鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

活動基準原価計算

[要旨]

現在は、コストを極限まで削減するという観点から、精緻な原価管理の手法が求められるようになってきており、その手法として、活動基準管理が行われるようになり、その管理を行うために、生産活動に着目した原価計算である活動基準原価計算が考案されました。


[本文]


今回は、活動基準原価計算(Activity Based Costing、ABC)について説明します。これは、必ずしも正確な説明ではないですが、ABCとは、財務会計でも行われている原価計算よりも、さらに活動に基づいた原価計算を行おうとする考え方です。ちなみに、財務会計における、製造業の原価計算も、なるべく実態に近い原価計算をしようとするものですが、計算方法の簡便さにも配慮せざるを得ないので、正確さには限界があります。


具体的には、製造間接費(工場の光熱費、工場の家賃、工場の減価償却費、間接業務に携わる工員の工賃など)を、どのように製品に配賦(はいふ、ふり分けること)するかという基準について、財務会計では、数量、所要時間数、工程の数、生産活動に要する工場の面積、その部門における直接材料費の割合、その部門における製品の売上高の割合などがあり、これらの中から、会社が適切と考える基準によって配賦を行います。これらの配賦基準は、決して誤りではありませんが、同時に、計算を簡便に行えるようにするための、便宜的な基準であるという側面もあります。


一方、ABCでは、受注、発注、請求、搬入、検査、納品、段取り、保守、安全対策などの活動を基準にして、原価を配賦します。ちなみに、これらの配賦基準は、ABCのコストドライバーと呼びます。このような活動を基にして、製品の原価を計算することで、より、精緻な原価管理を行うことができるようになります。


ところで、ABCが、なぜ、このような複雑な原価管理を行おうとするのかという背景には、現在の生産活動は、製品の製造そものに占める原価以外に、多くの原価が必要になってきており、より精緻な原価管理が求められるようになってきたというものがあります。例えば、現在は、品質管理、安全対策という活動が重要性を増しているということからも、それが分かるでしょう。


さらに、よりコストを削減するという観点からも、精緻な原価管理の手法が求められるようになってきており、その手法のひとつとして、活動基準管理(Activity-Based Mnagement、ABM)が行われるようになりました。すなわち、ABCはABMを行うために使われる原価計算ということです。したがって、ABCは、事業の成果を測る手段としての従来の原価計算ではなく、経営者が、コスト管理や、よりよい生産活動を目指すための、管理ツールとしての原価計算と言えます。


また、ABCは、活動に着目して原価計算を行うので、製造業だけではなく、サービス業にも応用できます。例えば、美容室で、単に顧客への施術だけでなく、準備・段取り、顧客管理、宣伝活動、アフターサービス、人材教育などもABMによってコストを管理することで、より効率的な事業活動を実践できるようになります。

 

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