠かせないものであり、誤った判断を避けたり、収益機会を逃さないためには重要な情報を取得する活動です。したがって、会計情報を迅速に集める体制の整備は、ヒット商品を開発したり、顧客に対する営業活動と同様に、収益に結びつく活動と考えるべきだと思います。

2023/5/31 No.2359