鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『言った言わない』をなくすには

「言った、言わない」の争いは、どういう

訳か、いつまでたってもなくならないと感

じています。


これは、会社内でも起きるし、お取引先と

の間でも起きます。


文字数の兼ね合いから、ここでは、会社内

のことに絞って述べますが、「言った、言

わない」が起きないようにするには、ルー

ルを定めるしかありません。


すなわち、決定事項は議事録などによって

明文化し、関係者にその文章について承認

を得る、というルールを作り、実践するし

か避ける方法はありません。


とはいえ、これは多くの方が頭では理解で

きても、特に中小企業(=オーナー企業)

では実践されません。


なぜなら、中小企業では、議事録を作ると

いう作業自体が負担であることと、もうひ

とつは、社長が朝令暮改どころか、朝令昼

改や朝令朝改であることが多いからという

ことが、理由になっていると私は感じてい

ます。


このような、経営者の考え方が頻繁に変わ

ることは、柔軟であり臨機応変という面で

評価されることもあります。


しかし、私は、組織の成熟度が低い段階で

は、経営者の方は頻繁に方針を変えない方

がよいと思っています。


それは、従業員の方に過剰な負担をかける

だけに終わってしまうからです。


(ご参考→ https://goo.gl/WQRZ2B


話を戻して、「言った、言わない」を無く

すことは、単に、思い違いを無くすという

ためだけではなく、ルールに従って仕事を

する風土を、会社に涵養するために必要で

あると思っています。


もし、会社で「言った、言わない」の論争

が起きたときは、立場の強い人が勝つこと

になるでしょう。


そのような職場風土の中では、従業員の士

気が低くなる、従業員が自立的に働かなく

なる、組織的な活動ができなくなるなどの

悪影響が出てきます。


多くの経営者の方は、従業員の方に、自律

的に働き、かつ、組織的に活動して欲しい

と考えていると思います。


そうであれば、面倒に思えるかもしれませ

んが、ルールを作成し、経営者自らがそれ

にしたがって活動することが必要になりま

す。


もうひとつ付言すると、従業員数が10名

程度までは、職場での人間関係が緊密なた

めに、多くの場合、ルールがなくても円滑

に意思疎通ができます。


そこで、ルールは不要と考える経営者の方

もいると思います。


しかし、ルールがない職場のままでは、新

しい従業員の方が馴染みにくく、従業員数

を増やすこと困難になり、事業も拡大する

ことができません。


今回の記事の結論は、人間関係で成り立つ

組織から、ルールで動く組織にすることが

事業拡大のために大切ということです。


結果としてルールで動く組織では、「言っ

た、言わない」の議論は、ほとんど起きな

くなるでしょう。


言い換えれば、「言った、言わない」の議

論が起きやすい会社は、組織的な活動がで

きず、業績もあまりよくないのではないで

しょうか。

 

 

 

 

