鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

プロセスを指示する

今回も、多くの方が分かっていると考えて

おられるものの、コンサルティングをして

いる中で、なかなか実践することが難しい

と私が感じていることについて述べたいと

思います。


それは、経営者の方が従業員の方に対して

具体的な行動を指示するということです。


経営者の方の多くは、従業員の方に対して

なかなか思うような行動をしてもらえない

という不満をお持ちのようです。


このような状況に対して、経営者の方は

頻繁に指示はしていると考えてはいる

ものの、あまり効果がないと感じている

ようです。


このような状況の原因はひとつではないと

考えられますが、大きな理由としては

結果を求める指示をしているからでは

ないかと私は考えています。


具体的には、「できるだけ多くの顧客を

まわって、今月中に、5件の新規の契約を

獲れ」という指示をしているとすれば、

従業員の方の動きはあまり変わらないと

私は考えています。


このような指示をする前提としては、

たくさん顧客を回る工夫を自ら行え、

契約がとれるような顧客との折衝の

工夫を行え、そうすれば、その努力の

生家は、自ずと実績となって現れると

いう意図が含まれていると思います。


しかし、このような指示を受けた

従業員の方は、「すでにできる限りの

顧客訪問は行っているし、折衝も一生

懸命に行っている」と考えていると

考えているでしょう。


そして、最終的には、「5件の新規

契約を獲れ」という結果だけを求め

られているというようにしか受けとめ

られないことになってしまいます。


もちろん、従業員の方が、営業活動は

現状が限界だと考えていることが正しい

とは限りません。


だからこそ、「できるだけ」という

主観の余地のあることばを指示の中に

入れることは避けなければなりません。


それではどのように伝えればよいのか

というと、例えば、「過去に受注があった

ものの、1年間、新規受注がない顧客を

リストアップし、1日に5件ずつ訪問

して欲しい。


その際、新たな取引は売り込まなくて

よいから、なぜ、受注が途切れたか、

理由を聞いてきて欲しい」というような

指示をするとよいと私は考えています。


このような指示は、「なるべく」という

言葉がない上に、何をするのかという

ことが明確です。


また、行動したかどうかが問われている

ので、「営業活動はしてみたが、実績は

なかった」ということにはなりません。


顧客に状況を聞いてくるという活動を

指示しているので、行動する責任はあり

ますが、結果責任はありません。


従業員の方に結果責任をとらせようと

すると、「実績は得られなかった」と

いう答えをされてしまいますが、

「このように動け」というと、「動く

ことができなかった」とは言えなくなる、

すなわち、実際に動かざるを得なくなる

ということです。


ただし、前述のような指示については、

議論の余地は残ります。


従業員の方に結果責任を負わせない

ことが、必ずしも正しいとは限りま

せん。


しかし、なかなか行動が変わらないと

いう状況においては、動くようにする

ことが優先されると思います。


もうひとつは、行動だけを指示して、

実績が得られるのか疑問が残るという

ことです。


ここは、経営者としての能力が問われる

ところだと思います。


確かに、経営者としては給与を支払って

いるのだから、その分は、自分で稼いで

欲しいという思いもあるでしょう。


しかし、単に結果を求めるだけでよい

のであれば、どのような人でも経営者に

なることができます。


どういった方法で売上を得るのかを

考えたり、どのように人材を育成するか

という方針を考えたりすることは、

経営者の方の重要な役割です。


会社の業績は、経営者の能力の巧緻で

決まるわけであり、このような能力が

発揮できなければ、事業は早晩行き詰る

でしょう。


確かに、従業員の方の成熟度が高ければ

結果責任を負わせることが得策という

ことになりますが、そうなるまでは、

経営者の方の責任で育成しなければ

なりません。

 

 

 

 

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