鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

最初から健全な組織は存在しない

[要旨]

経営コンサルタントの遠藤功さんが米国に留学したとき、競争戦略やマーケティングを学ぶつもりだしたが、米国人学生や、ほかの留学生たちは、組織論に大きな関心を持っていたことに驚いたそうです。すなわち、米国では、組織マネジメントをしっかり学ばなければ、いい経営者やマネージャーにはなれないという意識が強いということに気づいたといことです。


[本文]

経営コンサルタントの遠藤功さんのご著書、「『カルチャー』を経営のど真ん中に据える-『現場からの風土改革』で組織を再生させる処方箋 」を読みました。同書の中で、遠藤さんは、米国の経営者やマネージャーの多くは、積極的に組織マネジメントについて学んでいるということを述べておられます。

「組織を適切にマネジメントすることの重要性を認識している米国では、組織論の研究が進んでいる。古くから多くの実証研究が行われ、経営リーダーやマネージャーの多くは、ビジネススクールなどで、組織マネジメントについての基本を学んでいる。私が米国のビジネススクールに留学したとき、一番驚いたのは、『組織行動論』や『組織心理学』という科目に出会ったことである。私は、競争戦略やマーケティングを学ぶつもりだったが、米国人学生や、ほかの留学生たちは、組織論に大きな関心を持っていた。

『組織マネジメントをしっかり学ばなければ、いい経営者やマネージャーにはなれない』という意識が強かったのだと思う。彼らにとっては『最初から健全な組織など存在しない』ということが大前提である。人種や出生地、宗教、学歴など、多様でバラバラな人たちを、どのようにまとめ上げ、同じ方向を向かせるかが、経営の大テーマであり、マネージャーの最も重要な仕事なのである」(55ページ)

日本の経営者の方の多くも、遠藤さんのように、経営者が注力して学ぶべきことは、競争戦略やマーケティングであると考えていると思います。でも、遠藤さんは、米国に留学し、米国の経営者たちは組織論に大きな関心を持っていることに驚かされました。そして、その理由についても、「事業活動は、組織で実行するものだから」ということも明らかなので、それほど理解が難しいことではないでしょう。ただ、遠藤さんもご指摘しておられるように、米国では、「人種や出生地、宗教、学歴など、多様でバラバラな人たちを、どのようにまとめ上げ、同じ方向を向かせるかが、経営の大テーマ」になっているようです。

現在の日本では、国民の考え方などが多様化しているとはいえ、歴史的に人種のるつぼと言われている米国では、組織をまとめることが、会社経営者にとって、最も関心の大きい課題だったと考えることができます。しかし、19世紀後半以降、他国と比較して歴史が浅い米国が、著しく発展した背景には、こういった、人種のるつぼである国という組織をまとめてきたことが、大きな要因となっていることは間違いないでしょう。もちろん、事業を成功させるには、競争戦略やマーケティングも重要ですが、それらは、組織がきちんと機能することが前提になっています。

すなわち、遠藤さんもご指摘しておられるように、経営者の方は、「最初から健全な組織は存在しない」と考えて事業活動に臨まなければ、優れた競争戦略やマーケティングを実践することはできません。さらに、21世紀の今、効果を得ることができる競争戦略やマーケティングは、難易度が高まってきています。だからこど、組織の健全性が、さらに重要になっていると、私は考えています。

2023/9/18 No.2469