仕事はもれなく迅速に行うことが望ましいということは言及するまでもありません。しかし、どうしてももれがあったり、思ったより時間がかかってしまいがちです。さらに、私が感じるのは、所要時間は予定内であるように見えて、実はもれが多く、結果として予定以上の時間を要してしまう例が多いように感じています。
分かりやすく単純な例で言えば、「今年度利益は何としても前年度利益の10%増をめざす」という目標を立て、販売先訪問を増やし、懸命に年度内に10%以上の利益を得られる売上高を達成したとします。しかし、翌月になって商品の一部に粗悪品が入っていることが分かり、返品を受けることになったとします。その結果、その売上高を控除すると、利益額は前年度より減少してしまうということが起きかねません。
事業の速度を上げることは大切であっても、能力を超えて速度を上げてしまうと、従来の速度で事業を進めた方が利益が得られたということになることもあります。すなわち、事業の速度を上げるのは、単純に速度を上げればよいということではなく、それなりの準備が必要です。準備というのは、機械を入れ替える、従業員のスキルを上げるといった手順が必要で、そのような速度を上げることができる裏付けなしに、経営者の方が部下に対して単に速度を上げるよう指示することは、避けるべきでしょう。