[要旨]
日本のレストランは、米国と比べて、味もよく、価格も安いが、日本人はそのような状況をあまり理解していないようです。したがって、日本ではあまり高い金額で売れない商品も、海外では評価される可能性があるので、海外へ事業展開することで、事業が好転する可能性があります。
[本文]
米国の邦字新聞「ニューヨークBIZ」のCEOの、高橋克明さんが、メールマガジンに、日本のレストランについて書いておられました。要旨は、(日本の有名なラーメン店の)一蘭のラーメンが、(日本では約800円なのに)ニューヨークでは2,000円で売られていたことが、日本で話題となったようだ。しかし、それなりの食材を使っていることを考えると、2,000円のラーメンは決して高いとはいえない。
しかも、ニューヨークでは、味がそれほどでもなく、しかも価格が高いにもかかわらず、チップの額が少しでも少なかったら、店の外まで追いかけてくる店員がいる一方で、味がよく、値段も安く、チップも不要な上に、退店時にお礼までする店員がいる日本の店は、とてもすばらしい。それなのに、多くの日本に人たちは、クーポンなどを使って、さらに、安く料理を食べようとしている。しかし、このように、個人が強い節約志向を持っていると、めぐりめぐって自分の仕事も厳しい価格競争に巻き込まれることになる。したがって、日本は、しばらくはデフレが続き、景気回復も、まだまだ先になるだろう、というものです。
高橋さんのご指摘は、まさに合成の誤謬のことであり、すなわち、個人にとって最善の経済活動が、国全体から見れば、必ずしも最善とはならないということです。これについては、私もこれまで何度か指摘してきたので、ここで改めて述べる必要はないと考えています。(ご参考→ https://bit.ly/2Ifpcm9 )ただ、高橋さんのメールマガジンを引用したのは、ニューヨークでは、一蘭のラーメンを、2,000円で販売しても、きちんと評価してくもらえるということが書いてあったからです。
日本では、失礼な書き方ですが、ラーメンはラーメンであり、あまり高い金額を払う食べ物と考える人は少ないのでしょう。これを言い換えれば、材料の質や、ラーメンを調理する技術など、目に見えにくいものを評価する風土が、日本にはあまりないということなのでしょう。したがって、日本ではあまり高く売ることができない製品が、海外では高く売れることも多いと考えることができます。
例えば、東アジアでは、日本料理店の人気が高いときいたことがあります。また、日本酒も、ヨーロッパの国では、日本の価格の10倍以上で売られているときいたことがあります。すなわち、日本でなかなか売れない商品があったとしても、日本国内での評価がすべてではないということだと思います。日本ではうまくいっていない事業も、販売対象を海外へ広げれば、成功する可能性があると、私は考えています。