私が事業の改善のお手伝いをしている
会社さまには、簡単なバランス・スコア・
カード(BSC)を導入してもらってい
ると、これまで何度かお伝えしています。
この、BSCの実践で、最も大切な
ことは、じょうずにPDCAを行う
ことができるかということです。
PDCAは、多くの方がご存知と思い
ますが、計画(Plan)→実行(Do)
→検証(Check)→Action
(改善)を繰り返して行きながら、
自社の事業をより優れたものに磨いて
いくという活動です。
この、BSCとPDCAの関係ですが、
事業の改善活動そのものはPDCAに
よって行いますが、BSCは効率的な
戦略遂行と、戦略の進行状況を可視化
するためのツールとして利用します。
話しをもどして、BSCによって改善
活動を行いましょうと提案すると、
半数以上はあまり歓迎されません。
残りの半数未満の会社さまも、
BSCを実践してみても、なかなか
定着しません。
なぜかというと、例えば、「商品を
売る」という活動は多くの方が
やりがいを感じるのですが、「どう
やってもうけを増やしていくか」と
いう、経営の工夫については、
やりがいを感じる人はすくない
ようです。
例えば、会社の中で、経理部長が
営業部長に対して、「●●社との
取引は、採算があまり取れていない
のではないですか?」と質問を
したとします。
これに対して、営業部長が、
「我々は、●●社との取引維持に
最大限の努力をはらっている。
これ以上値上げをしたら、他社との
競合に敗れ、取引を切られてしまう。
もし、値上げをして取引がなく
なったら、だれが責任をとるのか」
といった会話が起きる時はないで
しょうか?
こういった、採算すれすれの取引は、
維持するか解消するかという判断は
難しいものです。
結果として、維持することが正解かも
しれないし、解消することが正解かも
しれません。
そこで、まず、経営者が、自社の利益
計画から鑑みた、取引を維持する
相手の一定の基準を示し、それに
あてはまるかどうかということを
1社ずつ検討するということが必要に
なります。
ところが、こういった採算の基準を
提示するということや、それにあて
はまるかどうかを検証するという
活動、すなわち、PDCAの「C」の
活動は、あまり実行されません。
やはり、会社では、「商品を売る」と
いう活動が最も重要な活動と認識され
がちであり、商品が売れていれば安心
してしまうという傾向があります。
これは、私の経験から述べることで、
客観的な根拠はないのですが、商品が
売れていることに安心してしまい
がちな会社は、収益性はあまり高く
ないと感じています。
もう少し端的に述べれば、商品が
売れてさえいればよいという会社は、
結局は事業が成行的であり、その
ことが赤字の原因になっていると
いうことが言えるのではないかと
思います。
これを言いかえれば、経営とは、
商品を販売をすることに直接関与
するのではなく、事業が収益を
得られるようにしていく仕組みを
作ったり、そのための活動に関与
することが第一の役割であると私は
考えています。
しかし、前述の通り、事業を見直し
して、収益の得られるようにして
いくという活動は地味なものであり、
それをやりがいをもって取り組もうと
する人の割合は少ないように感じて
います。
結論とすれば、PDCAのうち、
PとDは多くの方が関心を持ち
ますが、CとAの活動に関心を
持つ人は少ないようです。
でも、CとAを実践することこそ、
最も難しい課題であり、そして、
それが正に経営者の方の役割で
あると私は考えています。
むしろ、それに取り組まない経営者は、
「売上を上げるため」という口実で、
本来、果たすべき役割から逃れようと
しているのではないかと思います。