鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

毎日やってるやつには勝てない

[要旨]

ビジネスパーソンは、自分の事業に関し、毎日実践し、高いスキルを身に付けていることがあるので、それを強みとしてさらに活かすことが、事業を改善させる鍵になるでしょう。


[本文]

経営コンサルタント板坂裕次郎さんのブログを読みました。ブログの要旨は、板坂さんが、ブログを毎日書き続けて、500回目の記事を書いたが、それは、「1週間に1回しかやらない人が、毎日やっている人に勝てるわけがない」という、出版プロデューサーの土井英司さんの言葉が支えとなったから、というものです。これについては、「継続は力なり」ということであり、ここであらためて述べるまでもありません。

ところで、ひとつのことを継続して実践していれば、確かにそれは大きな力になりますが、継続することも難しくて、なかなか力をつけることができないでいると考えている方も多いと思います。でも、その一方で、多くの人は、意識はしていないけれど、継続して実践していることは、意外と多いのではないかと、私は考えています。これは、以前、ある給与計算代行をしている会社の経営者の方からきいたのですが、地方で働いていた数名の社会保険労務士の方に、その会社のある東京都まで転居してもらい、雇い入れることにしたそうです。

その経営者の方は、営業が得意なので、新しい顧客から受注をとることが楽しいと感じる一方で、デスクワークは苦痛に感じるそうです。でも、会社に新しく来てもらった社会保険労務士さんたちは、あまり外交的ではないものの、給与計算をするときは、目をきらきら輝かせながら、ずっと机に座って作業を続けているということでした。この話を聞いて、人はすきなことは続けることができ、そして、さらにそのスキルに磨きをかけることができるということを、改めて確信しました。

私に関して考えてみると、100%すきとは言い切ることはできませんが、銀行勤務時代に、毎日、融資稟議書を書いていました。正確に数えてはいませんが、通算で、数千件は融資稟議書を書いたでしょう。時には、夢の中まで稟議書に追いかけられたことがありました。そして、当時は、限られた時間の中で、融資稟議書を書きあげなければならないということしか考えていませんでしたが、いまとなっては、その経験がいろいろなことに活きています。

例えば、私が、ビジネス書を書けるようになったのも、かつて、どのような文章にすれば、本部から承認をもらえるような、説得力のある文章になるかということを考えながら融資稟議書を書いていたからでしょう。したがって、意識して毎日続けることをしていなくても、毎日、無意識に続けていることがあれば、それをビジネスに活用することで、業績が向上するきっかけになるかもしれません。どんなビジネスパーソンも、きっと、毎日続けてやっているけれど、そのすばらしさに、自分自身でも気づかないでいることがあると思います。

 

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すべての仕事は営業である

[要旨]

会社の中には、営業部門の人と製造部門の人がいますが、顧客が製品を買うかどうかは、営業部門の人の働きかけだけでなく、製品の評価にも左右されるので、どの部署で働いているかにかかわらず、ビジネスパーソンは、顧客にどういう価値を提供できるかのということを意識することが大切です。


[本文]

働き方評論家で、千葉商科大学国際教養学部准教授の常見陽平さんの、産経新聞への寄稿を読みました。記事の主旨は、常見さんは、これまで、私生活の中で、自動車を購入したり、自分の所有するマンションを売却したりしたときに、優れた営業マンたちに会い、その人たちから大いに営業方法を学んだというものです。私は、仕事がら、これまで「営業の鬼」というような人をたくさん見てきており、自分が内向的な性格なので、そのような人たち(常見さんがそのような方かどうかは分からないのですが)に対しては、どちらかというと苦手意識を持っています。

でも、常見さんの記事の最後のフレーズについては、深く共感しました。「『私は営業担当者ではないので、あまり関係がない』という人もいるかもしれないが、ビジネスの場において、他社の営業を受けることがあるだろう。その時、どのような価値を提供するのか、どうすれば納得感が得られるのか、どのようなトークでプレゼンテーションをするのかということを学ぶことができるだろう。サラリーマンの人生訓に、『すべての仕事は営業である』というものがある。直接的に、自社製品を売るという仕事をしていなくても、何か価値を提供し、納得してもらう工程に関わっているということに変わりはない。自分がどんな価値を提供しているのかを考えることが大切だ」ということです。

