鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業を改善する方法

中小企業の経営者の方と雑談をするとき、

よく、「最近の経営環境は厳しいですね」

ということを聞きます。


しかし、私は「かつてより厳しくなって

来てはいると思いますが、とはいえ、

八方塞ではないと思っています。


むしろ、業績を改善する方法は明確で

あると思っています」と答えています。


このように述べると、「では、どう

すれば会社の業績を向上させることが

できるのか?」と質問を受けます。


これに対しては「さまざまな方法があり

ますが、ひとつは毎月の業績を確認する

ことです。


できれば、バランス・スコア・カードを

導入すれば、私の経験上、業績は改善

すると思います」と答えると、多くの方は

落胆します。


恐らく、業績を向上させたいと考えて

いる方は、どういう商品が売れるのか、

どういう売り方をすれば商品が売れる

のかということを知りたいと考えている

のでしょう。


確かに、毎月の業績を確認することと、

利益が増えることは、直接は結びつき

ません。


ただ、これもご理解される方も多いと

思いますが、毎月の業績を確認する

ということは、事業の誤りを直ちに

修正することができるということです。


さらに、その修正を繰り返すことが、

ライバルとの差を広げていくという

ことです。


しかし、ここで「毎月業績を確認すれば、

修正すべき点はすぐに判明するが、

それらは修正できるものだけとは

限らない」と考える方もいるでしょう。


確かに、改善すべき点のすべてが、

直ちに改善できるものとは限りません。


しかし、それが明確になる時期が

早ければ、経営者の判断も早まります。


すなわち、直ちに修正できなくても、

早い段階から修正ができます。


修正に相当の時間を要するのであれば、

現在の事業から撤退するという判断も

早い段階で行えます。


ここまで述べてきたように、毎月の業績の

判断を行うということは、直接利益に結び

つかないまでも、経営者の判断の機会を

増やすことになります。


これだけでも大きな差があるでしょう。


そして、業績の悪い会社の共通点は、

1か月ごとに業績の確認をしていないと

いうことです。


しかしながら、それでも、毎月の業績を

確認することには否定的な方もいます。


ただ、これは、業績の確認そのものを

否定するということより、変わることを

避けたいという心理的な面が大きいと

私は分析しています。


しかし、経営環境の変化が激しいという

ことは多くの方が理解している中で、

変化を避けたいと考えることは、経営者

としては怠惰ということになるでしょう。

 

 

 

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事業計画による改善活動

事業計画は大切とは言われつつも、

実際に活用している会社は少ない

ようです。


実際のところ、中小企業では、

融資を受けるために銀行へ渋々提出して

いるという例が多いのではないので

しょうか?


一方で、私が顧客の事業改善をお手伝い

するときは、事業計画なしには実行する

ことはできません。


なぜなら、顧客からみれば、コンサル

タントから支援を得るにあたって、

どれくらいまで業績の改善が見込める

のかということについて、認識を

共有したいと思うでしょう。


(同様に、融資をする銀行も、融資先の

業績の改善見込みを知りたいと考える

わけです)


このように、事業計画は、ステーク

ホルダーにとって関心のあるものです。


しかしながら、中小企業では独力で事業

計画を作成したり、その進捗状況を管理

したりすることは、不慣れということも

ありますが、なかなか難しいようです。


ただ、事業計画なしには、成り行きで

事業運営を行うことになってしまう

ことになるので、事業計画作成と進捗

状況の管理を実践できるようになる

ことは、中小企業にとって、ひとつの

ステップといえると思っています。


とはいえ、最初から完全な計画を作成

することは難しいです。


(たまに、「計画を作っても、その

通りに事業が進むとは限らない」と、

事業計画を作成することに否定的な

意見を述べる方にお会いしますが、

そもそも、事業計画は予測すること

とは異なるもので、前述のとおり、

ステークホルダーと認識を共有する

ことに意義があるものです)


そこで、10年後(または5年後)の

売上目標を作り、それを達成するために、

翌年から10年後までの毎年の売上目標を

作成するということから始めることを

お薦めしています。


もし、計画の途中で大きな環境の変化が

起きた場合は、その時点で、再度、

10か年の目標を作るということを

お願いしています。


(この、再作成した事業計画をローリング

プランといいます)