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残業をなくせない要因

先日、岡山県倉敷市にある真言宗の寺院、

高蔵寺の住職の天野高雄さんのメールマガ

ジンを読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/aZgqBW


「私が本山の高野山金剛峯寺)での修行

時代、『忙しいと思われたら恥』と教わり

ました。


人の中には多忙であることを美徳とする者

もいます。


でも、超高速で走る新幹線の車内は静かで

す。


『ガタガタグラグラ』と音を出して、『い

かにも猛スピードで走っているぞ!』とい

うアピールはしません。


だからこそ安心して快適に乗っていられる

のです。


『忙しい!』と騒がず、人に悟られず平然

とする行いを意識しましょう」


私も、サラリーマン時代は、残業をしない

ようにしようと努力し、きょうできること

はきょう終わらせるように心がけていたこ

とから、あまり残業はしませんでした。


でも、成行でしか仕事をせず、要領が悪い

ために、たくさん残業をしている同僚の方

が評価されることが多いということも感じ

ていました。


会社の経営者や人事部は、表向きは残業を

減らせと号令をかけているものの、事業の

現場の管理者や従業員は、「もし、残業を

減らすという課題を達成してしまったら、

さらに、難しい課題を押し付けられるので

はないか?」という意識が働き、残業を減

らそうとするポーズだけをして、本気で残

業を減らそうとはしていなかったのではな

いかと、私は想像しています。


それは、まさに、冒頭で引用した、天野さ

んのメールマガジンに書かれていたような

状況なのだと思います。


以前にも、10年連続で売上を伸ばしつつ

も、従業員の方は17時に退社する会社を

経営している、岩崎裕美子さんについてご

紹介させていただいたときにも述べました

が、残業をしない従業員が高く評価される

という経営者の意図を明確にしない限り、

残業は減らないでしょう。


(ご参考→ https://goo.gl/msvdBw


ここで、「残業をなくすことも大切だが、

会社がなくならないようにする方がもっと

大切だろう」と考える方もいるかもしれま

せん。


そのような方は、前述の岩崎さんの経営す

る会社は、例外的だと考えているのかもし

れません。


しかし、現在は、残業の多い会社は、従業

員の確保が困難になり、逆に、競争力が低

くなります。


そして、人工知能やRPA(Roboti

c Process Automatio

n、より高度な作業を人間に代わって実施

できる認知技術(ルールエンジン、AI、

機械学習等)を活用した業務を代行・代替

する取組)により、就業時間を短くして競

争力を高めた会社が、たくさん現れてくる

ようになるでしょう。


(ご参考→ https://goo.gl/K9nxWU


現在は、従業員に残業はさせることができ

ないと考えることが、会社経営の前提にな

ると私は考えています。

 

 

 

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取引先分散による経営環境への備え

先日、ある地方銀行が、融資審査書類の改

竄などが原因で、業務の一部停止命令を受

けましたが、その銀行の状況について詳し

調べてみようと思い、同行の有価証券報告

書(上場会社等の決算報告書にあたるもの

で、金融証券取引法により、事業年度終了

後3か月以内に内閣総理大臣(実際には金

融庁)へ提出することになっています)を

見てみました。


そうしたところ、その19ページに、同行

の融資相手の業種ごとの融資残高が記載さ

れている表がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/Mu8Kg7


この表で驚いたことは、同行の融資額、約

3.25兆円のうち約91%の約2.96

兆円が、「その他の業種」になっていたこ

とです。


この「その他の業種」とは、住宅ローンな

どの、非事業性の融資や、今回、問題と

なっている、投資用不動産向け融資と思わ

れます。


住宅ローンや投資用不動産向け融資を行う

ことそのものに問題はないのですが、その

ような融資が、融資全体の91%というこ

とは文字通り特異であると思います。


一般的に、銀行では、融資相手の業種があ

まり偏らないように配慮しています。


例えば、観光地が多い地方の銀行では、ど

うしても観光業への融資が増えてしまいま

す。


しかし、もし、観光業が不況になると、そ

の銀行もその不況の影響を受けやすくなっ

てしまうので、前述のように、融資相手の

業種が偏り過ぎないように注意をしていま

す。


一方で、同行では、非事業性の融資が91

%という状況は、仮に、現時点で収益の見

込まれる相手への融資であったとしても、

社会状況が変わったときの影響も大きくな

るというリスクを抱えることになります。


話がそれますが、銀行の監督官庁である金

融庁は、当然、同行のこのうような状況は

把握していたはずで、それはリスクがある

としても銀行独自の判断で収益を高めるた

めの戦術と見ているという中立的な見解を

示しているのであれば別ですが、前長官

が、同行をお手本とすべき銀行と述べてい

たことは、大きな問題があると思います。


話を戻して、同行が融資相手をあえて偏重

させていたことは、収益を高めようとして

いたという意味では評価できなくもないの

ですが、偏重にはリスクも伴うということ

が今回の記事の結論です。


これを中小企業にあてはめてみた場合、販

売先、販売地域、販売客層を絞るという戦

術は有効であると、私は考えています。


それは、中小企業は小回りが利くからで、

経営環境が変わったときの体制変更も、比

較的容易であるという面と、中小企業は経

営資源が少ないので、幅広く事業展開する

よりも、事業領域を絞る方が効率性が高い

からです。


しかし、事業規模が大きくなるにしたがっ

て、小回りは聞きにくくなるので、取引相

手を分散させていくことが必要になってい

くと言えるでしょう。


売上が増えていくにしたがって、事業の柱

を1つから2つへ、そして3つへと、タイ

ミングを見計らって増やしていくことは、

経営環境の変化に備えてリスクを低減させ

るために大切です。

 

 

 

 

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結果よりもプロセス

先日、イエローハット創業者の鍵山秀三郎

さんのメールマガジンに、次のようなこと

が書かれていました。


「結果主義は『終わりよければすべてよ

し』という考えです。


この考え方には、誠意が感じられません。


事実、結果を追うあまりあの手この手を使

い、ついには犯罪まで犯すようになりま

す。(中略)


