鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

サーバント・リーダーシップ

[要旨]

危機的状況や組織変革の時は、リーダーは、強いリーダーシップを発揮することが必要ですが、変革が進み、組織が自走し始めたら、強いトップダウンから、支援やコーチング的なリーダーシップスタイルに変えていくことも必要であり、このようなリーダーシップをサーバント・リーダーシップといいます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、シェアード・リーダーシップは、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有している組織の状態で、環境が変化しやすい時代に向いているものであることから、これをを採り入れると、チーム全体のモチベーションが向上するだけでなく、プロジェクトを円滑に進行させることができ、チーム全体のパフォーマンスを高めることができるということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、サーバント・リーダーシップについて述べておられます。「危機的状況や組織変革の時は、リーダーは、強いリーダーシップを発揮することが必要ですが、変革が進み、組織が自走し始めたら、強いトップダウンから、支援やコーチング的なリーダーシップスタイルに変えていくことも必要です。これが、いわゆるサーバント・リーダーシップです。(中略)サーバント・リーダーシップという言葉から、常にメンバーに言われるがままに尽くすのだという誤解が生じやすくなってしまいます。

サーバント・リーダーといえども、しっかり方向性(ビジョン)を定めないといけません。サーバント・リーダーも魅力的でエキサイティングなビジョンを掲げ、それを皆に浸透するまで繰り返し、繰り返し伝え続ける必要があります。ビジョンを示せないサーバント・リーダーは、ただのサーバント(召使い)になってしまいます。日本の管理職に多いのはこのタイプです。『人の良いおっちゃん』ではダメです。サーバント・リーダーは、リーダーとして方向性(ビジョン)を示しながら、実際にその実行にあたっては、サーバントになるのです。部下の目標達成を助けるのが、自分の役割と考えています。どうすれば部下が成功できるのかと、絶えず考えています。

共感を得るサーバント・リーダーになるためには、『謙虚さ』を持つことが必要です。『ビジョナリー・カンパニー2』の中で述べられている『第5水準のリーダー』も、サーバント・リーダーの特質を備えています。ビジョンを達成するための強い意思を持ちつつも、とても謙虚なリーダーです。うまく行けば、窓の外を見て、メンバーのお陰だと感謝し、うまくいかなかったら、鏡を見て自分の力が足りなかったことを反省します。実際には、この反対で、あまりに多くのリーダーが、地位や権力を私物化して勘違いしています」(106ページ)

本旨から外れますが、岩田さんもご指摘しておられるように、本当は、「部下の手柄は部下のもの、部下の失敗は上司の責任」と考えなければならないところを、「部下の手柄は自分のもの、部下の失敗は部下の責任」と考える上司がたくさんいるという現実は、私も実感しています。リーダーシップについて考える前に、部下の失敗を部下の責任にするだけでよいのなら、上司は何の役割も果たしていないということになるのですが、意外とそれを理解していない方は多いようです。話しを戻すと、岩田さんは、サーバント・リーダーシップに関し、ネルソン・マンデラの次の言葉を引用しています。

「リーダーとは、羊飼いのようなものであり、最も機転のきくものに戦闘を歩かせ、残りのものをそれに従わせ、リーダーは群れの一番後ろにいる。誰も後ろから導かれていることに気づかない。ただ、何か危機が起こったときには、リーダーが先頭に立ち、リードする必要がある」私も、理想的なリーダーとは、「誰も後ろから導かれていることに気づかない」ようなリーダーだと思っています。なぜなら、その方が、メンバーがすべての能力を発揮できるからです。だから、第5水準のリーダーがいる会社の業績は、最も高くなるのだと思います。

2024/4/13 No.2677

 

シェアード・リーダーシップ

[要旨]

