鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

利益額と利益率

よく、「経営者は利益額と利益率のどちら

を重視すればよいのか」という問いかけが

話題になることがあります。


この問いについては、私から見れば、昨年

日本シリーズの優勝チームであるソフト

バンクホークスと、J1リーグ優勝チーム

川崎フロンターレのどちらが強いかと問

われているようなものであり、答えること

が不可能と考えています。


しかしながら、なぜ、前述のように、利益

額と利益率を同じテーブルのせて比較して

しまうようなことが起きるのかという原因

について考えてみました。


ひとつは、事業の展開の方向を明確にして

いないことが原因だと思います。


利益額は絶対的な数値であり、利益率は相

対的な数値です。


すなわち、売上額、利益額も個別の数値で

すが、利益率は売上額と利益額によって導

かれます。


この利益率が使われる理由は、条件が異な

るものを比較するためです。


その条件とは、会計年度、製品、部門など

で比較するためです。


例えば、前々年の売上額が5,000万円

で利益額が400万円のときと、前年の売

上額が6,000万円で利益額が450万

円のときで、どちらが業績が良いかを見る

ときに、ひとつの比較方法として利益率が

使われます。


一方で、単に、絶対的な数値である、利益

額400万円と450万円を比較しただけ

では、数値が多いか少ないかということし

か分かりません。


もちろん、利益額は多い方が望ましいです

が、利益額だけで業績を比較することは、

限定的な判断しか導かれないでしょう。


話を戻すと、事業をより細かく分析しよう

とするときに、利益率を使うことの必要性

が高まります。


では、どのようなときに事業を細かく分析

することになるかといえば、事業を拡大し

ていくときでしょう。


したがって、事業を拡大していこうとする

経営者にとっては、利益率の重要性は高ま

ります。


一方で、事業をあまり大きくせず、小規模

のまま維持しようとする場合は、利益率を

使う必要性は低いでしょう。


事業が小規模な会社では、毎期目指すもの

は、利益率を高くすることよりも、利益額

を多くすることの方が適切といえるでしょ

う。


このように、自社の事業をどのように展開

するかが明確であれば、重視する数値もお

のずと明確になってきます。


もうひとつの原因は、事業管理の優先順位

が低いことです。


前述のような、事業展開を管理するにあ

たって重視すべき数値が何かということ

を、前もって理解しないまま事業を始めた

経営者は、利益額と利益率のどちらが自社

の管理にとって大切かという疑問を持って

しまうのかもしれません。


事業規模の小さい会社の経営者の方は、軸

足が事業にあっても問題はないと思います

が、だからといって、管理がおろそかに

なってもよいということにはなりません。


現在は、事業運営と事業管理のバランスの

よい会社が業績もよくなる時代ですので、

管理のポイントを理解して事業に臨めば、

冒頭にあげた疑問を持つことはなくなるで

しょう。

 

 

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会計の課題を1番目にする

先日、私が制作しているポッドキャスト

ゲスト出演していただいた、税理士の金成

祐行先生から、「顧問先には、営業よりも

会計を1番に考えるように伝えている」と

いうお話を聞きました。


(ご参考→ https://goo.gl/q1vsk7


実は、私は、会計を専門分野のひとつにし

ておきながら、金成先生のおっしゃったよ

うなことは、なかなか口にすることはして

きてきませんでした。


なぜなら、会計は、事業の成果を「お金の

論理」で映すもので、それだけで事業のす

べてを判断してはいけないと思っていたか

らです。


もう少しありていに言えば、会社を評価す

るときは、数字や金銭などの定量的な情報

に偏ってはいけないと考えていたので、ご

相談を受けた経営者の方には、「会計を1

番に考えるように」とは言うことは避けて

きたということです。


一方で、金成先生はなぜ「営業よりも会計

を1番に考えるようにしなさい」と言って

いるかというと、日本の会社では、昔から

会計は軽んじられる傾向にあり、経営者が

会計を最優先に考えるようにするというく

らいがちょうどいいということだからだそ

うです。


この金成先生の考え方も妙になるほどと

思ったのですが、後から考えてみれば、日

本では、経営者は会計をもっと重視した方

がよいと私も感じました。


経営者の方の役割は、それだけがすべてで

はないものの、管理業務が大きな部分を占

めているということは誰もがご理解される

と思います。


その管理業務は、購買管理、生産管理、販

売管理、労務管理、財務管理などがありま

す。


そして、これらのすべての管理には、「数

字」が使われます。


もちろん、数字だけがすべてではありませ

んが、やはり重要な部分を占めます。


ここで、もし、数字に向き合っていない会

社経営者がいるとすれば、果たして、財務

管理は後回しにはしているけれど、生産管

理、販売管理は優先しているというように

は言えないのではないでしょうか?