一方、プロセス主義は方法と手段に重きを

置いて、その過程を大切にする生き方で

す」


私も、鍵山さんと同様に、プロセスは大切

と考えています。


その一方で、私は、「経営者は結果責任

負う」とも述べています。


この、禅問答のような対立した考え方につ

いて、深く掘り下げて述べることもできる

のですが、ここでは、文字数の兼ね合いか

ら、もっと簡単な、プロセス管理の入り口

のことについて述べたいと思います。


このように述べると失礼になるかもしれま

せんが、表面的にはプロセスが大切と述べ

ている経営者(私も含まれます)はたくさ

んいますが、実際にプロセスまで管理でき

ている人の割合はあまり高くないと、私は

思っています。


これを言い換えれば、組織的な事業活動を

確立しようとしている人はあまりいないと

いうことです。


これについては、これまで何度か述べてき

たので、ここで改めて述べることは致しま

せん。


(ご参考→ https://goo.gl/hbqYhF


このプロセスを確立する活動は、実は、地

味な活動であり、難易度も高い活動でもあ

ることから、避けられがちです。


でも、その、なかなか出口が見えない活動

に、どれだけ取り組むことができるかが、

本当に成功する経営者かどうかの試金石に

なると私は考えています。


もちろん、成行管理で事業がうまくいくこ

ともありますが、その成功要因を把握でき

なければ、成功した状態を持続させること

はできません。


会社を継続して発展させる役割こそが、最

も経営者の役割らしい役割だと思います。

 

 

 

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リースに関する誤解

私の著書に、「図解でわかるリースの実務

いちばん最初に読む本」という本があるこ

とから、私に対してはリースに関するご質

問も寄せられることが多いのですが、その

中で、何人かの方から、誤解が前提となっ

てご質問をしておられるということがあっ

たので、今回はそのご質問について触れた

いと思います。


(ご参考→ http://amzn.to/1o1VluB


誤解が前提となっているご質問というの

は、「リース物件は賃借物件なので、リー

スをたくさん使うと、リース物件の管理や

維持のための手間が増えてしまわないか」

というものです。


この質問に対する回答を述べる前に、どの

ようなことを誤解しているのかということ

について述べたいと思います。


リース契約は、日本では、法的には賃貸借

契約であり、リース物件も賃借物です。


しかし、同じ賃貸借であるレンタルとは、

次のような点で異なります。


(1)リース物件は、ユーザーが指定した

ものに対してリース会社がサプライヤー

代金を支払った後、サプライヤーからユー

ザーへ直接納品されること。


(2)リース物件の購入代金と、金利・手

数料相当額の全額は、リースユーザーがす

べて単独でリース料として負担すること。


(3)リース契約は、中途解約ができない

こと。


リースには、このような特徴があることか

ら、法的には賃貸借契約であっても、経済

的な効果は、リース物件相当額をリース会

社がユーザーに融資したことと同じことに

なります。


そのため、リース会計基準では、リースに

よってリース物件を調達したときは、リー

ス物件相当額を自社の資産として計上する

こととなっています。


このように、リース物件は、銀行から融資

を受けて設備を購入したときと、実質的に

は変わらないので、リース物件も自社物件

と同等のものと考えても問題ないというこ

とです。


そして、前述のご質問者の方が誤解をして

いるというのは、融資を受けて設備を調達

したときよりも、リースによって設備を調

達したときの方が、手間が大きいというこ

とです。


確かに、自己資金であれ、融資であれ、

リースであれ、どのような手段で設備を調

達しても、その設備がきちんと存在してい

るかということは、会社の決算日には確認

を行う必要があるし、設備を使っているう

ちに、故障の修理をしたりメンテナンスを

行うという手間は発生します。


しかし、それが、自己資金や融資によって

調達したときよりも、リースで調達したと

きの方が、手間が大きくなることはありま

せん。


これが、前述の質問への回答です。


確かに、リース契約は、法的には賃貸借契

約であるのに、会計上は融資を受けて購入

したものとして処理されるために、わかり

にいという面はあります。


ただ、法的に賃貸借契約であるということ

以外は、自社で購入した場合と同じと考え

ていただいて問題ありません。


このように述べると、融資ではなく、リー

スを利用するメリットは何なのかという疑

問を持たれる方もいらっしゃると思います

が、それは、ぜひ、好評により4回の版を

重ねた拙著( http://amzn.to/1o1VluB )を

お読みいただいて解決していただければと

思います。

 

