鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ペレは世界一シュートを外した選手

[要旨]

サッカーの王様と言われているペレは、現役時代に1,281得点を挙げ、その記録はまだ破られていません。しかし、シュートの成功率は一流選手でも23%と言われていることを考えると、ペレは、ゴールを決める天才というよりも、シュートを打つ天才であったと考えることができます。即ち、多くの成功を得るには、その何倍もの失敗をしなければならないと考えることができます。このことは、失敗は成長の機会であると考えることができるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、バリュエンスホールディングス社長の、嵜本晋輔さんのご著書、「戦力外Jリーガー経営で勝ちにいく-新たな未来を切り拓く『前向きな撤退』の力」を読んで、私が気づいがことについて述べたいと思います。前回は、嵜本さんが、ブランド品買取の事業にも進出した際、その決断の結果は、自分に責任があると考えて新規事業に臨むことで、積極的に臨んだり、創造性を発揮できるようにしたりしたということを説明しました。

その後、嵜本さんは、洋菓子店も開業しましたが、そこに至る過程で、何度も失敗を重ねる度に、「成長している」と考えるようにしていたそうです。「私だけでなく、失敗は成長の機会であることは、スポーツ経験者なら、誰もが実感しているでしょう。サッカーファンはもちろん、サッカーのことはあまり知らないという人でも、伝説の選手である、ペレの名前はご存じではないでしょうか?小柄な俊足で、“サッカーの王様”の異名をとったペレは、現役時代、1,363試合に出場し、1,281得点を挙げたといわれています。

これは、公式記録としては、史上最多得点であり、ペレがセレソンサッカーブラジル代表)を引退してから45年以上経ったいまでも、世界で最もゴールを決めた選手です。そして、ペレには、世界でいちばんゴールを決めた選手ですが、世界でいちばんゴールを外した選手でもあるという逸話もあります。この話を聞いたとき、私は、「なるほど」と得心しました。そもそも、シュートを打たなければ、ゴールを奪うことはできません。ペレはゴールを決める天才というよりも、シュートを打つ天才だったのではないか。(中略)

2018年シーズン、イングランド・プレミアリーグで最もシュート決定率の高かったリヴァプールFCのモハメド・サラーですら、その数字は23%と聞いたこともあります。(中略)シュートの成功率が23%なら、100本打っても23本しか決まりません。しかし、そこで、200本打てば、46本決まります。(中略)成功の数を増やすには、チャレンジの数を増やすしかないのです。(中略)それがはっきりとわかってから、私は、さらに失敗が嬉しくなり、誰よりも早く、誰よりも多く失敗したいと考えるようになりました」(119ページ)

多くの方が、嵜本さんがご指摘しておられるように、「失敗は成功の母」ということは分かっていると思いますが、実際には、心の深いところで失敗を避けようとしている人は少なくないと、私は感じています。というのは、これは、私が中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることなのですが、業績のあまりよくない会社こそ、事業の改善をしなければならないはずなのですが、そういう会社ほど変化を嫌います。逆に、業績がよい会社ほど、現状維持でもよいのではないかと思うのです、むしろ変化に貪欲で、チャレンジ精神に旺盛です。

これは、別の言い方をすれば、PDCAサイクルを実践している会社ほど、業績もよいということだと、私は考えています。PDCAサイクルを回していること自体、サッカーで言えば、シュートをたくさん打つことになるのだと思います。では、どうすれば改善活動に意欲的になれるのかということについては、口でいうほど簡単ではないと思いますが、嵜本さんの述べておられるように、「失敗は成長の機会」と考えるようにすることが、ひとつの鍵になると思います。

2023/7/2 No.2391