経営コンサルタントの石原明さんが「自分の息子を東大生にしたいと思っている人は多いが、東大生を養子にしても満足する人はいないだろう」という趣旨のことをお話しされていました。実の息子を東大に入学させても、東大生を息子にしても、どちらも「東大生の息子」という結果が得られますが、「息子を東大生にしたい」と望んでいる人は、東大生になっている人を息子にしても満足せず、東大生になっていない息子を東大に入学させることで満足が得られるということです。
一方で、「優秀な部下が欲しい」という要望をもっている経営者の方も多いでしょう。しかしながら、このような要望を持つ人は、たいていは「世の中には無能な人が多いから、自分の会社には優秀な人が入社しない」と考えているでしょう。冷静に見れば、このように考えることはあまり賢明ではないということは、多くの方に理解してもらえると思いますが、自社の人材が貧弱であると感じている経営者は少なくないと思います。
このような考えを持つ経営者が多いのは、人材育成は経営者の役割ではないと考えているからではないかと思います。しかし、現実には、なかなか満足できる人材を自社に迎えることは難しく、結果として、自分が望む人材は自ら育成するしかないという状況が現実でしょう。私としては、起業して経営者になるということは、部下を育成する役割を持つと考えているのですが、起業の前に、そこまで考えが及んでいる人は少数派であると思います。