これを言い換えれば、中小企業では、「数

字に向き合う=管理業務を行う」というこ

とになっていると思います。


金成先生は「会計を1番」とお話ししてお

られますが、財務管理を通して、営業の状

況、生産の状況なども管理することは前提

になっておられると思います。


会計を通しての管理は、もちろん、財務管

理が中心になると思いますが、それでも事

業の多くの部分を管理の対象とすることに

なるでしょう。


そして、財務管理だけではものたりないと

限界を感じるような水準になったときは、

さらに、生産管理、営業管理にもっと直接

的にアプローチすればよいと思います。


今回の結論は、経営者は数字に向き合うこ

とは避けられず、数字に頼らない高度な管

理を目指しているとしても、まず、数字で

の管理方法を習得しなければならないとい

うことです。

 

 

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物理的定義と機能的定義

先日、九州大学ビジネススクール目代

史准教授が、ポッドキャスト番組で、ファ

イブフォース分析に関するお話をしておら

れました。


(ご参考→ https://goo.gl/fv4ciY


ファイブフォース分析は、ポーターの提唱

した分析手法で、経営戦略の立案にあたっ

て、その会社の属する業界の経営環境を、

5つの要因から分析するものです。


その5つの要因とは、供給企業の交渉力、

買い手の交渉力、競争企業間の敵対関係、

新規参入業者の脅威、代替品の脅威のこと

ですが、私は、最近は、代替品の脅威に関

する分析が重要になってきていると考えて

います。


前述の番組の中では、目代先生は、カジュ

アル衣料の代替品は、衣料品に限らないと

指摘しておられます。


すなわち、カジュアル衣料品は、衣服が欲

しい人が購入すると考えられがちですが、

その場合、フォーマルウェアやスポーツ

ウェアが代替品ということになります。


しかし、最近は、カジュアル衣料品を買う

人は、必ずしも衣料品そのものを求めてい

るのではなく、余暇のショッピングをした

いというニーズを満たすために購入されて

いるということが分かっているそうです。


そうであれば、余暇を過ごす他の手段も代

替品となるので、カジュアル衣料品店

とっては、カフェや習い事なども脅威にな

り得るということです。


ところで、カジュアル衣料品を衣料品を販

売する事業という見方をすることを、物理

的定義といい、一方、ショッピングを楽し

む手段を提供する事業という見方をするこ

とを機能的定義といいます。


このことは容易に理解されることと思いま

すが、一方で、実際の事業の現場では、自

社製品のライバルを物理的定義という狭い

範囲で考えられてしまいがちのようです。


その原因はいくつも考えられるのですが、

最も大きな原因は、自社の事業の範囲が狭

い方が、事業に携わる側としては楽である

ということでしょう。


確かに、自社の事業の範囲を広げすぎるこ

とも問題なのですが、範囲を狭くしすぎる

ことも、顧客の真のニーズをとらえること

ができなくなります。


最近の例では、シダックスが、カラオケは

グループで楽しむものという前提で事業を

続けてきたことから、ひとりカラオケの

ニーズをつかみきれず、カラオケ事業を運

営する子会社を売却することになったとい

う例があります。


経営者にとっては、事業へのこだわりがあ

り、そのこだわりが利益の源泉となる場合

もありますが、それと同時に、顧客のニー

ズを的確につかんでいるか、思わぬところ

に代替品の脅威が潜んでいないかというと

ころにも注意しなければなりません。


このような、自社事業の戦略の正しさを常

に検証することは、経営者の重要な役割で

す。

 

 

 

