鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

これからのあるべき銀行

金融庁が、地方銀行のお手本と賞賛してい

た、地方銀行スルガ銀行が、実は、不正

な融資をしていた上に、同様に金融庁がお

手本の信用金庫と賞賛していた東京都内の

大手信用金庫も、スルガ銀行と同様に投資

用不動産向融資に注力し、かつ、その不動

産を仲介していた不動産会社が書類を改ざ

んしていた疑いで、金融庁が同金庫に検査

に入ったとの報道がありました。


それらの事実はさておき、このふたつの金

融機関は高い収益を得ていたものの、実際

には、「本来の」金融機関としての事業で

収益を得ていたわけではないということが

明らかになりつつあります。


すなわち、金融庁が「お手本」と考えてい

た金融機関が、存在しないことになってし

まったということです。


別の書き方をすれば、従来は、収益性の低

い金融機関に対して、金融庁は、改善の余

地があると言える立場にあった訳ですが、

前述の2つの「お手本」の金融機関が、お

手本ではなくなってしまったので、金融庁

は、あるべき道筋を示せなくなっていると

いうことです。


ここまでは前振りで、本題は、なぜ、金融

機関は、収益性が低い状態が続いているの

に、その状況を改善できないでいるのかと

いうことです。


これは、私の仮説ですが、日本の金融機関

は、慣習的に、倒産の確率の高い金融機関

に融資をすることができないでいるからだ

と思います。


かつて、元都知事や、元日本銀行職員が、

ミドルリスクミドルリターン(リスクのや

や高い会社に対して、やや高めの利率で融

資を行う事業)の銀行を設立し、「貸し渋

り」をしない銀行をめざしたことがありま

したが、失敗しました。


話がそれますが、それらの2つの銀行の事

業の失敗について、報道機関では、乱脈融

資が原因と報道していますが、それは、事

業の行き詰まりの原因のひとつであり、根

本的なものではないと私は考えています。


もし、その報道機関の報道が事実なら、乱

脈融資をしなければ、前述の2つの銀行の

事業は行き詰らなかったことになります。


「乱脈融資」と言われたことが起きた理由

は、なかなか収益が得られいなかで、なん

とかして収益を得ようとして融資を拡大し

た結果であり、なぜ、ミドルリスクミドル

リターンの事業方針では、成功しなかった

のかということが、真の失敗の原因です。


それが、前述したとおり、日本の銀行は、

倒産する確率が高い会社に対しては融資は

しないという慣習があるからだと、私は考

えています。


この説明は分かりにくいので、別の言い回

しをすると、結果的に融資した会社が倒産

することがあるとしても、倒産の確率が高

い会社には、日本の金融機関は、最初から

融資をしないという傾向があります。


この説明も、やや抽象的なので、私の感覚

的なことを述べると、例えば、倒産する確

率が10%程度の会社に対しては、日本の

金融機関は、最初から融資をしないという

ことです。


ただ、倒産する確率が10%の会社に対し

て、15%の金利で融資をするという方針

で融資をしていれば、理論的には、銀行は

5%の利益が得られるのですが、その理論

は分かってはいても、融資した会社が倒産

すると、その銀行(融資担当者や支店長)

は、「融資先の倒産を見抜けなかった」と

いう烙印が押される(自分の評価が下が

る)と考え、それを避けてしまう傾向にあ

ると私は考えています。


さらに日本では、「倒産」に対するイメー

ジが、金融機関だけでなく、預金者にも心

理的に重く受け止める傾向にあり、このよ

うな慣習は、なかなか変わらないことも事

実だと思います。


そこで、金融庁の行うべきことは、表面的

な収益の高い金融機関をほめることではな

く、もっと、金融機関の実情を深堀りし、

あるべき金融機関のビジネスモデルを示す

べきであるということが、今回の記事の結

論です。

 

 

 

 

 

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