[要旨]
バリューチェーン分析は、事業活動のどの部分でどの程度コストがかかっているのか、その結果どの程度付加価値が生み出されているのかを把握し、事業戦略の有効性や改善の方向性を探る分析手法です。特に近年は、同じ事業でも、会社によって結果に差がでるため、その違いを分析するために有用な手法です。
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グロービス経営大学院の嶋田毅さんが、セブンイレブンのバリューチェーン分析について、日経ビジネスオンラインに寄稿しておられました。バリューチェーン分析は、米ハーバード・ビジネス・スクールの、マイケル・E・ポーター教授が提唱したフレームワークで、多くの方がご存知だと思います。しかし、このバリューチェーン分析は、将棋の駒の形をした図で示されていますが、これをどう使うのかということについては、あまり知られていないのではないかと感じています。
そこで、前述の記事の嶋田さんの分析の例を読むと、分かりやすくバリューチェーン分析を理解できると思います。大手コンビニエンスストアは、セブンイレブンの他に、ローソンやファミリーマートもあるのですが、セブンイレブンは、利益率や日商でも、他の2社と差をつけています。では、どうして差が出るのかと言うことについて、同じ事業を営む会社での違いを分析するには、バリューチェーン分析が有用です。
嶋田さんは、「日販の50%を超えるとされるプライベート・ブランド(PB)商品の開発力のたまものです。PBは、メーカーのナショナル・ブランド(NB)商品よりも利益率は高く、それが全体の利益率にも効いてくるのです」と分析しています。これは、言葉だけでの説明ですが、嶋田さんが示しているような図を作成することで、その違いが明確に分かると思います。
とはいえ、ここで示した分析結果に、目新しさを感じる人は少ないと思います。多くの方は、セブンイレブンは、商品開発に力を入れているということは知っているので、わざわざバリューチェーン分析を行うまでもなく、セブンイレブンの強さを理解しているからでしょう。しかし、事業に失敗してしまう会社の例を見ると、「●●業はもうかっていそうだから、自社も参入しよう」と安易に考えただけで参入した結果、もくろみが外れてしまうということが多いと思います。
もうかっている会社の中には、その業種がもうかっているのではなく、その会社の独自の工夫があるから成功しているのであり、その会社にならうには、きちんとバリューチェーン分析を行ってからでなければ、成功しません。現在は、同じ事業でも成功する会社とそうでない会社があるので、新たに事業を始めて成功するには、成功している会社のバリューチェーン分析を行って、その成功要因をきちんと把握する必要があることに、注意が必要です。
2022/5/20 No.1983