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KPIの活用

いま、ビジネスパーソンの方たちとお話し

をしていると、KPI( Key Performance

Indicator ,重要業績評価指標)という

言葉を、たびたび耳にするようになりまし

た。


私としては、多くの会社で活用して欲しい

と考えている、バランススコアカード(B

SC)と関連する言葉であるKPIが浸透

していることはうれしいと感じています。


ただ、「自社でKPIを使っている」と述

べている人であっても、BSCを前提とし

ている訳ではなく、単に自社で重要視して

いる目標数値という意味合いで使っている

ようです。


そのことが直ちに誤っているわけではない

ものの、せっかく「KPIを導入」してい

るのであれば、私はもう少し、本来のKP

Iに近い使い方をしてもらえればと考えて

います。


本来のKPIは、BSCを導入している会

社が立案した経営戦略を実践するにあたっ

て、その戦略がどれくらい奏功しているか

を測るための指標です。


例えば、BSCを導入して業績を改善した

米国のサウスウェスト航空では、定時運行

を行うことで顧客満足度を高めるという戦

略を実施し、それを測るためのKPIを定

刻離着率に、そしてその目標値を90%と

しました。


もちろん、KPIの目標を達成することが

望ましいのですが、本来はKPIの目標を

達成することではなく、その戦略である、

顧客満足度を高めることが最終的な目標で

す。


ただ、KPIの特徴は、戦略がどれくらい

奏功しているかを測定するということだけ

でなく、さらに上位の戦略やKPIと連関

しているということです。


前述のサウスウェスト航空の例では、定時

運行によって、顧客を増加させることや、

航空機を減らすことを戦略とし、それぞれ

のKPIに売上高、リース料を設定してい

ます。


したがって、定刻離着率というKPIは、

売上高やリース料という、さらに上位のK

PIを支える指標になっています。


すなわち、売上高を増やしたり、リース料

を減らすには、定刻離着率を高めることで

達成しようとしているわけです。


そして、売上高が増加したり、リース料が

減少すれば、最終的な目標値である、KG

I( Key Goal Indicator ,重要目標達成

指標)を高めることになります。


ちなみに、これまでの説明でわかる通り、

KGIはKPIの最上位にある指標であっ

て、それぞれ個別に設定されるのではな

く、まず、KGIを達成するための第一段

階のKPIが設定され、そのKPIを達成

するために、さらに第二段階のKPIが設

定されるというように、階層的になってい

る点が特徴です。


このように、個々のKPIが達成されるこ

とで、KGIも達成されるという点が、単

なる重要な目標値と異なる点です。


そこで、私は、いきなりBSCを導入する

ことが難しい会社に対しては、KGIとK

PIの設定だけを提案しています。


多くの場合、KGIは利益額となります


が、その利益額を増加させるには、いくつ

かの方法があります。


売上を増加させたり、粗利率を高めたり、

回転率を増加させたり、経費を減らしたり

といったいくつもの方法があります。


そして、それらのKPIを階層化していく

と、やがて、部門や従業員個人で達成すべ

きKPIに行きつきます。


そして、その部門や個人のKPIを、その

部門や個人のKGIとして、さらに、部門

や個人の達成すべき目標としてのKPIを

階層化していきます。


こうすることで、単にいくつものお互いに

無関係な目標が与えられるということでは

なく、お互いに連関性のある有機的な目標

が与えられることになり、的を絞った活動

ができるようになるほか、自分の達成すべ

き目標が、会社全体の目標につながってい

るということが明確になるので、士気の向

上にも寄与します。


ただし、注意する点が2つあります。


ひとつは、個々人の目標と会社全体の目標

の関係が明確になることは、仮に、会社全

体の目標が達成しなかったときに、その原

因もどこにあるのかも明確になります。


そのことが原因で従業員の士気が下がるこ

とのないよう、経営者の方は、達成しそう

にないKPIがある場合は、その部門や個

人を支援したり、KPIの設定が適切で

あったかどうかを検証したりする必要があ

ります。


もうひとつは、KPIを多くしすぎないこ

とが大切です。


KPIを多くしてしまうと、数字の達成だ

けに気を取られてしまい、本来の目標を見

失ってしまう可能性も高まります。


とはいっても、どれくらいのKPIが適切

かということも、一概には述べられません

が、過度にKPIだけを重視することのな

いように留意しなければなりません。

 

 