いわゆる営業という仕事は、会社の営業部門の人の役割と考えている方が多いと思います。でも、自社の製品を顧客に実際に購入してもらえるかどうかは、営業部門の人の働きかけだけで決まるわけではありません。営業部門の人の活動に加えて、製品の完成度も大きな要因であり、製品の製造部門の人も、広い意味での営業活動に参画していると考えることができます。もう少し簡単に言えば、直接、顧客と接する機会のない人も、間接的には顧客から評価を受けることになっていると考えることができます。そう考えれば、「すべての仕事は営業である」という常見さんが指摘する考え方は、多くの方に理解されるものだと思います。会社の中には、顧客と直接会う人と、顧客と会うことがない人がいますが、その立場にかかわらず、自分が顧客にどういう価値を提供できているかということを意識することは大切ということを、常見さんの記事を読んで、改めて感じました。

 

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落選後のお礼

[要旨]

多くのビジネスパーソンは、自分中心に行動してしまう傾向があるために、顧客から信頼を失ってしまうことがありますが、それを改善できれば業績の向上の手がかりになります。


[本文]

経営コンサルタント板坂裕次郎さんのブログを読みました。ブログの要旨は、板坂さんの地元に、選挙の期間でないときでも、普段から、決まった場所で辻立ちをしている国会議員が、前回の選挙で落選してしまった。しかし、その落選した選挙の投票日の翌日に、応援してくれた人たちにお礼を伝えるため、いつもの場所で辻立ちをしていた。こういう姿を見ると、その元議員を応援したくなる。そして、このような姿勢は、ビジネスパーソンにも当てはまる。

例えば、普段は疎遠にしている顧客に、新商品キャンペーンをやるときなど、自分の都合だけで接触しようとするビジネスパーソンは、そもそも信頼を得られない、というものです。このような板坂さんのご指摘は、かつて、私が銀行の渉外係をしていたときに、実体験として感じています。例えば、融資をしている顧客の業績が順風満帆なときだけでなく、猛烈な向かい風が吹いているときにも訪問をしていないと、「銀行はどしゃぶりのときに傘を取り上げる」と批判され、会社の業績が回復したときに、取引をしてもらえなくなってしまいます。

このようなことは、私があえて述べるまでもないことであり、多くの方が理解しておられることとは思いますが、板坂さんが述べておられるように、落選した翌日に辻立ちする元議員さんが珍しく感じられてしまうくらい、自分の都合で行動している人が多いということも事実でしょう。確かに、いまは、新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動が思うようにいかない会社も多いと思いますが、単に、自分の都合で事業活動をしているために、業績が好転しないということもあると思います。ちなみに、板坂さんは、経営者向けに、ブログを毎日書くことによって業績を高める手法をご指導をされておられますが、1年間続けて毎日ブログを書くことができる人は、4%しかいないそうです。

話がちょっと飛躍するかもしれませんが、自分の都合を優先している経営者も、ブログを継続できない経営者も、その要因は同じだと思います。だからといって、単純に、そのような経営者の方たちは問題だ、と批判するつもりはありません。なぜなら、これは私にもあてはまることであり、多くの人は、かなり強く意識していないと、自分中心に行動してしまう習性があるからです。でも、逆に言えば、そこに目を向ければ、現状を改善できる手がかりをたくさん見つけることができると、私は考えています。

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気配を消しながらも存在感がある人

[要旨]

優れたビジネスパーソンは、普段はあまり出しゃばることはしないものの、必要とされるときに存在感を感じさせる立ち振る舞いをする人です。


[本文]

営業コンサルタント菊原智明さんのブログを読みました。ブログの要旨は、菊原さんがトップ営業マンのAさたちとゴルフをプレーしたとき、菊原さんがAさんを観察していると、Aさんは、他の人がティーショットを打つ時、その人より前に出ないようにするなど、マナーのよい人だった。メンバー同士で会話するときも、出過ぎることなく、黒子のような振る舞いをしていた。ところが、ランチのとき、電話がかかってきたため、Aさんが席を外した後、残ったメンバーの間は変な空気になり、黒子のようなAさんの存在感の大きさを実感したというものです。

私は、この菊原さんのブログを読み、リッツカールトンホテルの元日本支社長の高野登さんが、「気配を消しながらも、存在感があるサービス」についてお話しておられたことを思い出しました。すなわち、かつて、高野さんがニューヨークのホテルに勤務していたとき、市内のホテルの総支配人が集まる会議に、スケジュールが合わなかった上司に代わって、高野さんが代わりに出席したことがあったが、その会場となったプラザホテルで見た、ウエイターたちの立ち居振る舞いが、まるでブロードウェイの役者のようで、たいへん素晴らしかった。