シェアード・リーダーシップは、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有している組織の状態で、環境が変化しやすい時代に向いているものです。そして、これをを採り入れると、チーム全体のモチベーションが向上するだけでなく、プロジェクトを円滑に進行させることができ、チーム全体のパフォーマンスを高めることができます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、パートナー・リーダーシップとは、どちらがリーダーで、どちらがフォロワーか、その時々によってその役割が入れ替わるようなリーダーシップスタイルで、このようなリーダーシップが発揮されることで、役員や従業員の個々の得意分野を活かせるだけでなく、能動的、かつ、効率的な活動が促されるということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、シェアード・リーダーシップについて述べておられます。「シェアード・リーダーシップ(SL)とは、パートナーシップ・リーダーシップを、より広く、メンバーに当てはめて、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有している組織の状態です。SLは、近年、ビジネス業界で注目されている考え方で、環境が変化しやすい時代においては、複数人がリーダーシップを発揮し、多様な考え方や価値観に基づいて、業務を行うことが有効とされています。SLを採り入れると、チーム全体のモチベーションが向上するだけでなく、プロジェクトを円滑に進行させることができ、チーム全体のパフォーマンスを高めることができます。

また、チームメンバー一人ひとりが、『組織のミッションを自分のことと考え』ており、グループ内の知識の融合が積極的に行われ、リーダーシップを取ることで、高い成果が得られます。これからは、リーダーは、一人ひとりのメンバーに、『自分のビジョンは何か』、『自分は何をしたいのか』を語らせることが大切です。(中略)ただし、SLを効果的に適用するには、質の高い明確なコミュニケーションや、メンバー間の信頼が必要です。また、各メンバーがリーダーシップを取ることに慣れていない場合、最初は混乱や摩擦が生じることも考えられます」(104ページ)

メンバー全員がリーダーシップを発揮している組織は、その成果も大きいということは、容易に理解できると思います。しかし、メンバー全員がリーダーシップを備える状態にすることは、一朝一夕には実現することは難しいので、SLが発揮できるようになるまでは、それなりの労力が必要になります。また、それが実現した後も、「質の高い明確なコミュニケーションや、メンバー間の信頼が必要」になるので、そのための労力も求められます。

とはいえ、「環境が変化しやすい時代においては、複数人がリーダーシップを発揮し、多様な考え方や価値観に基づいて、業務を行うことが有効」であることも間違いないわけですから、SLを採り入れた組織づくりを避けることはできなくなりつつあるとも言えます。したがって、難易度は高いものの、事業活動の競争力を高めるために、メンバー全員にリーダーシップを習得させることが、これからの経営者の重要な役割になっていると言えるでしょう。

2024/4/12 No.2676

 

パートナー・リーダーシップ

[要旨]

パートナー・リーダーシップとは、どちらがリーダーで、どちらがフォロワーか、その時々によって、阿吽の呼吸でその役割が入れ替わるようなリーダーシップスタイルです。このようなリーダーシップが発揮されることで、役員や従業員の個々の得意分野を活かせるだけでなく、能動的、かつ、効率的な活動が促されます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、米国のリーダーシップの研究者のマッコールは、「リーダーシップは生まれつきのものではなく、いくつかの資質の下で、成功や失敗を経験して体得して行くもの」という説を立てており、経営者の方が従業員にリーダーシップを習得して欲しいと考える場合は、成功や失敗を経験させる機会を与えることが求められていることになるということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、パートナー・リーダーシップについて述べておられます。「組織が順調にいっている時の理想的な上司・部下の関係のリーダーシップは、パートナーシップです。どちらがリーダーで、どちらがフォロワーか、その時々によって、阿吽の呼吸でその役割が入れ替わるようなリーダーシップスタイルです。

30年連れ添った夫婦のように、共通の目標に向かって協力する2人が信頼関係で結ばれている時、リーダーとその部下は、相互に影響し合う機会に恵まれています。そのとき手掛けている仕事の内容、それを処理する能力、仕事への意欲に応じて、リーダーシップは両者の間を行ったり来たりします。仕事をどのように進めていくかを決めるにあたって、両者が得意な部分でリーダーの役割を果たす。つまり、リーダーとフォロワーでリーダーシップを分け合うのです。まさしく組織が安定している時には、共感型のリーダーの理想的な姿です。