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指示は理由とセットにすると理解しやすい

経営者の方が自らの方針に従って人材を育

成したり、事業活動での従業員の方の動き

方を細かく指示することは、経営者の方の

思いを事業を通して実現するために、当然

のことです。


ところが、従業員の方たちが、経営者の方

の思いを汲み取ってくれたり、経営者の方

の方針にしたがって自立的に動いてくれる

ようになるになるまでには、ある程度の時

間が必要になります。


例えば、接客業であれば、最初は礼儀正し

さ、親切さというところからスキルを高め

ていき、それが定着してから自社の独自性

を身に着けて行ってもらうという手順を踏

むことになるでしょう。


そして、これらの基本的な手順を踏むこと

さえ、なかなか思うように進まないところ

が、多くの経営者の方たちの悩みとなって

いると思います。


そこで、この育成期間をどうやって短くし

ていくかということが会社経営における課

題の大きな部分を占めることになると思う

のですが、私は、基本的に育成期間は短く

はならないし、目標に到達しそうになって

も、また、新たな目標が現れるので、育成

自体は半永久的に続くものだと思っていま

す。


とはいえ、そうであっても、より効率的な

育成が望まれる訳ですが、東京ディズニー

リゾートを運営するオリエンタルランド

OBの福島文二郎さんのご著書「9割がバ

イトでも最高のスタッフに育つディズニー

の教え方」( https://amzn.to/2xGUqNg )

には、それを実現するために参考となる例

がいくつも書かれていました。


その中で、私が印象に残った点を2点ご紹

介したいと思います。


ひとつめが、指示をするときは必ず理由も

伝えるということです。


具体的には、東京ディズニーリゾート(T

DR)のカストーディアル(清掃担当者)

