鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リーダーは他人の評価が気にならない

[要旨]

アドラー心理学では、「勇気」のない人は困難な場面になると、自分を優先し、他人からの評価を気にしてしまいます。これは「共同体感覚」が欠如している状態であり、特に組織のリーダーは、他人からの評価を気にせず、自分が他人に貢献していることに満足を感じることができるようになることが大切です。


[本文]

心理カウンセラーの小倉広さんの、ダイヤモンドオンラインへの寄稿を読んだのですが、経営者の方の参考になると感じたので、ご紹介したいと思います。小倉さんは、アドラー心理学の第一人者でもあるのですが、アドラーのいう「勇気」とは、「共同体感覚の一側面」のことだそうです。これは、「困難な場面でも『相手を思い』『相手を優先すること』を放棄せずに問題を解決していく活力」を指すそうです。

このアドラーのいう「勇気」がない人は、困難な場面では、「共同体感覚」を持つことができず、自分を優先し、他人からの評価を気にしてしまうそうです。逆に「勇気」がある人は、「他人の評価を気にしませず、誰からもほめられず認められなくても、自分が相手に貢献できていることそのものに満足を感じる」そうです。また、「勇気づける」ということは、「人からどう思われるかなんて関係ない」と気づかせることであり、そのためには、条件をつけて相手を認めるのではなく、無条件で、「ありのままの相手をそのまま受け容れ認める」ということだそうです。

この小倉さんのご指摘は、リーダーとしてどうあるべきかということの参考になると思います。まず、リーダーは、「自分が相手に貢献できていることそのものに満足を感じる」こと、そして、部下に対しては、「人からどう思われるかなんて関係ない」と気づかせること、そのために、無条件に部下を受け入れること、これらがリーダーがとるべき行動だと思いました。では、アドラーのいう「勇気」を持っていない人は、どうすれば「勇気」を持てるようになるのでしょうか?これについては、次回、私の分析を述べたいと思います。

2021/10/4 No.1755

f:id:rokkakuakio:20211001170222j:plain

 

ひとつの銀行による持株会社設立

[要旨]

これまで、4つの地方銀行が、単独で持株会社を設立しています。これは、銀行業務以外に収益源を求めることが目的のようです。しかし、銀行以外の子会社が、自立的に活動できなければ、持株会社制にした意味はなくなりますので、今後、それらの銀行の動向が注目されます。


[本文]

9月26日に、日本経済新聞が、ひとつの銀行による持株会社設立について報道していました。これまで、銀行が持株会社を設立するときは、経営統合する2つ以上の銀行が、ひとつの持株会社の子会社となるときでした。しかし、北国銀行、十六銀行沖縄銀行は、10月1日に持株会社をつくり、自らがその子会社になると同時に、それまで銀行の子会社であった、証券会社やリース会社も持株会社の子会社にしています。また、1年前には、広島銀行も、同様に、単独で持株会社を設立しています。

私は、このような銀行単独の持株会社設立そのものには、あまり意味がないと考えています。特に、地方銀行が設立する持株会社は、実態としては、「名ばかり持株会社」だからです。例えば、広島銀行持株会社である、ひろぎんホールディングスの、2021年3月期の総資産は、約11兆0,096億円ですが、そのうち、広島銀行の資産は、約10兆9,774億円を占めます。収入についても、ひろぎんHDの約1,154億円のうち、広島銀行の収入が約1,117億円を占めます。

このように、広島銀行と他の会社は、形式的には兄弟会社であっても、資産や収入の面から見れば、実質的にはひろぎんHD=広島銀行という状態になっています。銀行の兄弟会社は、単独の収入があるとはいえ、それは、銀行経由の顧客がほとんどであり、銀行に頼らず、独自に顧客を得るということは、ほとんどないでしょう。

しかし、それでも地方銀行が単独で持株会社を設立するからには、それなりの理由があるということは理解できます。日本経済新聞の記事にもあるように、「今年11月に施行する見通しの改正銀行法では、異業種への参入が大幅に緩和され、システムやアプリの販売、広告、人材派遣といった事業を銀行の兄弟会社が営む場合、届け出のみで済むようになる」ようです。

したがって、銀行が、これまでの銀行業務以外に収益源を求めるとすれば、持株会社を設立し、銀行の兄弟会社に新たな事業に進出させることが得策と言えます。しかし、課題となるのは、銀行の兄弟会社が、銀行に依存的にならず、独力で収益を得ることができるかどうかです。もちろん、銀行とその兄弟会社が、ばらばらに活動せず、お互いに協調して相乗効果を発揮できることが望ましいことです。

しかし、銀行の兄弟会社が、単に、銀行から顧客の紹介を受け、その顧客から依頼された業務だけを引き受けるということであっては、実質的に銀行の中のひとつの部署に過ぎず、持株会社を設立して兄弟会社となった意味はなくなります。したがって、銀行単独の持株会社設立は、それで目的が達成できるのではなく、銀行の兄弟会社が自立的な活動ができるかどうかにかかっていると、私は考えています。

2021/10/3 No.1754

f:id:rokkakuakio:20210930200906j:plain

 