例えば、ホンダの創業者の本田宗一郎(技術)さんと藤沢武夫(経営)さん、ソフトバンク孫正義(ビジョン)会長と宮内謙(経営実務)副社長、あるいはスターバックスハワード・シュルツマーケティングの天才)、ハワード・ビーハー(高い人間性)、オーリン・スミス(財務のプロ)の3人の関係性かもしれません。お互いの強みを活かせるよう、そして、弱みを補い合える関係性を築いていたと思います。もちろん、表に出てくるのはトップだけですが、実際はメンバー間でリーダーシップを分け合っていたので、大成功したのだと思います」(103ページ)

私は、従業員の方に対し、リーダーシップを習得してもらうようにすることが大切だと思うのは、岩田さんがご指摘しておられるように、リーダー(上司)とフォロワー(部下)の間で、「リーダーシップを分け合う」ことが可能だからです。こうすることで、役員や従業員の個々の得意分野を活かせるだけでなく、能動的、かつ、効率的な活動が促されます。ちなみに、念のために言及すると、「リーダーシップを習得させること」と、「リーダーを育成すること」は異なりますので、混同されないようご注意ください。

話しを戻して、岩田さんがご指摘しておられるように、ホンダ、ソフトバンクスターバックスのように、複数の役員がリーダーシップを発揮している会社は、業績も高いということが、容易に理解できます。それは、繰り返しになりますが、複数の役員が、それぞれの得意分野で能力を発揮できるためです。ところが、直接的な根拠を示すことはできませんが、私がこれまで多くの中小企業をお手伝いしてきた経験から感じることは、複数の役員がいるとき、中互いしてしまうことが多いということです。それは、1つの組織の中で、複数の人がリーダーシップを発揮してしまうと、それは、お互いに対立する存在になってしまうことの方が多いということです。

もちろん、ホンダやソフトバンクのように、複数の役員がうまく協力している会社はあるものの、協力し合う役員が成熟していないと、その効果を発揮できるようになることは難しいと、私は考えています。とはいえ、岩田さんのご指摘しておられるような、パートナー・リーダーシップが発揮できるような組織を目指すことは大切だと思いますが、そのためには、単に、異なる得意分野を持つ人が集まるだけでよいということではなく、お互いの目指す会社の理想像を、よく理解し合っておいたり、お互いを尊重する関係を構築したりすることが鍵になると、私は考えています。

2024/4/11 No.2675

 

リーダーシップは経験から習得する

[要旨]

米国のリーダーシップの研究者のマッコールは、「リーダーシップは生まれつきのものではなく、いくつかの資質の下で、成功や失敗を経験して体得して行くもの」という説を立てています。したがって、経営者の方が、従業員にリーダーシップを習得して欲しいと考える場合は、成功や失敗を経験させる機会を与えることが求められていると言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、米国の経営コンサルタントのコリンズは、米国の700社を調査した結果、ビジョナリー・カンパニー(業界内で卓越した会社)の経営者に必要なのは、カリスマ的なリーダーシップではなく、控えめで謙虚なリーダーシップ、すなわち、第5水準のリーダーシップということがわかったということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、リーダーシップは経験から学ぶことができるということについて述べておられます。「1988年に、(米国のリーダーシップの研究者の)M.W.マッコールは、『リーダーシップは生まれつきのものではなく、いくつかの資質の下で、成功や失敗を経験して体得して行くものである』という説を立てました。つまり、リーダーシップは、その人の生まれつきの個性ではなく、後天的に開発でき、教えられるという考え方です。

