[要旨]
ほとんどの会社は、給料の一部、または、全部を後払していますので、貸借対照表の流動負債に、「未払給料」という経過勘定が計上されます。この額が、1月分程度の額であれば正常ですが、異常に多い場合は、本当に給料の支払い遅延が起きている可能性がありますので、注意が必要です。
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一般的な会社の貸借対照表の流動負債の部には、「未払給料」という勘定科目がありますが、このような科目ある貸借対照表を見かると、「この会社は、給与の未払い、または、支払遅延があるのか」と、悪い印象を持つ人もいるかもしれません。でも、簿記を習っていたり、会計の知識のある人にとっては、未払給料という勘定科目は珍しくなく、恐らく、未払給料という勘定科目を計上していない会社は、ほとんど存在しないでしょう。
では、なぜ、未払給料という勘定科目があるのかというと、次のような理由があるからです。例えば、毎月1日から末日までの給料を、翌月の10日に払っているA社という会社があるとします。3月分の給料は、4月10日に支払われるので、3月分のその会社の給料総額が300万円だったとすると、4月10日に、次のような仕訳が行われます。
4月10日:(借方)給料300万円(貸方)普通預金300万円
しかし、A社の決算月が3月であるとすると、4月に支払われた給料は、3月ではなく、4月の費用になってしまいま。そこで、A社が決算を行う時に、次のような修正仕訳が行われます。
3月31日:(借方)給料300万円(貸方)未払給料300万円
4月10日:(借方)普通預金300万円(貸方)給料300万円(いったん行われたれた仕訳を取り消します)
4月10日:(借方)未払給料300万円(貸方)普通預金300万円
この一連の会計取引を言葉で説明すると、決算日である3月31日に、未払となっている300万円の給料を、いったん、負債として計上し、給料が実際に支払われた4月10日に、その負債がなくなったものとして、負債に計上した金額を減らすということです。
このような、費用が発生した時点では、それが支払われないために、一時的に計上される負債の勘定科目を、経過勘定といいます。そして、未払給料と同様なものとして、光熱費(未払光熱費)や、電話料(未払通信費)などがあります。逆に、3月に支払った4月分の家賃は、前払家賃という資産に計上しますが、これも経過勘定です。
話をもどすと、未払給料という勘定科目が計上されている会社があったとしても、ほとんどの場合は、正常に給料が支払われているので、特に問題視する必要はありません。しかし、従業員数から類推される1か月あたりの給料の額よりも、多額の未払給料の額が計上されている会社は、本当に給料の支払遅延が起きている可能性があるので、その点については、注意して見る必要があります。