鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

知っている情報こそ大切

[要旨]

競争が激化しつつある現在は、一朝一夕に事業を成功させるようなノウハウはなく、トライアル・アンド・エラーを繰り返して得られるノウハウが決め手になるので、手間を惜しむことは、かえって、成功を遠ざけることになります。


[本文]

先日、ビジネスメールコンサルタント平野友朗さんのメールマガジンに、平野さんが主宰している起業家向け会員制サービスを退会する人について書かれていました。その要旨は、会員制サービスの契約期限の到来にともない、継続せずに退会する人がいるが、そのような人から退会理由として届くコメントには、「知っている情報ばかりで学びがなかった」、「インターネットを検索したら、同様の情報を無料で見つけた」というものがある。

しかし、退会した人について調べると、平野さんが教えたノウハウを、必ずしも実践しているわけではないようだ。平野さんから学んだことを実践して、それで効果がなければ、前述のようなコメントをされても納得できる。しかし、学んだことを実践しないことは、もったいない、というものです。

私も、コンサルタントとして、ノウハウを提供した相手から、同じような反応をされることが、しばしば、あります。そういう反応をする人にとって、「知っている情報」とは、端的に言えば、「基本原則」や「定石」なのでしょう。すなわち、そのようなノウハウは、大切だからこそ、多くのコンサルタントが口にしているのでしょう。でも、基本的な手順を踏まずに、手っ取り早く成果を得ようと考えている人にとっては、そのようなノウハウは何度も目にしていても、面倒だからやりたくないということなのでしょう。

このことは、つまるところ、「基本はおろそかにしてはいけない」ということなのですが、今回、私がお伝えしたいことは、そのことよりも、むしろ、令和時代のビジネスは、ますます難易度が高くなってきているのだから、一朝一夕で事業を成功させることができるノウハウは、ほとんどないということです。

すなわち、事業を成功させるには、経営者自身が、実行と失敗を何度も繰り返しながら学んでいくものであり、それを実践せずに、コンサルタントから教えてもらったノウハウだけで事業を成功させることができると考えているとすれば、そのような人はビジネスパーソンとしてのセンスが欠けていると、私は考えています。

むしろ、今は、「こんなことをしても成功しない」と思われることを実践することの方が、後から見て、成功に近づくものだったということもあります。すなわち、「すでに知っている情報」や、「インターネットで無料で得られる情報」こそ、大切なのではないでしょうか?

 

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情報技術と人材育成

[要旨]

情報技術の進展が目まぐるしい中、新たな情報技術を活用するには、単に、それを導入するだけでは事業は改善せず、それを使いこなせる人材の育成も大切であり、その人材育成をする役割が、これからの経営者に大きく求められています。


[本文]

TABLY株式会社代表の、及川卓也さんが、ダイヤモンドオンラインに、ディスカウントストアのTRIALに関する記事を寄稿しておられました。記事の要旨は、TRIALでは、売り場の管理や顧客の購買行動の分析、販促など、流通の現場でIoT(もののインターネット)とビッグデータを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション、情報技術などを活用して事業を根本的に改善させること)を導入しようとしている。これにあたり、同社の永田社長は、まず、「当社の会社名のTRIALは、当社のビジョンでもある」として、「いつも新しいことをやる」という価値観を、従業員に訴え、業務上の課題に対して挑戦的な手段を選ぶかどうか迷っている従業員の背中を押すようにしている。

つぎに、DXを遂行するためには、共通言語が重要であるとの考え方から、同社のコンサルティングを依頼している、米国の経営コンサルタント、ジェフリー・ムーア氏の著書、「ゾーンマネジメント」の読み合わせを、10年以上前から実施している。同書は、管理職全員が読んでいて、書籍の中で使われている単語やフレーズは、日常的に会話で用いられるほど、社内に浸透している、というものです。

同社では、先進的な情報技術を駆使して業績を伸ばしていますが、単に、「仕組み」を取り入れるだけでなく、ビジョンや共通言語の浸透という、組織能力の向上も同時に行っているところが、成功の大きな鍵になっていると思います。この記事を読むと、それは当然のことと感じる経営者の方は多いと思うのですが、実際には、新しい情報技術の導入はするものの、それを活用するための人材育成や、情報技術を活用した経営戦略の策定など、情報技術を十分に活用するための体制を整えていないという例は少なくありません。