の育成では、次のように清掃の仕方を教え

ているそうです。


「特別なケースを除き、肩・腰・膝・くる

ぶしが一直線になるように立つ→体に負担

がかからないから。


ストパン(ちりとり)を持つときは、必

ずとってのところを持って、腰骨のあたり

につけて持ち、箒はちょっと前の方に持つ

→道具がゲストにあたらないようにするた

め。


ごみは箒で掃くのではなく、はじくように

とる→清掃作業が早くなり、見た目もよい

から。


汚物はすぐに白いペーパータオルで覆う→

ゲストに不快な思いをさせななくてすみ、

また、ペーパータオルがあれば誤って踏ん

でしまうことを防ぐことができるから」


この、指示と理由をセットにするというの

は、当たり前のようで、実はなかなか実践

することは難しいと私は感じています。


というのは、指示をする人は、指示そのも

のを納得している(または、理由が明確だ

と感じている)ので、それを他者に伝える

時は、理由を伝える必要性が低いと感じて

いたり、または、指示を伝えればその理由

も伝わるだろうと考えてしまいがちです。


ところが、自分が何かを指示したとき、改

めてその指示が必要な理由の説明を求めら

れると、意外とその理由を説明できないこ

ともあります。


すなわち、自分にとって当たり前のこと

は、必ずしも他者からみても当たり前のこ

ととは限らないので、指示をする側は、手

間がかかりますが、指示する内容の理由も

いつも説明できるように心がけることが、

相手にもすんなり受け入れられることにつ

ながると思います。


また、理由を考えてみたら、実は、意味の

ないことをこれまで指示していたというこ

とに気づくこともあるかもしれません。


そのよう場合は、気づかずに行っていた無

駄な指示を取り除くことにもなります。


もうひとつは、価値観を共有するというこ

とです。


この、価値観を共有するということはやや

抽象的ですが、もう少し具体的に言えば、

共通に理解する部分を広げるということで

す。


そして、この共通に理解する部分を広げる

というのは、お互いの情報を共有すること

であり、福島さんは、そのためには、上司

と部下の間でお互いに話をよく聞くことが

必要になると述べておられます。


これも多くの方は重要性を理解されると思

いますが、なかなか時間が取れないという

理由で、上司が一方的に部下に話をすると

いうことになりがちなのが現実ではないで

しょうか。


そうすると、会社は、上司の価値観だけで

動くことになり、指示を受けた部下は、受

動的にしか動けなくなります。


部下に上司の意図を汲んで自立的に仕事を

して欲しいと望むのであれば、上述の価値

観の共有という過程は欠かせません。


以上、2点、すなわち指示と理由をセット

で話す、価値観を共有するということをご

紹介したのですが、これらは当然すぎて、

真新しいことと感じない方が多いと思いま

す。


というのは、福島さんのご著書のAmaz

onレビューを見たところ、5段階評価の

3.3となっており、あまり高いものとは

言えないものとなっていました。


それは、同書を低く評価している方も多

く、そのような方の評価は、当たり前のこ

とが書かれているということが理由のよう

です。


私もある意味、当たり前のことが書かれて

いるとは思いますが、福島さんは、この当

たり前のことをTDRで実践されてこられ

た点に、本を読む側が価値を感じるべきだ

と思います。


これは意見が分かれることかもしれません

が、恐らく、当たり前のことしか書かれて

いないと同書を評価した方は、何かTDR

ならではの特別の育成法が書かれているこ

とを期待していて、その期待が外れたから

低く評価したのではないかと想像します。


私もコンサルタントとして、顧問先の会社

の人材育成に関わってきましたが、福島さ

んのご著書に書かれている当たり前のこと

を実践することでさえ、実際にはとても難

しいと感じています。


人材育成は有機的な存在である人が対象で

あるだけに、文字だけで、そして座学だけ

で学ぶことは不可能です。


まず、当たり前のことを着実に実践するこ

とが、遠回りのようで最短の方法だと私は

考えています。

 

 

 

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専門用語・業界用語の多用は危険

私がこれまでに事業改善のお手伝いをして

きた会社(に限りませんが)の多くは、そ

の会社、または、その業界の専門用語がよ

く使われます。


専門用語でも、他の言葉に置き換えられな

いものは、それを使わざるを得ないのです

が、置き換えることができる言葉があるに

もかかわらず、独特の言葉を使うこともあ

ります。


私が長くいた銀行では、実質金利という言

葉があります。


これは、融資先から受け取る融資金利額と

融資先に支払うその融資先の預金金利額の

差額を、融資先への融資額と融資先からの

預金額の差額で割って、実質的な資金運用

効率を見るための架空の指標です。


実質金利=(受取金利額ー支払金利額)÷

(融資額ー預金額)


これは、銀行が融資をするにあたって、そ

の取引先の収益性が高いかどうかを判断す

る目安で、同じ金額を同じ金利で融資をし

た場合であっても、預金額が多いほど実質

金利は高くなり、収益性が高いということ

になります。


この言葉は、他に置き換えることができな

いので、銀行の新人職員はこれをそのまま

覚えてもらうことになります。


(経済学用語にも実質金利という言葉があ

り、それは、名目金利から物価上昇率を差

し引いた金利のことで、言葉としては同じ

ですが、意味は異なります)


一方、銀行で独特に使われる言葉に、「日

本茶」というものがあります。


これは、怪しそうな来客があったとき、同

僚に「日本茶をお出ししてください」と伝

えることで、「いま、不審な来客と応対す

るので、上職者に伝えて警戒してほしい」

ということを暗に伝える言葉です。


そこで、銀行職員同士では、単に怪しい来

店者を日本茶と言ったりすることがありま

すが、これは、単に怪しい人物と言い換え

ることができます。


ところで、私がこれまでお手伝いしてきた

会社で、これは最初にきいただけでは意味

が分からないと思った言葉に「業界販社」

というものがありました。


これは、1社だけではなく、まったく関係

のない別の会社でも使われていたので、特

定の会社だけでの用語ではなさそうなので

すが、法人向け営業活動を指す言葉のよう

です。


どうして、法人向け営業活動が業界販社と

いう言葉になったのか、経緯の想像がつき

ませんが、あえて業界販社とは言わずに、

法人向け営業活動でもいいのではないかと

感じています。


また、システム開発会社の方が、「チャネ

ル」という言葉を使っているのをきいたこ

とがありましたが、これは卸売会社を指す

言葉のようです。


チャネルとは流通経路を指すことは知って

いたので、そこから、卸売会社もチャネル

と指すようになったのではないかと思いま

すが、私はそこまでは広げすぎなのではな

いかと感じています。


ちなみに、最近読んだ本で、岡本文宏さん

のご著書「仕事をまかせるシンプルな方法

-9割がパート・アルバイトでも繁盛店に

なれる!」( https://amzn.to/2kN317K )