多様性を重んじる国の強さ

[要旨]

米国は、価値観の異なる人たちが集まっている国であり、組織運営に関する研究も進んでいます。その結果、優れたマネジメントを行う会社も多く、それが、米国の経済力の強さになって表れています。この優れたマネジメントについては、日本の会社も学べき点が多いと考えられます。


[本文]

東京第一弁護士会所属の弁護士であり、米国ニューヨーク州弁護士でもある、春山俊英先生に、私が制作しているポッドキャスト番組にご出演いただきました。春山先生は、米国での滞在経験がありますが、その時に感じた、米国の多様性に対応する文化をお話いただきました。米国は、多民族国家で、異なる価値観を持つ人たちが集まってできた国です。

世界の国々と比較すると歴史は短い国ですが、建国とともに、価値観の異なる人たちがどのようにまとまるかということに、たくさんのエネルギーを割いてきた国であるとも言えます。そのひとつの側面が、テイラー、バーナード、ドラッカー、ミンツバーグなど、組織に関する研究者が、たくさん登場していることだと思います。(ドラッカーオーストリア生まれ、ミンツバーグはカナダ人ですが、米国でも活躍しています)

また、米国の会社の強みも、多様性への対処能力が優れているからと、私は考えています。一方、日本の会社では、米国と比較して、従業員は会社への帰属意識が高く、経営者は、従業員の価値観の多様性への対応に、あまり労力を割く必要がありません。その結果、「マネジメント」については、日本が米国から学んでいるという面があるということは否めないでしょう。

もちろん、日本的経営にもすばらしい面があり、それは、ドラッカーが日本に多くの関心を寄せていたことからもわかります。しかし、これまで自由主義経済を牽引してきたのは米国であると私は考えています。だからといって、私は、盲目的に米国的な経営を称賛する意図はありません。ただ、多様性への対応が国の歴史にもなっていた米国は、マネジメントも優れたものとなっていると考えています。

このような状況は徐々に改善されつつありますが、つい最近までは、部下は上司に盲目的に従うものだという企業文化を持っている会社は、日本に多かったと思います。でも、これからは、日本でも経済活動のグローバル化が進む中で、多様性にも対応できる優れたマネジメント能力を持っているかどうかが、より強く問われることになると、私は考えています。

2021/10/2 No.1753

f:id:rokkakuakio:20210929230751j:plain

 

ほしいものだけ受け取ることはできない

[要旨]

人はお金持ちになりたいなどと望む一方、都合のよい部分だけを受け取ろうとするために、それが実現しません。会社が事業規模を拡大しようとするときも、単に売上を増やすだけでなく、組織の体制整備を行う必要があるのですが、経営者の方はそれを見落としがちのため、なかなか実現できないようです。


[本文]

心理カウンセラーの心屋甚之助さんのご著書、「一生お金に困らない生き方」を読みました。「豊かさを受け取るといっても、いいこと『だけ』を受け取れるわけではありません。お財布の口を大きく開けていれば、大きく開けただけ、お金が入ってきますが、お金以外のゴミやクズやいらないものも入ってきます。余計なものはいらないから、とお財布の口を閉めてしまうと、ほしいお金も入ってきません。豊かさを受けとろうと思ったら、ほしいものだけでなく、ほしくないものも受け取る覚悟が必要です。(中略)

これはほしい、でも、これはいらない。仕事はほしい、でも、忙しいのはいやだ。自由がほしい、でも、かまってもらえないのはいやだ。有名になりたい、でも、世間から叩かれるのはいやだ。都合のいいほうだけ、ほしいものだけほしがっても、豊かさは手に入りません」この心屋さんの指摘は多くの人が理解できることだと思いますが、その一方で、実践している人はあまり多くないと、私は感じています。だから、お金持ちになりたいと望みながら、お金持ちになれない人が多いのでしょう。

そして、このようなことは、ビジネスでもよく見られることだと思います。典型的なものは、中小企業の社長が事業を大きくしたいと考えつつも、社長が自分の持つ権限を手放さないという例です。というのは、社長に権限が集中していては、事業規模は社長の目の届く範囲以上に大きくなりません。また、社長が管理業務よりも事業の現場に関心が高いままであるというときも同様です。

そのような社長が経営する会社は、管理業務が疎かになってしまい、結局、事業の規模はそれなりのままとなってしまいます。もちろん、必ずしも事業の規模は大きければよいということではないので、ずっと事業の現場に携わっていたいという社長は、事業規模はそのままでよいと思います。でも、管理業務は苦手だけれど、事業規模は大きくしたいと望むのであれば、その望みはいつまで経っても実現することはないでしょう。

2021/10/1 No.1752

f:id:rokkakuakio:20210928221248j:plain

 

忙しい経営者

[要旨]

事業改善に着手したいと考えつつ、目の前の仕事に追われ、なかなか、着手できない経営者の方は珍しくありません。しかし、改善活動に着手しなければ、改善は進まないので、どういった改善活動が望ましいかということより、いままでの活動を変えようという強い意志の方が大切です。


[本文]