リーダー育成には、『一皮剥けるような経験』が大切であり、一般的に成功するリーダーに必要なものは、次の体験であるとしています。(1)チャンジングな仕事にかかわること。(2)極めて良い、あるいは、悪い上司が模範となること。(3)困難を乗り越えること。そして、リーダーシップを獲得するために必要な能力は、経験から学習する能力に尽きるとし、『その能力は、逆境に飛び込んでいく勇気』や、『周囲の変化やフィードバックを受け入れる』ことにつながると言っています。

リーダーになる資質と意志がある有望な若手には、できるだけ早くプロジェクトリーダーに任命したり、子会社に出向させて、リーダーの経験を積ませることが大切です。日本の大企業のように、出世競争に負けた役員を、姥捨(うばすて)山のように、子会社に転籍させていては、有能なリーダーを育てるチャンスを、みすみす逃していることになります」(98ページ)

今回の引用部分の、「リーダーシップは、その人の生まれつきの個性ではなく、後天的に開発でき、教えられる」ということについては、多くの方がご理解されることと思います。これを換言すれば、リーダーシップは、実際の経験を通してでなければ習得することはできないということでもあります。すなわち、経営者が部下に対してリーダーシップを習得して欲しいと望むのであれば、それに対応して何らかの働きかけが必要です。

そこで、部下にリーダーシップを習得して欲しいと考える場合は、例えば、キャリアパス(昇進や昇格に必要な条件や基準を明確にし、従業員が主体的に目標に向かって取り組むことができるようにする制度)や、ジョブローテーション(従業員のスキルを高めるために、定期的に配置転換を行うこと)を採り入れて実践することが求められます。しかし、中小企業では、こういった従業員の育成に積極的な会社は、あまり多くないように思います。それは、まず、売上や利益を得るための、直接的な活動に関心が向いてしまうこと、または、それらに労力が奪われてしまうということが考えられます。

また、もう1つは、経営者や幹部従業員が、部下の育成に関するスキルを持っていないということも考えられます。繰り返しになりますが、「リーダーシップを獲得するために必要な能力は、経験から学習する能力に尽きる」ということを、経営者の方は認識し、従業員にそのための経験をさせることをしなければ、従業員はなかなかリーダーシップを習得できず、業績にも悪い影響を与えることになると思います。

2024/4/10 No.2674

 

第5水準のリーダーシップ

[要旨]

米国の経営コンサルタントのコリンズは、米国の700社を調査した結果、ビジョナリー・カンパニー(業界内で卓越した会社)の経営者に必要なのは、カリスマ的なリーダーシップではなく、控えめで謙虚なリーダーシップだということがわかったそうです。そして、そのようなリーダーシップは、カリスマ的なリーダーシップである第4水準のリーダーシップよりも上位の、第5水準のリーダーシップと呼んでいるそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、リーダーが日常的に取組んでいる問題には、大きく分けると、今までのやり方で解決できる問題と、変化を伴う解決が必要な問題がありますが、前者を扱うのがマネージャーの仕事で、後者を扱うのがリーダーの仕事であるということを説明しました。

これに続いて、岩田さんは、「第5水準のリーダーシップ」について述べておられます。「私が大好きな書籍に、『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)があります。優れた企業の本当の強さとは何か、を検証した本ですが、ここでもリーダーシップについて言及されています。多くの人々がイメージする、カリスマ的なリーダーも登場しますが、それは『第4水準』という書き方がされています。さらに、その上のリーダーとして、『第5水準』のリーダーがあるというのです。

カリスマ性の有無はまったく関係がない。むしろ、控えめで謙虚さを持っている。何かがうまくいったとしたら、『それは運が良かったからだ』、『部下が頑張ってくれたからだ』と受け止める。逆に、うまくいかなかったときには、『すべて自分の責任だ』と捉える。そうした謙虚な姿勢を持ち、人格的にも優れたリーダーを、『ビジョナリー・カンパニー2』では、『第5水準のリーダー』と定義しています。そこそこ良い企業が、ビジョナリーで偉大な企業に変革する変化点には、必ず、第5水準のリーダーが登場すると書かれています」(74ページ)