経営者としては、「情報技術を導入するのだから、業績は向上するだろう」と考えがちですが、新しいツールは、使いこなすことができて、初めて効果が得られます。すなわち、繰り返しになりますが、情報技術がますます高度化していく時代にあっては、それを自社に取り入れるために、人材も育成していかなければならないということが見落とされがちです。これを言い換えれば、人材育成、組織開発という経営者の役割が、ますます重要になっているということです。情報技術が進展しているとはいえ、それと同時に「人」や「組織」こそ、ライバルと差をつけるポイントになっています。

 

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害虫は害か?

[要旨]

ビジネスにおいて、それを遂行するときに不都合なものは、悪いものと評価してしまいがちですが、もっと大きな視点でみると、必要であるということもあるので、ビジネスパーソンの方は、より大きな視点を持つことが大切です。


[本文]

先日、青森県で無農薬でリンゴを栽培している、木村秋則さんをレポートした、「奇跡のリンゴ」を、オーディオブックで聴きました。同書は、以前も読んだことがあるのですが、あらためて、オーディオブックで聴いてみて、ちょっと感銘したので、今回、記事にしてみようと思いました。

おおよそのストーリーは、リンゴの無農薬栽培に挑んだ木村さんは、農薬を使わず、リンゴの木についた害虫を手で取り続けたものの、それでも害虫を完全には駆除できず、葉を食べられてしまったリンゴの木はだんだん弱って行き、5年ほど経っても、無農薬でリンゴを実らすことはできなかった。万策尽きた木村さんは、ある日の夜中に、岩木山に登り、首を吊ろうとしたところ、目の前に、葉が害虫に食べられていないブナの木があるのを見つけた。

農薬を使っていないのに、なぜ、害虫がいないのか調べたところ、微生物のたくさん入っている柔らかい土が、ブナの木を健康にしているため、害虫が葉を食べないということが分かった。そこで、木村さんも、リンゴ畑に、大豆を植えて、土に微生物がたくさん住むようにしていったところ、リンゴの木が健康になり、無農薬でも実をつけるようになった、というものです。

このエピソードからは、たくさん、学ぶことがあると思うのですが、私は、害虫は、人にとって不都合な虫というだけで、自然全体からみれば、生態系のひとつであり、もともと日本になかったリンゴを日本で育てようとして、リンゴの葉を食べる虫を害虫と呼ぶのは人間の都合と、木村さんが述べていたことが、印象に残りました。

私自身もそうですが、多くのビジネスパーソンは、自分にとって不都合なものを、非効率なもの、障害となるものと受け止めてしまいがちですが、社会全体からみれば、それは、必ずしもそうとは限らないことかもしれません。例えば、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんが、メールマガジンに書いておられたのですが、トイレ掃除で有名な鍵山さんの会社の従業員のうち、20%はトイレ掃除をしないそうです。

しかし、鍵山さんは、「むしろ、全社員、同質の価値観で動いている方が異様な感じがします。会社は、同質のひとばかり集まったときに、腐敗するものです」と述べておられます。そういった、もっと大きな視点で状況をとらえることが大切ということを、奇跡のリンゴを聴いて、あらためて感じました。

 

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褒めてやらねば人は動かじ

[要旨]

部下の指導は褒めることが大切だと理解しつつも、実際に、経営者や管理職の方の多くは、育成スキルを身に着けていないために、厳しい指導をしてしまいがちですが、現代は、従業員を育成できなければ業績もあがらないので、経営者や管理職の方は、人材の育成スキルを身に着けることが望まれています。


[本文]

社会保険労務士藤咲徳朗さんが、2020年7月22日に配信したメールマガジンに、旧日本海軍の海軍大将、山本五十六の名言について書いておられました。「パワハラ(強い叱責)で部下を指導するほうが業績が上がると勘違いをしている管理職が多いです。部下を褒めることは、お世辞を言ったり、へつらったりすることになるので、それでは業績は上がらないと言っている管理職社員もいました。でも、部下を褒めることは、お世辞を言うことでも、こびへつらうことでもありません。人を育てるときに欠かせない、心の栄養のようなものなのです。