これは、コンサルタントあるあるだと思うのですが、会社経営者の方から、コンサルティングをして欲しいという打診があっても、まず、1回目の面談がなかなか決まらない、場合によっては、1回も面談ができず、コンサルティングの申し込みそのものが立ち消えになってしまうということは、珍しくありません。

経営者の方とすれば、事業を改善したい、しかし、目の前の仕事に追われて、改善のための時間も確保できないという板挟みから、なかなか抜け出せないということなのでしょう。しかし、これも多くの方がご理解されていると思いますが、その板挟みの状態から経営者の方が抜け出す方法は、それほど分かりにくいことではありません。それは、経営者の方の仕事の優先順位を変えて、事業改善活動を最上位にすることです。

ところが、それを分かっていても、なかなかできない方が多いようです。これをひところで言えば、現状変更こそ、最大の壁なのかもしれません。だから、事業改善において大切なことは、どういう方法で改善するかということよりも、決断力や行動力だと思います。よく、「どういう方法が最も事業改善に適しているか」と悩んでいる経営者の方がいますが、それよりも、仮に地味なことであっても、着実に実践することの方が、早く事業改善に結びつくのではないでしょうか?

2021/9/30 No.1751

f:id:rokkakuakio:20210927195527j:plain

 

会社の不祥事を仕組みで減らす

[要旨]

コンビニエンスストアのセルフレジは、事務効率化のためだけでなく、従業員による不正を防ぐ目的で設置されています。このように、仕組みで不祥事を防ぐ対策を行うことは、漠然とした注意喚起よりも効果が期待できます。


[本文]

弁護士の向井蘭さんが、向井さんのポッドキャスト番組で、従業員の横領についてお話しておられました。その中で、コンビニエンスストアのセルフレジは、従業員と顧客が直接接触することを接触を防いだり、事務の効率化の面もあるが、従業員による現金の横領を防ぐ狙いもあると指摘しておられました。

ほとんどの経営者の方は、従業員の方を信用していると思いますが、その一方で、本の少しの不心得な人のために、横領が起きてしまうことも事実です。また、真面目に働いているにもかかわらず、何らかの要因で現金が不足してしまったために、その場にいた従業員が横領を疑われてしまうこともあります。そのようなことが起きることを避けるためにも、事務上のリスクを防ぐための仕組みづくりは、向井さんがご指摘しておられたように、とても重要だと思います。

ちなみに、ダスキン武蔵野も運営している経営コンサルタントの小山昇さんも、ダスキン部門の従業員が、2回、交通事故を起こしたところは、すべての従業員に対して通行禁止にしたそうです。単に、「交通事故に気をつけるように」という漠然とした指示ではなく、さらに具体的な事故回避のための指示をだすことが、本当のリスク管理だと思います。このようなリスク防止対策を積み重ねて行くことも、経営者の重要な役割であり、それを継続して行くことで、組織としての競争力も高まっていくことになります。

2021/9/29 No.1750

f:id:rokkakuakio:20210926204107j:plain

 

ふるさと納税過去最高額を更新

[要旨]

令和2年度のふるさと納税による寄付額は過去最高額となりましたが、それは、自治体の工夫の積み重ねの現れといえます。自治体は「役所仕事」をしているという印象を持たれがちですが、目標の与え方、仕組みの作り方で、活動を活性化できる好事例と言えます。


[本文]

9月24日に、日本経済新聞が、「(令和元年6月に制度変更が行われたにもかかわらず)、令和2年度のふるさと納税による寄付額は、全国合計で6,724億円と、過去最高を記録した」と報じていました。このふるさと納税については、うまく活用して税収が増えた自治体もある一方、大都市圏の自治体では、「住民サービスに回るはずの財源が目減りする」という指摘もあり、必ずしもよいことだけではないようです。

私も、ふるさと納税は、行き過ぎはよくないものの、本来の主旨で寄付が行われればすばらしい制度だと思います。これは、ふるさと納税制度がなければできなかったことだと思いますが、「7月の静岡県熱海市の土石流災害でも、4市町が代理寄付を引き受けた」ということです。

すなわち、寄付金による災害支援を、ふるさと納税で行うことができれば、寄付する側にも寄付をしようというインセンティブが働きます。また、災害があった自治体では、災害対応で忙しくなるので、その受け入れを他の自治体が行うことで、実質的な「受領証明書の発行手続の代行」という支援を行うことができます。(ご参考→ https://bit.ly/3zFTcfK

ところで、今回の記事の本旨は、日本中の自治体が、ふるさと納税に多くの労力を注いでいることです。だからこそ、寄付額が、毎年、伸びているのでしょう。失礼ながら、私は、自治体は「役所仕事」ばかりをしている面が多いという印象を持っていたのですが、寄付額が過去最高になったということは、自治体でも民会会社と同様の「企業努力」ができるということだと思います。

そして、この「役所仕事」は、「役所」だけでなく、民間の会社にも見られることです。でも、目標の与え方、仕組みの作り方で、「企業努力」を発揮させることができるということでしょう。このような工夫は、役所、会社を問わず、共通して実践できることだと思います。

2021/9/28 No.1749

f:id:rokkakuakio:20210925173846j:plain