鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営者の判断に正解はない

以前、平成29年に破産した、山梨県の地

場スーパーやまとの元社長、小林久さんの

ご著書を紹介したことがあります。


(ご参考→ https://bit.ly/2v8Sb4p


そして、これは、小林さんから教えていた

だいたのですが、スーパーやまとは、平成

22年の中小企業診断士試験の2次試験の

問題で、成功している会社の事例として述

べられています。


(ご参考→ https://bit.ly/2TIHfEX


では、倒産してしまった会社を、成功して

いる会社として出題した中小企業診断協会

に、誤りがあったのかというと、そういう

ことにはならないと思います。


問題を読んでもらえばわかる通り、当時の

やまとは、妥当な施策を実践し、その効果

も現れていました。


むしろ、ほかの会社ではなかなか実践しな

いことを積極的に行っていたという面で、

お手本にさえなっていたと思います。


「では、そのようなお手本になる会社が、

なぜ、倒産したのか」という疑問を持つ方

もいると思います。


これに対しては、詭弁のように思われるか

もしれないのですが、私が銀行に勤務して

きた経験や、経営コンサルタントとしての

経験から感じるのは、「会社を倒産させな

い完璧な対策はない」というようにしか、

説明はできません。


このことは、銀行の行う、融資審査につい

ても共通していると思います。


よく、法律系の士業の方から受ける質問

に、「どういう条件がそろえば、会社は融

資を受けられるのか」というものがありま

す。


これに対しては、「こういう条件であれば

融資を受けられる見込みがあるが、最終的

な結論は、実際に融資申請して見ないとわ

からない」としか回答できません。


このような思い違いをする方は少数なので

すが、例えば、会社を登記するときに、必

要な書類がそろえば、法務局に登記を受け

付けてもらえるということは、前もって分

かりますが、銀行に融資を承認してもらえ

るかどうかは、事前に100%断定できる

ことは、ほとんどありません。


また、融資審査をする側も、仮に、融資の

承認をしたとしても、その融資が100%

返済されるとは考えていません。


これは意外に感じる人もいるのではないか

と思いますが、銀行も融資審査のときに、

リスクをとる判断をしています。


極端な例ですが、銀行が新たな融資をした

会社が、1年以内に倒産することもありま

す。


でも、「会社が粉飾をしていたことに気づ

かなかった」、「会社の担当者が会社から

饗応を受けていた」など、よほど悪質なこ

とがない限り、融資審査に加わった銀行職

員が責任を問われることはありません。


(ただし、貸倒損失を被ったことに関し、

支店長クラスの職員が、結果責任を問われ

ることはあります)


融資審査は複数の職員が関わって、組織的

に判断しており、かつ、融資した会社が倒

産するリスクを負うことが前提になってい

るからです。


話をもどすと、よく、新たな施策を実践す

ることに慎重な経営者もいますが、逆に、

新たな施策を実施しないことが倒産に近づ

くこともあります。


会社経営上の判断に、「絶対」はないわけ

ですから、これは非論理的な考えであるこ

とは承知していますが、何もしないより

も、何かをすることの方が、よい結果を導

くことになると、私は考えています。


だからと言って、何でもやればよいという

わけではありませんが、果敢に事業経営に

挑むということが、アントレプレナーシッ

プ(起業家精神)であり、その心構えを持

つことが、会社倒産に対する最大の防御に

もなると、私は考えています。

 

 

 

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