 

 

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10年後に残る会社は30%ではない

私が、かつて、ある社会保険労務士の方に

社会保険労務士になるには、合格率が5

%前後の難しい試験に合格しなければなら

ないんですよね」と質問ししたところ、

「確かに試験の合格率は表面的には5%程

度かもしれませんが、受験者の中にはあま

り勉強せずに、単に経験するためだけに受

験する人も相当いるので、ちゃんと勉強し

た人だけで計算した実質的な合格率はもっ

と高いと思います」と返答されたことがあ

ります。


私は、この方の指摘がどれほど正しいかは

分からないのですが、多少はそういう面は

あると思います。


ところで、「%」の話になると、私は、起

業して10年後に生存している会社の割合

のことを思い浮かべます。


すなわち、「起業して10年後に生き残っ

ている会社は30%」ということを、よく

耳にします。


とはいえ、この30%という数値の根拠を

探しても、なかなか見つかりません。


中小企業白書2017年版のコラム2-1

-2には、起業後5年までの生存率のグラ

フが載っていますが、これによれば、5年

後の生存率は、81.7%と、結構、高い

数値になっています。


(ご参考→ https://goo.gl/2iPEVs


仮に、生存率が6年目以降は毎年5%ずつ

下がって行くとすれば、10年後の生存率

は55%くらいと推測できるでしょう。


では、10年後の生存率が、仮に、30%

や55%として、これがどうなのかという

と、私の肌間隔では低いと思っています。


というのは、会社経営の定石を踏んでいる

会社は、もっと長い期間、事業を続けてい

るからです。


これを言い換えれば、成り行きで事業を営

んでいたり、自己流で事業を営んでいる会

社は、当然のことながら、生存率は高くあ

りません。


客観的な根拠は示すことはできませんが、

きちんと体制を整えている会社は、そう簡

単に廃業や倒産することはありません。


すなわち、冒頭で、社会保険労務士の試験

で、きちんと勉強している人だけで見れば

合格率が高くなるということと同様に、起

業も、定石を踏んでいる会社だけで見れば

生存率は高いということが、今回の記事の

結論です。


もちろん、起業する人は、自分の思い通り

の事業展開をしたいから起業するのだと思

いますが、マネジメントスキルが備わって

いない方については、スキルが高くなるま

では、経験を積むことに専念すべきと私は

考えています。

 

 

 

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ビジネスモデルの成功の要因

京都市にある、国産牛ステーキ丼専門店、

「佰食屋(ひゃくしょくや)」を運営して

いる株式会社minittsの社長の、中

村朱美さんのインタビュー記事を読みまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/v7pCQn


中村さんの考え方はすばらしく、ここで、

あえて私が批評するまでもないものと思っ

ています。


ただし、記事の中で、ひとつ気になったこ

とがあったので、それについて触れたいと

思います。


中村さんは、佰食屋を開店する2か月前に

ビジネスプランコンテストに出て、審査員

の方々に酷評されたそうです。


私はその場にいないので、酷評された理由

は分からないのですが、仮に、私が審査員

であった場合、中村さんのビジネスプラン

は実現しないのではないかと考えたと思い

ます。


現在、それは実現されているものの、お店

の名前のとおり、100食を売ったら、そ

こで店を閉めて残業せずに帰るという発想

は、毎日100食必ず売れるということが

前提になります。


ところが、私は、残念ながら、佰食屋さん

は例外的で、目標とする売上を得ることが

できないでいる飲食店の方が、大多数では

ないかと思っています。


そこで、目標販売数を販売したら帰るとい

う発想自体は否定できないものの、目標販

売数を売れるかどうかという前提が明確で

なければ、そのビジネスプランの実現は難

しいと考えることが一般的ではないかと、

私は考えています。


そもそも、目標販売数が売れなければ、そ

れを達成させるための活動が必要になり、

なかなか帰ることができなかったり、事業

が赤字になったりしてしまいます。

 

今回の記事の結論は、ビジネスモデルを成

功させるには、目標販売数以上の売上が得

られるだけの商品の魅力が前提になるとい

うことです。


単にお店を開いただけとか、ビジネスモデ

ルを考えただけでは成功はしません。

 

 

 

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