ところで、山本五十六の名言があります。『やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず』この山本の言葉は、『褒める』、『認める』、『感謝する』、この3つの心の栄養で人を育てることの大切さを教えている、史上最強の名言だと私は思っています」というものです。

この藤咲さんのお考えは、私もその通りだと思いますし、ほとんどの方も同様にお考えだと思います。しかしながら、いまだに多くの職場では、パワハラはなかなかなくなりません。しかも、山本五十六は、明治生まれの軍人であり、厳しい上下関係の中で部下たちを指導していたであろうことは、容易に想像がつきます。

そういう山本でさえ、ほめることが大切だと言っているわけですから、令和時代は、なおさらほめることが大切です。それにもかかわらず、「部下を褒めることは部下を甘やかすことであり、会社のためにならない」と考える人が少なくないということを、私はずっと不思議に思っていました。そこで、なぜ、そういう人がなかなか減らないのかということについて、私は、ひとつの仮説を持っています。

それは、「部下を褒めることは部下を甘やかす」というのは、本当は、「自分は部下を上手に育成する方法を知らないので、部下を厳しく指導することしかできない」ということなのではないかということです。というのも、日本では、部下の育成方法に関心を持つ経営者の方は、かつてよりは増えてきているものの、いまだに、「人材育成よりも、目の前の業績を上げることの方が先」という状況の会社の方が多いのではないかと思います。

少し話が飛躍しますが、令和時代の事業の優劣は、何を売るかよりもどうやって売るかで決まるのであり、そうであれば、どうやって売るかの優劣は、人材育成の巧緻で決まることになります。でも、日本の経営者(管理者)は、部下を育てることの大切さを認識していなかったり、または、部下を育てるスキルを身に着けていなかったりするため、「とにかく、業績をあげろ」としか言えない、すなわち、パワハラが起きやすい状況にあるのだと思います。

でも、いまは、「何を売るか」ではなく、「どうやって売るか」で事業の優劣が決まる、すなわち、人材育成の巧緻が事業の成否に直結しているということに気づくことができれば、パワハラは起きないと、私は考えています。この仮説は、まだ、100%証明できる客観的な証拠はありませんが、こんご、事例をたくさん集めながら、「パワハラが起きる会社は業績もよくない会社」ということを、証明できるようにしていきたいと思っています。

 

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合同会社の薦め

[要旨]

合同会社は、株主総会を開く義務はない、役員の任期がない、決算公告の義務がないなど、中小企業に向いた会社になっています。


[本文]

私は、これまで何度か合同会社をお薦めしてきましたが、今回、改めて合同会社の利点について説明したいと思います。私が合同会社を薦める最大の理由は、多くのオーナー会社は、株式会社であっても、実態としては、合同会社のような運営をしているからです。

そのひとつめの例は、株式会社の株主総会に相当する機関が合同会社にありません。強いて言えば、出資者を構成員とする「社員総会」を開くことはできますが、それは会社法で義務付けられているわけではありません。(ただし、定款で、「社員総会」を開いたり、社員総会で決定する事項を定めることは可能です)

株式会社のオーナー会社の多くも、実態としては、会社法で義務付けられている株主総会は開いていない(特に、株主が社長ひとりだけという場合は、株主総会を開く意味はほとんどない)わけですから、そうであれば、そのような株式会社は、事実上、合同会社と同じといえるでしょう。

ふたつめは、合同会社は役員の任期がないということです。厳密には、合同会社では、経営者(役員)=出資者(社員)でなければならず、出資者でいる間は、その人は、必然的に経営者でもあるので、役員の任期という概念がありません。株式会社では、取締役(必ずしも株主である必要はありません)には任期があり、取締役に就任したときと、任期が到来し、再度、取締役になったときは、その旨を登記しなければなりません。

