鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自分が主語にするとすべて自分の責任に

[要旨]

嵜本さんは、リユース事業を拡大する中で、ブランド品買取の事業にも進出しました。その際、その決断の結果は、自分に責任があると考えて新規事業に臨むことが大切と述べておられます。もし、他人に指示されて行うことになると、積極的に臨むことができなくなったり、創造性を発揮できなくなったりするなど、面白みがなくて失敗してしまう可能性が高くなるからと考えたそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、バリュエンスホールディングス社長の、嵜本晋輔さんのご著書、「戦力外Jリーガー経営で勝ちにいく-新たな未来を切り拓く『前向きな撤退』の力」を読んで、私が気づいがことについて述べたいと思います。前回は、嵜本さんがリユースの仕事をする中で、リユース品を引き取りに行った時、成長していて移転する会社は職場が綺麗になっているけれど、事業がうまくいかず、店を畳む会社の職場は汚れていることに気づいたことから、事業の発展のためには、職場の整理整頓などを心がけることが大切であるということを説明しました。

その後、嵜本さんは、ブランド品の買い取り専門店をオープンすることにしたそうですが、その決断については、自分自身の責任で行わなければならないと述べておられます。「そもそも、失敗を恐れて挑戦しなければ、成功も得られません。さらに、自分たちでやると決めて、その通りに実行するわけですから、たとえうまくいかなくても、その結果に納得感ががあるしょう。もし、これが、誰かにやれと命じられた仕事で、かつ、面白みが感じられないものであったなら、そもそも、一所懸命やろうとは思えず、そこに工夫も見出せなかったはずです。(中略)

自分自身を主語にすることで、あらゆることが自分のせいになります。そして、自分を主語にすると、何が起きても周りのせいにはできなくなるのです。こうした自責思考を常とすると、うまくいかないときに、自分を責めすぎてしまい、つらいと感じる人もいるかもしれません。(中略)しかし、つらさ以上に可能性も感じられるはずです。なぜなら、その状況を、どう、変化させるかも、自分次第だからです。こうした考え方は、ビジネスにおいても非情に重要ですが、アスリートにしても同じでしょう。

結果を出せないのは、自分の技術や力が足りないからです。では、どうするかといえば、技術を磨き、力をつける、結果を出すためには、それしかありません。相手チームやチームメイト、監督やコーチ、レフェリーなど、誰かのせいにしたければ、ターゲットはいくらでも見つかりますが、そうやって他人のせいにしていると、自分には非がなくなり、改善や工夫、つまり、クリエイティブの余地がなくなってしまいます。当然、成長も見込めません」(93ページ)

この嵜本さんのご指摘は、私も頭では理解できます。でも、私自身についても、これまでの経験を振り返ってみると、うまくいかなかったことに関し、納得できないことはたくさんあります。そういうことについては、感情面では、「これは自分の責任ではない」と思っていました。ただ、自分の責任で内ことが事実だとしても、その責任のある人から償いをしてもらえる保証はないし、償ってもらえるとしても、そうしてもらうまでに時間を要することになります。

そうであれば、自分に責任がなくても、自分で改善できることがあれば、他人や環境が変わることを受け身になって待つのではなく、まず、自分が能動的に行動することの方が、早く、目的を達成できるようになると考えるようになりました。ちなみに、偉大な先人の方たちの中にも、大きなハンディキャップを持ちながらも、大きな功績を残した方がいます。

例えば、カレーハウスCoCo壱番屋を運営する、壱番屋の創業者の宗次徳治さんは、週刊現代の記事によれば、事情は分かりませんが、両親は不明で、生後、すぐに孤児院に預けられたそうです。3歳のときに、養父母に預けられたそうですが、その養父からの家庭内暴力を受けていた上に、貧困の中で育ったそうです。15歳になってから、登校の前に、知人の豆腐店でアルバイトをしながら、高校に通い、卒業後に不動産会社に就職したそうです。

こんなに不遇な少年時代を過ごしながら、社会人になってからはビジネスに成功しました。さらに、2002年には、同社の会長を辞任し、2003年には、28億円の私財を投じて、クラシック音楽のためのホールである「宗次ホール」を建てたそうです。その後、宗次さんは、毎朝4時に起きて、ホールの周辺を掃除し、また、花を植え、昼はスタッフ15人分のまかないを作っているそうです。宗次さんより恵まれた環境に育った私としては、宗次さんには頭を下げることしかできません。

むしろ、宗次さんは、世の中を拗ねて、いわゆる「不良少年」になったとしても、多くの人は同情するのではないでしょうか?でも、繰り返しになりますが、厳しい逆境で育っても、上場会社を築き、いまでは社会貢献もしている宗次さんのような人がいることを考えれば、嵜本さんのいうように、「自責思考」で仕事をすることは、成功への近道なのだと思います。嵜本さんもご自身の会社を上場させていますが、こういう考え方が大切であるということを裏付けていると思います。

2023/7/1 No.2390