今回は、深く触れることはしませんが、

経営者の役割は、このような事業計画を

通して事業を改善していくことが大切だ

ということについて述べさせていただき

ました。

 

 

 

 

 

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会計データの体制整備

私が、融資申請のご相談を受けて、最初に

苦心することが、会計データが乏しいと

いうことです。


融資の承認を得るために苦心している

会社は、一般的には業績が芳しくない

ことが原因ですから、まず、その原因を

明らかにしなければなりません。


でも、そのような会社の多くは、決算書が

あまり精緻ではなく、また、月次試算表も

作成されていないか、数か月前のものしか

ないという状況が多いようです。


そこで、私は、その会社の仕訳データを

数か年分分析し、赤字の要因などを明確に

します。


その結果、改善の見込みがあれば、その

根拠を数値で示しながら、説明資料として

作成します。


ちなみに、銀行は赤字の会社に融資を

しないと思われがちですが、赤字である

ことが原因というよりも、なぜ赤字

なのか原因がわからない会社には融資を

しないということが言えると私は考えて

います。


すなわち、赤字であっても、回復見込みが

明らかであれば融資に応じるわけですが、

それを確かめるための会計データが

少ないと、融資判断そのものができず、

審査して融資をしないというよりも、

審査さえできずに融資を断るという結果に

なります。


前述のような会社は、私のような専門家が

ある程度の時間をかけて分析するので、

普段はあまり会計データは未整備でも、

融資を受けることが可能になることが

あります。


しかし、あまり精緻でない決算書しか作成

していない会社が融資を申し込もうとした

場合、銀行の職員はあまり労力をかける

余力がないため、深い審査はせずに融資を

ことわるということになります。


ここまでの結論は、きちんとした決算書を

作ることが融資を断られないために大切だ

ということです。


ちなみに、「きちんとした決算書」という

ものは、銀行を意識して作成するという

ことまでをしなくても、日本税理士連合会

などで公表している「中小企業の会計に

関する指針」や「中小企業の会計に関する

基本要領」( https://goo.gl/GP6kD5 )に

したがって作成するだけでも十分です。


話しをもどして、もうひとつご注意いた

だきたい点として、私が一度融資申請を

ご支援した会社さまから、再び、ご支援の

ご依頼があったとき、前回と同じような

経理体制が続いていた場合、ご支援の

ご依頼はお断りしています。


当初のご支援の段階で、会計データを

きちんと収集することの大切さを伝えて

いるにもかかわらず、それを実践しない

ということは、その会社は進歩しようと

する意図がないということです。


「会計データの収集だけで、会社の事業の

すべてを判断することは早計ではないか」

と考える方もいらっしゃるでしょう。


確かにそのような面もあると思います。


しかし、私の場合、そのような会社さま

への前回のご支援のときに、銀行に対して

「今後、当社は事業の改善のために鋭意

努力します」と伝えています。


それを破っているとすれば、道義的に

私は再度お手伝いすることはできません。

 

 

 

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回収までが仕事

俳優の滝藤賢一さんとお笑いタレントの

横澤夏子さんが出演している、経理

システムのテレビコマーシャル

( https://youtu.be/SAVu9YVw-sE )を

見ると、そのような場面に心あたりの

ある方が多いのではないかと思います。


恐らく、横澤さんの演じる営業部員の

ように、「いちいち、細かいところまで

指摘しないで」と感じている人には共感

できる場面でしょう。


そして、旅費精算は「やらずにすむなら

やらずにすませたい」と思っている仕事

なのではないでしょうか?