一般の株式会社の取締役の任期は、最長で2か年ですが、多くのオーナー会社では、株式譲渡制限会社(定款で、すべての株式に関し、譲渡するときは会社の承認を必要とすると定めている会社)とすることで、株式譲渡制限会社に認められている、取締役の任期を10か年にしています。すなわち、実態としては、オーナー会社では。役員の交代の必要性がほとんどなく、任期はできるだけ長くしているようです。これについても、合同会社に近い状態と言えます。

みっつめは、合同会社は決算公告が不要ということです。株式会社は、株主総会で決算が承認された後、官報か日刊新聞紙に貸借対照表の要旨を載せるか、インターネットに貸借対照表損益計算書を掲載することが、会社法第440条の規定で義務付けられています。

これを怠ったときは、会社法第976条の規定で、100万円以下の過料に処されることになっていますが、実態としては、多くの株式会社は決算公告をしておらず、また、罰せられることもないようです。一方、前述の通り、合同会社は、もともと決算公告の義務がないので、決算公告をする必要もないし、罰せられることもありません。このような観点から、私は、これから会社を設立しようとする方には、合同会社をお薦めしています。

ただし、合同会社にはデメリットがあります。そのひとつめは、合同会社の認知度が低いということです。事業を始めようとする方が、会社を設立する目的は、会社で事業を営むことで、社会的な信用を得ようとすることであり、それは、目的の大きな部分を占めていると思います。

しかし、株式会社と比較して、合同会社の認知度はまだ日本では低く、合同会社を設立しても、対外的な印象があまりよくならないと、その目的が果たせなくなります。もうひとつは、合同会社の代表者の役職名が。「代表社員」となることです。これも、株式会社の代表者の役職名である代表取締役と比べると、認知度が低いことから、合同会社の設立を避けたいと考える方が多いようです。

しかしながら、合同会社の特徴を前向きにとらえている会社はたくさんあります。特に、米国では、日本の合同会社に相当するLLC(Limited Liability Company)は多数あり、Apple、Amazon、Google、USJ、西友(親会社はウォルマート)などの日本法人は、いずれも合同会社です。これらの日本法人は、合同会社とすることで、前述のような合同会社のメリットを享受しているようです。

これからは、有名で大きな会社でも、合同会社を選択する例が増えてくると思いますので、それにしたがって合同会社の認知度が高くなっていけば、前述の合同会社のデメリットも解消していくものと、私は考えています。(この記事は、理解の容易さを優先して書いたため、内容に不正確な部分がありますことをご了承ください)

 

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いまの状況は自分が作り出している

[要旨]

ビジネスでは現状に満足できないことはたくさんありますが、その原因は、意外と自分自身にもあるということもあるので、自分自身の行動や考え方を見つめなおすことで、現状の打開策が見つかる可能性があります。


[本文]

土地家屋調査士で、遺品整理アドバイザーの、上東丙唆祥(じょうとうひさよし)さんのブログを読みました。ブログの要旨は、日本の社会は、どんどん便利になってきており、あまり他人の協力を得なくても暮らしていけるようになってきているが、逆に、そのことが、人と人の助け合いを不要にしてきている。すなわち、高齢者であっても独り暮らしが比較的容易になり、その結果、人と人との関係の希薄化が進んでいけば、高齢者の孤独死が増えることは必然である、というものです。

私は、この上東さんの分析は正しいと思います。独り暮らしの高齢者が増え、さらに、孤独死が増えることは望ましくありませんが、一方で、社会の利便性が高まることが、高齢の方の独り暮らしを増加させていることも事実でしょう。そして、これも上東さんが指摘していますが、もし、孤独死を増やしてはならないと考えるのであれば、社会そのものを変えなければ、根本的な解決にはなりません。

しかし、私は、社会問題の専門家ではないので、高齢者の方の孤独死については、これ以上は言及はしません。ただ、上東さんは、これから先も高齢者の方の孤独死がなくならないだろうと考えており、その理由として、「過去、多くの人たちが、長いものに巻かれ、良く考えもしないで、今を選択してきたからだ」と述べておられます。そして、このことは、ビジネスにも通じると考えたため、今回、上東さんのブログを引用した次第です。