では、あるコンビニエンスストアチェーン

では、「売場マッサージ」という言葉がよ

く使われていると書いておられます。


これは、「商品陳列・レイアウトの変更を

行い、売り場を新鮮に見せるようにするた

めの作業」を指すそうです。


岡本さんは、このような会社の専門用語は

経験の浅いアルバイトの方には伝わらず、

かつ、指示されたことの意味が分からない

と聞き返してくる人は希であり、したがっ

て、指示した側は指示したつもりになって

いても、その指示が実践されないこともあ

ると指摘しておられます。


これも当然のことですが、岡本さんは「情

報は、伝わってこそ価値がある」とご指摘

されておられ、岡本さんがかつて勤務して

いたアパレル会社で上司の方から言い聞か

されていた「伝達事項は中学1年生が読ん

で理解できるレベルにしなさい」という言

葉を大切にしているそうです。


このことも多くの方が理解されておられる

と思いますが、実際には、前述の通り、一

部の人にしか伝わらない言葉が使われてい

ることが多いと私は感じています。


これに加えて、業界用語や専門用語が多く

使われている職場では、勤めて浅い人たち

は、会話の意味が分からないために、疎外

感を感じてしまいがちになります。


そういった観点からも、業界用語、専門用

語は不必要なものは使わないことが望まし

いと私は考えています。


今回の記事の結論は、もし、自社のコミュ

ニケーションがあまり円滑ではないと感じ

ている経営者の方は、社内で業界用語、専

門用語が多用されていないか見直してみて

いただき、多用されていれば、それを減ら

すことを検討されることをお薦めするとい

うことです。

 

 

 

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機会原価と赤字

これもすでに多くの方がご存知のことと思

いますが、管理会計の考え方に機会原価と

いうものがあります。


例えば、利益が200万円を見込める受注

があり、それを受けると100万円の費用

がかかるとしたときに、何らかの理由でそ

れを受注しなかった場合、受注に応じてい

れば得られたであろう100万円の利益を

損失と考え、受注に応じなかったことに

よって機会原価100万円が発生したと言

います。


とはいえ、この機会原価は、仮定での考え

方であり、仮に100万円の利益が得られ

る機会を失ったとしても、実際に費用が発

生する訳ではないので、機会原価が多い会

社であっても、なかなか批判されることは

ありません。


ただ、これは、私がコンサルタントという

部外者の立場であるから言えることかもし

れないのですが、事業の成果が赤字の会社

は、機会原価の考え方からみれば、本当に

もったいないと感じることがあります。


例えば、会計期間が1か年の会社の成果が

赤字であった場合、その会社が1年間に支

出した費用、時間などは、意味がないもの

ということになってしまいます。


もちろん、会社の評価は1年間だけで判断

すべきものではないのですが、会計の側面

だけで判断すれば、もったいないと思えて

なりません。


日本の会社の自己資本利益率(=会社の純

資産の部の額に占める利益額の割合)は、

約8%と言われていますが、純資産の部が

1,000万円の会社であれば、利益額は

80万円は期待されているとも言えます。


もし、会社が赤字であった場合、その赤字

額だけが損失ではなく、期待される利益額

も損失に加えなければならないでしょう。


そして、繰り返しになりますが、それだけ

でなく、1年間の経営者の方、従業員の方

の費やした時間や労力も報われないものと

なってしまいます。


もちろん、これは会計的な側面だけでの評

価なので、これだけをもって会社のすべて

を評価することは適切ではないのですが、

先日、ある税理士の方とお話をしたとき、

「顧問先の方には、会計を1番目の評価指

標にするよう指導している」というお話を

ききました。


その税理士の方によれば、日本では、経営

者の方は、会計での評価を後回しにしてし

まいがちであり、そのことが、事業の成果

が赤字になっても甘んじてしまうので、あ

えて会計を最も重視するように指導してい

るということでした。


赤字の会社の経営者の方も、もちろん自ら

望んで事業を赤字にしているわけではない

と思いますが、赤字が続けば事業を続けら

れなくなってしまうので、自社の収益につ

いて、もう少し会計に関して意識を高めて

もらえればと、前述の税理士の方と同様に

私も考えています。

 

 

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