[要旨]
中小企業がリースを利用した場合、会計上の資産や負債は増えないものの、銀行の融資審査上は、大企業に適用されるリース会計が適用された時と同様に、資産と負債が増加したものとして扱われる可能性が高いと思われます。
[本文]
前回までは、リースの利点と欠点について説明しましたが、今回は、リースの特徴を会計的な観点から説明したいと思います。なお、この記事では、リース会計そのものについては詳しくは説明はしませんので、リース会計を詳しく学びたいという方は、拙著、「図解でわかるリースの実務いちばん最初に読む本」をお読みいただきたいと思います。(ご参考→ http://amzn.to/1o1VluB )話を戻すと、以前、例えば、1,000万円の機械をリースで調達したときは、その金額を固定資産(勘定科目はリース資産)に計上し、同時に、同額を(一般的には)固定負債(勘定科目はリース債務)に計上し、すなわち、勘定科目は異なるものの、1,000万円の長期借入金で同額の固定資産を購入したときと、同じ会計処理が行われるということをお伝えしました。(この説明は、理解を容易にするために、正確さを犠牲にしていることをご了承ください)
一方で、中小企業には、このリース会計基準の適用は任意であるため、多くの中小企業では、リースで設備を調達しても、リース資産やリース債務は計上しません。そのため、設備を調達するためにリースを利用した会社は、融資を受けて設備を調達した会社よりも、見かけ上は資産効率が高い(少ない資産で多くの利益を得ること)ように評価されます。しかし、中小企業であっても、リースを利用している場合、未経過リース料(今後支払う予定のリース料総額)を、貸借対照表の欄外に記載することになっており、銀行が融資を行うときは、その金額を融資を受けている金額とみなして融資審査を行うと考えられます。
ところで、日本では、リース会社が登場したのは昭和38年であるのに対し、リース会計基準が策定されたのは、平成5年と、だいぶ後になっています。このリース会計基準が策定されるまでは、すべての会社で、会計上もリース取引は賃貸借取引として扱われてきました。そのため、リース会計基準が適用されていなかった、1990年代前半までは、リースの利点として、リースによって設備を調達しても貸借対照表が膨らまないということが言われていました。でも、現在は、リース取引の実態に鑑み、リース取引は融資取引とみなされ、かつ、リース会計基準が適用されていない中小企業であっても、それは同様であるということです。次回は、リースと融資の関係について説明する予定です。