鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業活動が自立的な会社は評価が高い

[要旨]

銀行が融資をしている会社の経営者に対して、個人保証を求める理由のひとつは、経営者が会社経営に真剣に取り組むことを求める、すなわち、規律付けを求めるというものがあります。これに対し、事業計画に基づいて事業運営を行っているなど、事業活動が自立的に行われていることを銀行に伝えることで、銀行は自社に対して規律付けを求めることは不要と判断し、経営者保証を解除してもらえる可能性が高くなります。


[本文]

先日、ある経営者の方から、経営者保証の解除に関するご相談を受けたのですが、その回答内容についてシェアします。ところで、経営者保証ガイドラインでは、経営者保証を外してもらおうとする会社に対し、(1)会社と経営者の資産が区別されている、(2)会社の業績が良好である、(3)会社の財務状況について、適宜、情報開示が行われいるという対応を求めています。そして、私は、これらに加えて、事業活動が自立的であることが重要だと考えています。

では、自立的とはどういうことかというと、明確な定義はありませんが、例えば、事業計画に基づいて事業活動が行われている、事業方針は、社長ひとりだけ、もしくは、少数の経営者だけで決定されず、広く従業員も参加して決定される、ISO9001の認証を受けるなど、一定水準の経営品質を維持しているなどです。このような会社は、高く評価される会社でありということは、多くの方が感覚的にご理解されると思いますが、当然、銀行から見ても高く評価されます。そして、このことは、銀行が経営者保証を求める理由のひとつである「規律付け」をしなくてもすむと考える要因になります。規律付けとは、銀行から融資を受けた会社の経営者が、会社経営に対して真剣に臨むようにする効果を狙うことです。

もし、経営者が、会社が銀行から受けた融資に対して保証していない場合(担保を提供していない場合も含む)、事業がうまく行かなくなり、融資が返済できなくなっても、銀行は経営者に対しては、会社が受けている融資の返済(厳密には保証債務の履行)を求めることはできませんので、経営者が真剣に経営しなくなる可能性があります。そこで、銀行が経営者保証を求めるのは、そのようなことを防ぐことが大きな目的になっているわけです。ところが、前述のように、事業活動が自立的に行われていると、経営者がいい加減な経営をするという懸念は少なくなります。

したがって、自社の事業活動が自立的に行われているということを銀行に伝えることによって、銀行は、自社に対して経営者保証が不要と判断する可能性が高くなると、私は考えています。(実際には、銀行が経営者保証が不要と判断する時には、さまざまな要因を加味して行うため、事業活動が自立的であれば、それだけで、直ちに経営者保証が不要と判断されるわけではありませんので、ご注意ください)では、もし、自社の事業活動が自立的でなければ、経営者保証は外してもらえないのかという疑問を持つ方もいると思いますが、これについては、次回、説明します。

2023/8/3 No.2423