会議の参加者から、一度、オーダーを聞いたら、それをずっと覚えており、メンバーの会話を中断させることなく、料理を運んでくれる。また、参加者の様子を常にうかがい、絶妙なタイミングで料理の説明をしたり、飲みもののお代わりを持ってきてくれるなど、そのホスピタリティは感動の連続だった。この、「決してお客の邪魔にならないけれど、必要とする時にそこにあるサービス」のことを、高野さんは、「気配を消しながらも、存在感があるサービス」と呼んでいる、というものです。

私は、菊原さんと一緒にゴルフをプレーしたAさんと、高野さんがプラザホテルで見たウエイターは、人との接し方が同じだと思っています。そして、その理由の詳細は、文字数の兼ね合いで割愛しますが、会社経営者も、「気配を消しながらも存在感があるサービス」を提供するような立ち居振る舞いで、従業員たちに接することが理想だと、私は思っています。なぜなら、普段は従業員たちが各々の能力を十分に発揮できるよう、社長の存在を意識することなく、自由に活動していながらも、必要があるときは、経営者がすっと手を差し伸べる来てくれるという状態の会社は、きっと、業績もよいと、私は考えているからです。

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神棚がある会社はもうかる?

[要旨]

経営者の方が、自社の業績を改善しようとするときは、神棚を祀るなどして、誰かから見られているという環境に自分を置くことは、効果があると思われます。


[本文]

窪寺伸浩さんのご著書、「なぜ儲かる会社には神棚があるのか」を読みました。同書の冒頭に、窪寺さんが銀行の融資課長からきいたお話として、銀行が顧客の会社に融資をするかどうかを判断するにあたって、神棚があるかどうかもチェックしているという記載がありました。「会社に神棚があるかどうかが、重要なチェックポイントですね」「神棚がただあるだけでは十分ではなく、そこにあるお榊が、いつも青々としていること、神棚の清掃が行き届いていることが重要です」「神棚がいつもすがすがしい状態であるということは、社長が、毎日、神棚の水を取り替えたり、ふき掃除をしていることの証拠です」

「さらに、神棚を祀っている会社は、地域に根差した会社という見方ができます」「その会社は神社からみれば氏子ということになりますから、地域の人たちに、お札を届けに行ったり、お祭りの寄付を頼みに行ったり、いろいろと地域につながってくるわけです」「会社が地域に根付くと、地域の目が気になって、悪いことができなくなってくる、社員の態度、自動車の停め方、会社の業績まで、すべて、地域から見られていると意識するので、会社をきちんとしようと考えるようになると思います」私が銀行に勤務していたときは、ここまで洞察していませんでしたが、確かに、業績のよい会社の経営者の方は、信心深い傾向があると感じていました。

だからといって、銀行から評価を得るために、会社に神棚を祀ればいいということには、直ちにはならないと思います。最終的には、経営者の方の姿勢が問われるからです。でも、人はどうしても安易な方に流されてしまうので、「神さま(=社会)が見ている」という環境に自分自身を置くことで、銀行からみても「きちんとしている経営者の方だ」と思われるようになるのだと思います。私は、業績を改善しようとしている会社の経営者の方が、必ずしも神棚を祀る必要があるとは思いませんが、「誰か(神さまや地域社会)に見られている」という環境に自分を置くことの必要性は高いと考えています。

 

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経営セーフティ共済の薦め

[要旨]

取引先が倒産し、売掛金などを回収できなくなると、自社も倒産してしまいかねませんが、経営セーフティ共済に加入していると、直ちに、回収不能となった金額の融資を受けることができるので、自社の倒産を防ぐことができます。


[本文]

現在は、事業活動に、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、業績が悪化している会社が増加しています。ただ、金融機関が資金繰支援をしているために、倒産件数はそれほど増加していないようです。とはいえ、徐々に、コロナの影響が表面化してきて、資金繰が行き詰まる会社も増えてくることも考えられることから、それへの備えとして、経営セーフティ共済に加入しておくことをお薦めします。この、経営セーフティ共済は愛称であり、正式な名称は中小企業倒産防止共済といいます。名称からもわかるとおり、中小企業の倒産を防止するための共済で、独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されています。(ご参考→ https://bit.ly/2N0QLhU

