このような方はあまり見かけませんが、
私は、これまでに、「会社の決算書の
作成は、税務署のために、すなわち、
納税のために行っている」と考えている
経営者の方に何人かお会いしたことが
あります。
これは、冗談ですが、日本の中小企業の
ほとんどが「税」理士の方に決算書を
作成してもらっているから、税務署の
ために作っていると思ってしまうのかも
しれません。
話しを戻して、大多数の方は、言及する
までもなく、決算書は自社の業績を
明らかにするために作成しているという
ことはご存知です。
ちなみに、株式会社は会社法第435条
などによって、決算書(各事業年度に
係る計算書類)を作成することが規定
されています。
ところで、先ほど、決算書は自社の業績を
明らかにするために作成していると述べ
ましたが、決算書を経営者の方が、実際に
じっくり見ている会社はどれくらいある
でしょうか?
このように書くと、どの会社でも経営者は
自社の決算書をちゃんと見ているはずでは
ないかと思われるかもしれませんが、
実は、自社の決算書を見ている経営者の
方は、意外に少ないと私は思っています。
「いや。私は自社の決算書をちゃんと見て
いる」と反論される経営者の方もおられる
でしょう。
しかし、「自社の状況を銀行や株主に説明
できる」とか、「先月の●●部門の収支は
●●円の黒字だ」と直ぐに言えるという
程度までしっかり見ている経営者の方は、
これもしっかりと数えてはいませんが、
10%もいないのではないでしょうか?
むしろ、半数位の経営者の方は、年に
1度、税務申告の前に税理士の方から
説明を受ける程度だと感じています。
これには、ひとつの事情があると私は
思っています。
というのは、月次試算表を作成するだけ
でも、中小企業にとっては負担感が大きい
のではないでしょうか?
日々の仕事に追われている中では、経理の
ことは後回しになってしまい勝ちという
事情も理解できなくはありません。
とはいえ、私は、経理のことを後回しに
するということはお薦めしません。
これは、建前ではなく、上手な経営をする
には、財務状況を把握しないで事業に臨む
ということは、成り行きで事業を行って
しまい、非効率になりかねないからです。
よく言われることですが、自社の収支の
状況を把握せずに事業に臨むことは、
羅針盤を持たずに航海に出る船と同じ
ということです。
とはいえ、この比喩での説明も教科書的と
感じられてしまうかもしれません。
でも、私は、会社を起こす経営者の方が、
なぜ自社の財務状況を把握できないくらい
忙しくなる事業を始めるのかという疑問を
持ちます。
会社を起こすのであれば、創業の準備の
段階で経理の体制を整えてから会社を
起こさなければ、準備が不十分という
ことでしょう。
これは、これまでなんども繰り返して私が
述べていることですが、かつては、事業を
始めれば儲かる時代でしたが、現在は、
何らかの特色がなければ事業はうまく
行きません。
羅針盤を持たずに航海に出る状態で創業
してしまうと、目的地に遠回りをして到着
することになったり、場合によっては、
目的地に到着できないことにもなって
しまうでしょう。