[要旨]
稲盛和夫さんは、目標を達成するためには、すべての役員や従業員が、目標を共有し、それを頭の中に入れて、日々、活動しなければならないと述べておられます。これは、目標達成のための活動を、顕在意識のレベルで行うよりも、潜在意識のレベルで自然に行えるようになる方が、効率的に活動できるようになるからと考えることができます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、稲盛和夫さんのご著書、「京セラフィロソフィ」を拝読して、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、京セラでは、材料などをまとめ買いせず、必要な都度、必要な分だけを購入する、当座買いを行っていましたが、その理由は、まとめ買いをすると、在庫費用や不良在庫の発生を避けることができるほかに、作業工程で材料を粗末に使ってしまうことも防ぐことができるからということについて説明しました。これに続いて、稲盛さんは、目標の周知徹底の大切さについて述べておられます。
「目標を達成するためには、その目標が、全員に周知徹底されていなければなりません。つまり、全員が目標を共有化し、自分たちのものになっていることが必要なのです。営業部門でも、製造部門でも、当月の『売上』や『総生産』、『差引利益』、『時間当たり』などの数字が全員の頭にしっかりと入っていて、職場の誰に聞いても、即座にその数字が口をついて出てこなければいけません。京セラの『アメーバ経営』と『時間当り採算制度』では、目標を全員に周知徹底し、共有化を図ることによって、一人ひとりの参画意識が高められ、これが一丸となって目標達成に向かうエネルギーとなるのです」(522ページ)
稲盛さんは、目標を達成するためには、「潜在意識にまで透徹する強い持続した願望」を持たなければならないと考えていたそうです。これは、自動車を運転に慣れている人は、いちいち、ハンドルを回したり、アクセルを踏んだりするときに、顕在意識で考えることなく、潜在意識だけで動かしているように、会社の目標に向かうための活動も、潜在意識で行動できるようにしなければならないということのようです。
確かに、仕事の目標を達成しなければならないと顕在意識で活動しているよりも、あまり深く考えなくても、無意識のうちに仕事の目標を達成するための活動をしている方が効率的な活動ができと思います。ただ、目標達成を潜在意識で考えることができるようになることは、一朝一夕では実現しません。そこで、稲盛さんは、そのための方法のひとつとして、自分たちの目標を周知徹底し、そして共有化することをあげておられるのだと思います。また、アメーバ経営も、自分たちの目標を明確化することと、参画意識を高めることを目的にしており、これも、目標達成のための活動を潜在意識でできるようにするための方法だと思います。
そして、これは、にわとりと玉子の論理になるかもしれませんが、稲盛さんが実践してきた、毎月、月次試算表を作成し、業況を確認するという活動も、目標を達成しようとするための意識が高いから実践できるものであると同時に、目標を達成するための意識を高める方法のひとつとも言えると思います。これらは、一見すると地味な活動ですが、派手な活動を打ち上げ花火のように実践するよりも、日々、小さなことを一つひとつ確実に実践していくことの方が、着実、かつ、効率的に目標を達成させることができると、私は考えていますし、稲盛さんが実践し、京セラやKDDIの事業を成功させることができた手法であるとも思います。
2023/11/24 No.2536