鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

労働環境の改善が売上増加につながる

[要旨]

一般のお店では3時間かかる、厨房設備の掃除が、サイゼリヤでは9分でできるようにするなど、従業員の負担を軽減することで、生産性を高めています。このような、従業員の負担軽減が生産性増加につながるという発想を実践している会社は、かつての村山さんのも含め、意外と少ないようです。


[本文]

今回も、ミシュラン一つ星レストラン、ラッセオーナーシェフの村山太一さんのご著書、「なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?偏差値37のバカが見つけた必勝法」の中から、私が気づきを得たものについてご紹介したいと思います。「(サイゼリヤでは)スタッフの負担を減らすために、徹底的に仕組みを考えています。例えば、業務用の厨房では、グリストラップという、油脂や残飯、野菜くずなどが、下水に流れるのを防ぐ装置を設置しなくてはなりません。

この装置の掃除はたいへんで、僕の店では、週3回、3時間かかっていました。ところがサイゼリヤでは、週1回、9分でできるような掃除のしかたをしています。それどころま、掃除をしなくていいグリストラップも開発してしまったのです。3時間も油でギトギトになった装置を掃除するのは苦痛でしかありません。(中略)それが9分で済むなら、楽勝です」(110ページ)

厨房設備の改良は、多店舗展開している会社でなければ行えないという面もあると思います。ただ、それを実行できるかどうかは別として、村山さんがいままで経験してきた飲食店では、きつい作業があっても、それは、従業員が耐えるべきものという価値観の職場ばかりだったことから、サイゼリヤの方針を見て、村山さんの考え方を変えるきっかけになったようです。

一見すると、このサイゼリヤの設備の合理化による改善は、当たり前のように思えるかもしれませんが、まだ、経営者の方の中には、「商品のできばえはどうか」、「顧客は自社を評価しているか」ということばかりを気にかけ、一方で、労働環境については、「従業員の労働環境がきつくても、それは成長の過程で避けられないもの」という大義名分で改善を怠っている方もいるのではないかと思います。

でも、本当は、「従業員が働きやすい職場づくり」→「よりよい製品の製造や商品の販売」→「顧客の満足」というプロセスをつくるべきなのですが、労働環境の改善は意外と見落とされがちだと、私は感じています。ちなみに、村山さんご自身のお店のグリストラップを改良したのかどうかはわかりませんが、村山さんは、この気づきによってラッセの生産性を高め、2019年の売上高を前年の2.2倍、同年のひとりあたり労働時間を前年から4割減にすることができたそうです。

2021/10/18 No.1769

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