このように、経理業務は本来の仕事では

なく、余計な仕事と思っている人は多いと

思います。


これについては、結論としては、清算業務

など、経理業務も大切な仕事です。


しかし、繰り返しになりますが、客先に

出向いて営業活動をすることや、ラインで

製品を製造するといった直接的な業務が

本来の仕事であって、旅費精算などの

間接的な業務は経理部から押し付けられる

余計な仕事と考える方が多いようです。


冷静に考えれば、事業は利益を得るために

行っているわけですから、自分の活動に

関する費用を報告すること、すなわち旅費

清算などを行うことをしなければ、自分の

行った活動は意味があったのかどうかが

わかりません。


ですから、旅費精算も大切な仕事だという

ことは、容易に理解できることです。


これは、旅費などの費用とは逆のことで

ある、売上についての格言ですが、日立

建機の元社長である木川理二郎さんは、

「会社というものは、モノをつくって、

売って、カネを回収できて初めて成り立ち

ます。


そこまでやって営業と言えるのです」と

述べておられます。


同様のことは、木川さん以外にも多くの

経営者の方がお話しされておられる

でしょう。


営業や事業に携わっている方は、自らの

活動の利益を確定させるところまでは

責任を持たなければなりません。


そこで、今回の結論は、経営者の方は、

営業職や事業に携わる方に対して、

単に利益を上げろと伝えるだけでなく、

きちんと利益を確定させるところまで

責任を持つよう伝えなければならないと

私は思っています。


そして、単に伝えるだけでなく、利益を

確定させるところまで実施しなければ

ならない仕組みをつくることも必要だと

思っています。


その仕組みにはいろいろなものがあり

ますが、日報などはそのひとつでしょう。


すなわち、日報で契約獲得額だけを報告

させるのではなく、売上回収率、獲得

利益額までを報告対象とするという

方法です。


経営者の方が、「契約をとってきた」と

いう報告だけで評価はしていない、

「売上金を全額回収し、利益を得た」と

いうことを報告しなければ評価されない

という姿勢が、営業部員に伝われば、

旅費精算などの報告業務は疎かになる

ことはないと私は考えています。


また、このようなことを部下に求める

以上、経営者自身も同様に、毎月の

会社全体の売上高、利益額を早い段階で

集計し、それを従業員の方に報告する

ことも必要になるでしょう。

 

 

 

 

 

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人は城、人は石垣、人は堀

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは

味方、仇(あだ)は敵なり」という格言は、

所説もあるようですが、戦国武将の武田

信玄の残した言葉として人口に膾炙して

います。


この言葉の示唆するところは、「どんなに

強固な城をつくっても、人の心が離れて

しまえば、世を治めることはできない。


人に情をかけ大切に扱えば、人の心は

つながれて、国は繁栄する。


しかし、人を粗末に扱って、不満や

憎しみを持つ者が増えれば、国は滅びる。


人こそが、守るべき城であり、また

同時に、守りの要になる。


周囲を固める石垣や、敵の侵入を防ぐ

堀になる」(出典:名言ナビ

https://goo.gl/ZJ51H3 )というもの

です。


武田信玄といえば、勇敢な武将という

印象が強いようですが、この言葉から

考えると、家臣や領民を重んじていた

ということがうかがえます。


そして、これは私だけではないと思い

ますが、現在の会社組織にもあてはめる

ことができるでしょう。


会社の業績をあげようとするとき、

やはり多くの経営者の方は、従業員の

方に一生懸命になってたくさん働いて

欲しいと考えるものです。


では、どうやって一生懸命に働いて

もらおうとするでしょうか?


そこが経営者としていちばん難しい

ところでしょう。


ここに、前述の信玄の「人に情けを

かける」という言葉が効いてくるのだと

思います。


また、信玄は「甘柿も渋柿も、ともに

役立てよ」という言葉も残している

そうです。


これは、人の性質を見極めて上手に活用

する、すなわち適材適所を実践するという

ことだと思います。


実は、これの実践も、易しいように感じ

られがちですが、難しいようです。


他人からの評価というものは、欠点が

目立ちがちで、部下の不得手な面が

上司の目に入ると、「あいつはだめな

やつだ」と考えがちです。


しかし、経営者は、部下の個性を活かせる

部署をあてがうということが重要な役割

です。


でも、経営者にとって都合のよくない

部下を見ると、それは部下の能力がない

からだと考えてしまうものです。


それを戒める言葉が、「甘柿も渋柿も、

ともに役立てよ」ということなので

しょう。


今回は、武田信玄の言葉をそのまま紹介

しましたが、戦国大名としての信玄の

強さというのは、人心掌握術と、人財

活用力だったと言えるのでしょう。

 

 

 

 

 