コリンズは、「ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則」を発表するにあたって、米国の700社のCEOからアンケートに答えてもらい、それらの会社の中から18社のビジョナリー・カンパニー(業界内で卓越した会社)を選出したそうです。さらに、それらのビジョナリー・カンパニーの創業時から現在までの社史を、6年にわたって調査し、超一流会社の経営者に必要なのは、第5水準のリーダーシップということがわかったそうです。

この第5水準のリーダーシップは、経営者や経営コンサルタントの間では知られていますが、まだ認知度はあまり高くないようです。というのも、やはり、カリスマ経営者は、社会的な認知度が高いので、カリスマ経営者がいる会社が、最も業績が高いという印象を持たれてしまうのかもしれません。そこで、若いビジネスパーソンの中にも、カリスマ経営者を目指そうとする人が少なくないのかもしれません。ただ、カリスマ経営者を目指すことが問題ではないとは思いませんが、カリスマ経営者よりも高い水準のリーダーシップがあるということも、忘れてはいけないと思います。

でも、謙虚な姿勢のリーダーシップが、卓越した会社をつくるということは、意外に感じられる面があるかもしれません。私は、第5水準のリーダーシップについては詳しく把握していないのですが、ただ、謙虚なリーダーのもとでは、部下たちは、のびのびと仕事ができ、自律的な活動が促されるため、業績も高まるのではないかと思います。そこで、これからさらに自社の業績を高めて行こうと考えている経営者の方は、第5水準のリーダーを目指すことを目標にしてはいかがでしょうか?

2024/4/9 No.2673

 

リーダーの役割は『変革への対処』

[要旨]

経営コンサルタントの岩田松雄さんによれば、リーダーは、日々、様々な問題に立ち向かっており、その問題を大きく分けると、今までのやり方で解決できる問題と、変化を伴う解決が必要な問題がありますが、前者を扱うのがマネージャーの仕事で、後者を扱うのがリーダーの仕事であるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、リーダーは、未来への方向性を示し、人々に共感を持って、革新的なアイディアを提供し、人を感動させ、変化を促すことに重点を置く一方、マネージャーは、目標達成に向けて適切な戦略を策定し、リソースを最適化し、現状において効率的に問題を解決することに重点を置くということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、リーダーシップとマネジメント力について、経営者はどのように身につけていけばよいかということについて述べておられます。「リーダーシップを身につけるためには、本でいくら知識を勉強してもダメで、実際にリーダーを実践する場を経験することが、何よりも大切です。また、理想のリーダーになろうと思えば、マネジメントもしっかりできていることが大切です。普通の組織では、マネジメントで実績を上げた人が、出世をしていきます。しかし、上へ行けば行くほど、求められる能力は、マネジメント能力の比率が減り、リーダーシップの能力が問われることになります。マネジメント的なことは部下がやるべきことです。

リーダーの地位にあっても、細々としたマイクロマネジメントをするリーダーもいますが、それは間違っています。(中略)リーダーは、日々、様々な問題に立ち向かっています。その問題を大きく分けると、今までのやり方で解決できる問題と、変化を伴う解決が必要な問題があります。前者を扱うのがマネージャーの仕事で、後者がリーダーの仕事です。私が、研修で、大企業の管理職に、悩みをヒアリングして見ると、変革者レベルではなく、うまく業務をこなすマネージャーレベルや、対人関係レベルの悩みが多いように感じます。

管理職として、マネジメントレベルことは、もちろん、最低限、やらなければなりませんが、できるだけ部下を教育し、オペレーショナルなことは任せて、自分自身は組織の未来に向けて、組織変革、少なくとも組織が進化することに注力すべきです。仕事そのものを見直したり、将来につながる新しい仕事を作り出すのがリーダーの仕事です。今までやっていることを効率的にやることを考えるのは、マネージャーの仕事です。『マネージャーは“複雑性への対応”で、リーダーは“変革への対処”』ドラッカーは、リーダーの仕事として、このように述べています」(59ページ)