というのも、孤独死を迎えた方は、気の毒ではあるものの、独り暮らしは、決して強制されたものではありません。確かに、100%の責任があるとは、直ちにはいえませんが、その大きな部分は、やはり、ご本人の選択(選択しないという選択も含めて)ということになるでしょう。このことは、繰り返しになりますが、ビジネスにもあてはまると、私は、考えています。

私の場合、私と同様にコンサルティングをしている方の中には、日本中を講演に回ったり、年に数冊も出版を続けている方がたくさんいます。私も、同様のことをしたいと考えているのですが、その一方で、私は、仕事よりも優先していることがあります。家族の事情などで、私は、長期間、家を空けることができないので、遠方へ出かけることは、あまりできません。執筆に割ける時間も、あまり、捻出できません。

ですから、東奔西走しているコンサルタントの方がとてもうらやましいのですが、その一方で、それを実践していないのは、何らかの不可抗力の障害があるからということではなく、自分の意思でそれを実践していないのです。(もちろん、私が、「24時間365日、仕事をしても大丈夫」という状態になったとき、トップコンサルタントになれるという保証もないのですが…)

要は、いま、自分の仕事に不満があるとしても、それは自分の選択によるものということが分かっています。だからといって、自社の業績に不満がある会社経営者の方のすべてが、その不満の原因が、経営者の方自身にあるとは限りませんが、いったん、頭の中を白紙にして、不満の原因を調べてみると、意外と、経営者の方自身が変わるだけで改善できることがあるということが、見つかることもあるのではないかと、私は考えています。

これは、私自身にもあてはまるのですが、人の心には弱い面もあるので、会社の業績がよくないときは、その責任が自分にあるとは認めたくないということもあります。でも、気づかないうちに、間違った行動をしていることもあるかもしれないということを、上東さんのブログを読んで、改めて感じました。もし、お心当たりのある経営者の方は、ぜひ、自分自身を分析してみることをお薦めします。

 

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マネジメントは収支も対象

[要旨]

経営者の方は、事業に関するスキルを持つだけでなく、財務管理を含めたマネージメントスキルを身に着ける必要があり、それなしには、事業全体を管理できず、事業を成功に結び付けることはできません。


[本文]

以前、プロスポーツ選手を専門に顧問先にしているという、税理士のTさんから、お話をきく機会がありました。Tさん自身も、かつては、プロスポーツ選手だったということで、顧問先の事情をよく理解していることから、顧問先に対して、微に入り細を穿つご支援をするのかと思って話をきいていたのですが、お話をきいてみると、実際は、顧問先自身に1か月ごとに収支をまとめさせ、それに基づいて、毎月の活動方針を明確化させているということでした。

特に、プロスポーツ選手は、選手として活動できる期間が、一般の事業と比較して短いので、収支を含めてきちんと自己管理できないと、成果もあげられないということで、プロスポーツ選手の経験をもつTさんだからこそ、そのような指導方針を打ち出せるのだと感じました。私は、そのようなTさんの指導方針に対して、一瞬、意外さを感じたものの、やはり、Tさんは、本来の顧問税理士のあるべき姿勢をとっておられると感じました。

確かに、税理士の本来の業務は、税務申告の代行ですが、それだけでは、単に、事務の代行にすぎず、指導をする側と指導を受ける側の関係ではありません。税理士と顧問先の関係は、最終的には、顧問先の事業の発展だと思います。その目的の達成のたに、収支を含めて、顧問先自身にマネージメント能力をつけさせていくという方針は、私はすばらしいと感じました。ところが、一般の事業に広げてみてみると、財務管理については、あまり関心がない経営者の方は、依然、少なくないようです。

確かに、経理事務を経営者の方が行う必要はありませんが、毎月、事業の成果を確認し、それに基づいて着実に改善を重ねいくという活動は、事業を発展させるためには欠かせないものです。経営者の方の担う役割は、まず、事業のマネージメントであり、そのマネージメントには財務情報の定期的な確認が欠かせないと考えれば、財務情報には無関心ではいられなくなるのではないでしょうか?Tさんのお話をきいて、あらためて、経営者の方のマネージメントと財務管理の重要性を感じました。

 

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