鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

指示は理由とセットにすると理解しやすい

経営者の方が自らの方針に従って人材を育

成したり、事業活動での従業員の方の動き

方を細かく指示することは、経営者の方の

思いを事業を通して実現するために、当然

のことです。


ところが、従業員の方たちが、経営者の方

の思いを汲み取ってくれたり、経営者の方

の方針にしたがって自立的に動いてくれる

ようになるになるまでには、ある程度の時

間が必要になります。


例えば、接客業であれば、最初は礼儀正し

さ、親切さというところからスキルを高め

ていき、それが定着してから自社の独自性

を身に着けて行ってもらうという手順を踏

むことになるでしょう。


そして、これらの基本的な手順を踏むこと

さえ、なかなか思うように進まないところ

が、多くの経営者の方たちの悩みとなって

いると思います。


そこで、この育成期間をどうやって短くし

ていくかということが会社経営における課

題の大きな部分を占めることになると思う

のですが、私は、基本的に育成期間は短く

はならないし、目標に到達しそうになって

も、また、新たな目標が現れるので、育成

自体は半永久的に続くものだと思っていま

す。


とはいえ、そうであっても、より効率的な

育成が望まれる訳ですが、東京ディズニー

リゾートを運営するオリエンタルランド

OBの福島文二郎さんのご著書「9割がバ

イトでも最高のスタッフに育つディズニー

の教え方」( https://amzn.to/2xGUqNg )

には、それを実現するために参考となる例

がいくつも書かれていました。


その中で、私が印象に残った点を2点ご紹

介したいと思います。


ひとつめが、指示をするときは必ず理由も

伝えるということです。


具体的には、東京ディズニーリゾート(T

DR)のカストーディアル(清掃担当者)

の育成では、次のように清掃の仕方を教え

ているそうです。


「特別なケースを除き、肩・腰・膝・くる

ぶしが一直線になるように立つ→体に負担

がかからないから。


ストパン(ちりとり)を持つときは、必

ずとってのところを持って、腰骨のあたり

につけて持ち、箒はちょっと前の方に持つ

→道具がゲストにあたらないようにするた

め。


ごみは箒で掃くのではなく、はじくように

とる→清掃作業が早くなり、見た目もよい

から。


汚物はすぐに白いペーパータオルで覆う→

ゲストに不快な思いをさせななくてすみ、

また、ペーパータオルがあれば誤って踏ん

でしまうことを防ぐことができるから」


この、指示と理由をセットにするというの

は、当たり前のようで、実はなかなか実践

することは難しいと私は感じています。


というのは、指示をする人は、指示そのも

のを納得している(または、理由が明確だ

と感じている)ので、それを他者に伝える

時は、理由を伝える必要性が低いと感じて

いたり、または、指示を伝えればその理由

も伝わるだろうと考えてしまいがちです。


ところが、自分が何かを指示したとき、改

めてその指示が必要な理由の説明を求めら

れると、意外とその理由を説明できないこ

ともあります。


すなわち、自分にとって当たり前のこと

は、必ずしも他者からみても当たり前のこ

ととは限らないので、指示をする側は、手

間がかかりますが、指示する内容の理由も

いつも説明できるように心がけることが、

相手にもすんなり受け入れられることにつ

ながると思います。


また、理由を考えてみたら、実は、意味の

ないことをこれまで指示していたというこ

とに気づくこともあるかもしれません。


そのよう場合は、気づかずに行っていた無

駄な指示を取り除くことにもなります。


もうひとつは、価値観を共有するというこ

とです。


この、価値観を共有するということはやや

抽象的ですが、もう少し具体的に言えば、

共通に理解する部分を広げるということで

す。


そして、この共通に理解する部分を広げる

というのは、お互いの情報を共有すること

であり、福島さんは、そのためには、上司

と部下の間でお互いに話をよく聞くことが

必要になると述べておられます。


これも多くの方は重要性を理解されると思

いますが、なかなか時間が取れないという

理由で、上司が一方的に部下に話をすると

いうことになりがちなのが現実ではないで

しょうか。


そうすると、会社は、上司の価値観だけで

動くことになり、指示を受けた部下は、受

動的にしか動けなくなります。


部下に上司の意図を汲んで自立的に仕事を

して欲しいと望むのであれば、上述の価値

観の共有という過程は欠かせません。


以上、2点、すなわち指示と理由をセット

で話す、価値観を共有するということをご

紹介したのですが、これらは当然すぎて、

真新しいことと感じない方が多いと思いま

す。


というのは、福島さんのご著書のAmaz

onレビューを見たところ、5段階評価の

3.3となっており、あまり高いものとは

言えないものとなっていました。


それは、同書を低く評価している方も多

く、そのような方の評価は、当たり前のこ

とが書かれているということが理由のよう

です。


私もある意味、当たり前のことが書かれて

いるとは思いますが、福島さんは、この当

たり前のことをTDRで実践されてこられ

た点に、本を読む側が価値を感じるべきだ

と思います。


これは意見が分かれることかもしれません

が、恐らく、当たり前のことしか書かれて

いないと同書を評価した方は、何かTDR

ならではの特別の育成法が書かれているこ

とを期待していて、その期待が外れたから

低く評価したのではないかと想像します。


私もコンサルタントとして、顧問先の会社

の人材育成に関わってきましたが、福島さ

んのご著書に書かれている当たり前のこと

を実践することでさえ、実際にはとても難

しいと感じています。


人材育成は有機的な存在である人が対象で

あるだけに、文字だけで、そして座学だけ

で学ぶことは不可能です。


まず、当たり前のことを着実に実践するこ

とが、遠回りのようで最短の方法だと私は

考えています。

 

 

 

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