岩田さんは、直接は言及していませんが、経営者や管理職が、「うまく業務をこなすマネージャーレベルや、対人関係レベルの悩みが多い」状態であれば、その会社の業績は向上しないと考えておられるのだと思います。そして、「仕事そのものを見直したり、将来につながる新しい仕事を作り出すのがリーダーの仕事」であることから、経営者や管理職は、この本来のリーダーの仕事に軸足を置かなければならないということなのでしょう。

さらに、VUCAの時代と言われる現在は、経営環境が複雑化しつつあることから、“変革への対処”というリーダー本来の役割が、ますます求められていると考えることができます。したがって、これから自社が勝ち残っていくためには、リーダーシップを発揮できる人たちを増やして行くことが最大の鍵になると言えるでしょう。そして、このリーダーシップを身に付けてもらうことは、一朝一夕ではできません。だからこそ、将来の幹部候補である若い世代の従業員に、今からリーダーとしての教育を行って行くことも大切だと思います。

2024/4/8 No.2672

 

『マネージャー』と『リーダー』の違い

[要旨]

経営コンサルタントの岩田松雄さんによれば、リーダーは、未来への方向性を示し、人々に共感を持って、革新的なアイディアを提供し、人を感動させ、変化を促すことに重点を置く一方、マネージャーは、目標達成に向けて適切な戦略を策定し、リソースを最適化し、現状において効率的に問題を解決することに重点を置くということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、ドラッカーは、リーダーシップを「方向性を決め、目標を設定し、資源を配分し、人々を行動に移すこと」と定義し、また、リーダーシップは学ぶことができると主張もしており、「自己開示」、「自己省察」、「他者への関心」といった自己啓発的な活動を通じて、リーダーシップ能力を向上することができるとしているということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、マネージャーとリーダーの違いについて述べておられます。「次に、『マネージャー』と『リーダー』の違いを考えてみましょう。皆さんは『リーダー』と『マネージャー』という言葉を意識しして使い分けていますか?マネージャーとリーダーの違いは、言葉通り、マネージすることとリードすることです。つまり、マネージする:何かを引き起こし、成し遂げ、義務や責任を引き受け、実行すること。リードする:人を感化し、方向や進路、行動、意見などを導くこと。

リーダーシップは、『変革や創造性を促進』することであり、マネジメントは、『安定性と予測可能性を提供』することです。リーダーシップは、チャレンジングな状況に対処する能力を持つことを要求する一方、マネジメントは、定められた目標や目的を達成することを要求します。(中略)リーダーは、未来への方向性を示し、人々に共感を持って、革新的なアイディアを提供し、人を感動させ、変化を促すことに重点を置きます。

一方、マネージャーは、目標達成に向けて適切な戦略を策定し、リソースを最適化し、現状において効率的に問題を解決することに重点を置きます。リーダーの役割は、部下が目標を達成するのを助けることです。部下たちがビジョンを実現できるよう、真摯に対応し、その障害を除去することによって、彼らの成功を助けることが、リーダーの仕事です。リーダーはチアリーダーであり、支援者であり、応援団長なのです」(55ページ)

私は、岩田さんの考えと少し違う考え方をしており、マネジメントの中にリーダーの役割が含まれていると考えています。でも、あえて、マネージャーの役割とリーダーの役割を分けて考えるとすれば、岩田さんと同じように考えます。ただ、経営者は、組織の目標を達成する責任があり、そのためにマネジメントの能力やリーダーの能力の双方が必要になるので、これらを分ける必要性はあまり大きくないと、私は考えています。

しかし、最近は、VUCAの時代と言われており、経営環境が複雑化する中で、それに対処できるようにするには、従業員の方たちが、リーダーに鼓舞されて、より高度な仕事に果敢に対処できるようになることが望ましいと言えます。そのような観点からは、経営者に求められる役割には、リーダーとしての役割の比重が大きくなっているということに間違いはないと思います。

2024/4/7 No.2671