この共済に加入していると、どのような支援が受けられるのかというと、もし、取引先が倒産し、売掛金を支払ってもらえなくなったり、その会社が支払人(振出人)になっている手形や小切手が不渡りになったりしたときに、直ちに、その金額の融資を受けることができます。(融資条件は、無担保・無保証人・無利子で、融資期間は金額によって異なり、5か年~7年の分割返済です)この融資は、共済に加入している会社の権利の行使なので、融資の申込をした結果、融資審査で融資を拒まれるということはありません。すなわち、契約としては融資ではあるものの、保険に近い性格のものです。

ただし、制度上、融資額には8,000万円という上限があります。また、誰でも8,000万円まで融資が受けられるわけではなく、機構に支払った共済掛金の累計額の10倍という制約もあります。ですから、例えば、共済掛金を300万円支払った会社は、3,000万円の融資を受ける権利があります。ちなみに、掛金は、5千円から20万円の間で5千円単位の任意の金額を、毎月、収めますが、掛金の累計額が800万円になった時点で掛止めになります。

もうひとつ、注意が必要な点として、融資を受けた場合、その融資額の10分の1の金額の掛金を返還してもらう権利を失います。例えば、共済掛金の累計額が300万円の会社が、2,000万円の融資を受けた場合、その10分の1の金額の200万円の掛金を返還してもらう権利を失います。ちなみに、積立期間が1か年を経過したときは、任意の解約で掛金の80%が、3年4か月以上経過した時は、任意の解約で掛金の全額が返還されます。話をもどすと、掛金がもどらなくなるという点ではコストが大きいように考えられるものの、掛金を支払った時点で、その10倍の金額の、無担保・無保証・無利息という有利な融資を受けられる権利を得ることができるので、私はメリットの方が大きいと思います。

しかも、共済掛金は、支払った時点で全額を損金算入できるので、節税のメリットもある上に、前述のとおり、3年4か月経てば、任意の解約でも全額が戻るので、メリットは大きいと思います。そして、繰り返しになりますが、取引先の倒産してしまったときに融資をしてもらえる権利を得ることができるという点で、この経営セーフティ共済はとても心強い制度です。私が銀行に勤務していたとき、何度か、この共済に入っていたために、連鎖倒産に至らずに済んだという会社の事例を見ています。まだ、この共済を契約していない会社は、できるだけ早めに加入することをお薦めします。ちなみに、経営セーフティ共済は、民間金融機関で申込と契約が可能です。

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中小企業の事業多角化の注意点

[要旨]

事業を多角化する会社は多いようですが、多角化するだけでは事業が成功するわけではなく、しっかりとした組織づくりが前提になるということに注意が必要です。


[本文]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのブログを読みました。(ご参考→ https://amba.to/2B8o9R4 )ブログの主旨は、新聞に、不況の中にあって、新たな収益を得るために、建設会社がフランチャイズチェーンに加盟して、たい焼き店を開いた。しかし、板坂さんの経験からは、既存の事業に関連がある分野への多角化(集中型多角化)であれば、成功する確率が高いが、まったく関連のない分野への多角化(集成型多角化)であれば、経営資源が分散してしまうので、成功する確率は低い。したがって、前述のたい焼き店に進出した建設会社は、建設業をやめて、たい焼き店だけに集中する気持ちが必要になるだろうというものです。

私も、中小企業が多角化するときは、板坂さんのように考えるべきだと思います。なぜなら、中小企業は経営資源が少ないので、ふたつの事業を同時に営もうとするのであれば、リスクの少ない集中型多角化が妥当であり、集成型多角化を選ぶのであれば、営む事業をひとつに絞り、すべての経営資源を新たな事業に集中させるべきでしょう。ここまでは多くの方にご理解いただけることなのですが、私がこれまで中小企業の多角化を見て思うことは、「自社の業績がよくないのは、営んでいる事業がよくないからで、事業をかえれば業績もあがる」と、安易に考えてしまう会社が多いということです。

人は、隣の家の芝生は青く見える習性があるので、そう思うことは理解できなくもありません。また、事業を変えることが妥当なこともあります。問題なのは、事業を変えることですべてが解決すると、過信してしまうことです。事業が成功する要因は、どんな事業を営むかということも大切ですが、最終的には、その事業を営む組織の能力(=経営資源の質)が決め手になります。そこを抑えておかなければ、どんな事業を営んでも、その会社が営む事業はうまくいかないでしょう。

 

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