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経営品質の成熟度

私は事業改善をお手伝いする会社に、

「組織としての力を高めましょう」と

お伝えしています。


ただ、組織の力が強い状態とはどういう

状態なのかということは分かりにくい

ものです。


そこで、私は「経営品質の成熟度」

(以下、単に「成熟度」と記します)で

説明しています。


これは、経営コンサルタントの望月広愛

さんのご著書「文句ばかりの会社は儲から

ない!」( http://amzn.to/2fiuPhw )に

書かれていたものです。


この成熟度では、リーダーシップ、社会的

責任、顧客対等などでそれぞれA~Dの

4つのレベルで成熟度が示されています。


例として、これらの中から、ひとつ、

リーダーシップについて引用します。


Dレベル:おれの言うとおりにやれ。


Cレベル:売上・利益をあげろ。


Bレベル:価値をつくろう。


Aレベル:価値創造のしくみをつくろう。


レベルDからAに行くにしたがって、

組織的な活動をしている会社のリーダー

シップになっていくということがご理解

いただけると思います。


そして、Aレベルのようになることが

組織として高い能力をもち、難しい

課題も解決できることになることから、

Aレベルの状態を目指すことを説明

しています。


もちろん、経営資源の少ない中小企業

では、いきなりAレベルの状態になる

ことはできません。


そこで、長期的な計画のもとにレベルを

高めていくための活動を続けていくことに

なります。


(ただし、その活動の具体的な内容に

ついては、文字数の兼ね合いで、別の

機会に述べたいと思います)


ただ、経営者の方の中には、単純に、

売上が上がればよいと考えている方も

少なくないのも事実です。


特に、創業後、間もない会社は、売上の

確保で精一杯という状態が続くでしょう。


しかし、それは、事業をまわすということ

だけにしか注力しておらず、それだけでは

組織的な活動が行われていることにはなり

ません。


短期的には問題がないように思えますが、

前述の通り、長期的には組織的な活動が

できない組織は、難しい課題を克服する

ことができなくなります。


事業は、オペレーションとマネジメントの

両方が大切なのですが、どちらかというと

抽象的であり、一朝一夕には高めることが

難しいマネジメントに関心を持つ方は

少ないようです。


まだ、自社が組織的な活動が十分でないと

感じている経営者の方は、ぜひ、成熟度を

高める活動に取り組むことをお薦めしたい

と思います。

 

 

 

 

 

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成功の定義

経営者の方は、よく「あなたの『成功』の

定義はなんですか」ときかれることが

あると思います。


ただ、これは、主に、心構えを問われる

ときのフレーズだと思います。


すなわち、「収入が増える」、「社会に

貢献できる人になる」、「多くの人から

尊敬される」などといったものです。


これらについては、それぞれの経営者の

方が決めることであり、何が正しくて、

また、何が誤っているといものではあり

ません。


ただし、事業運営には、何人もの利害

関係者(ステークホルダー)の協力が

必要になります。


そこで、経営者の方が自分の定義した

成功を実現させるために、利害関係者が

犠牲になることがあると、トラブルの

基になってしまいます。


よくある例は、経営者と銀行との認識の

相違です。


例えば、銀行から融資を受けてケーキ店を

開いた経営者が、自らの成功の定義として

いる、「安くておいしいケーキを地域の

人たちに提供する事業を行う」ことを実践

しようとしているとします。


一方で、その事業では利益額が少ない、

または、赤字になりかねない状況が

続いていた場合、融資をしている銀行

からは、収益状況を改善するために、

商品価格の値上げをするといった改善

策の実行を要請されることもあるで

しょう。


このとき、経営者から見て、銀行の

要請は、自らの成功の条件を否定する

ものとなってしまいます。


もちろん、融資を受ける段階で、もし、

事業計画の利益額が少ないのであれば、

融資を受けることはできなかったわけで

あり、また、事業を開始した後も計画

通りになっていれば、銀行は値上げの

実施の要請はすることはなかったで

しょう。


銀行から見れば、融資先の事業の成功の

定義は「安定して利益を計上すること」

であり、それは融資の申し込みを受けた

ときに提出された事業計画以上の業績を

あげることということになります。


少なくとも、この例では、銀行からの

要請と、経営者にとっての成功は対立

するものではないでしょう。


安定的な利益を計上できなければ、

経営者の考える「安くておいしい

ケーキを地域の人たちに提供する」と

いう思いも実現することはできなく

なります。


結論としては、経営者の成功の定義は

ステークホルダーの思いと対立する

ものではあってはならない、そして、

それらの思いの最上位、すなわち、

順番としては最後にあるものである

必要があると私は考えています。

 

 

 

 

 

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