鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

裏技

私にご相談をされる中小企業経営者の中に

は、「融資を受けるための“裏技”を教え

て欲しい」という方が少なくありません。


ちなみに、デジタル大辞泉によると、裏技

とは、「人に知られていない隠れた方法。

通常の方法とは異なるが、意外な効果のあ

る方法。特にテレビゲームで、開発者が意

図したものとは違う、特殊な攻略法」とい

うことです。


私は、融資の申し込みの仕方に、裏技はな

いと思っているのですが、仮にあるとして

も、「裏技を教えて欲しい」という要望を

持つのは、自社に対して、一般的な申し込

みの仕方では、要望通りに融資を受けるこ

とができないと認識しているということで

しょう。


実は、「裏技を教えて欲しい」というご要

望を持っておられる経営者の方の経営して

いる会社であっても、詳しく財務状況を見

てみると、「裏技」に頼るまでもなく、融

資が必要な理由をきちんと説明すれば、融

資を受けることができることも少なくあり

ません。


しかし、問題だと思うことは、経営者の方

が、「裏技」に安易に頼ろうとしてしまう

ということです。


これは、単純に、正攻法を使おうとしない

ことはよくないという面もありますが、

もっと本質的な課題から逃れようとしてい

るところが問題だと思います。


これは、例え方があまり適切でないかもし

れませんが、裏技を教えて欲しいという経

営者の方は、8月の終わりのころになり、

ためこんでしまった宿題を終わらせるため

に、答えを書き写させて欲しいと友だちに

頼んでいる小学生と同じだと思います。


本来ならば、夏休みが始まった時点で、計

画的に宿題を終わらせていくことが、最も

負担が少ない方法のはずです。


このように、計画的に課題に取り組むべき

と書くと、私が建前を述べているように思

われる方が多いと思いますが、そういう私

自身も、かつて、銀行職員のときに、同じ

ようなことを経験しました。


銀行では、職員が半期(6か月)ごとに成

績の査定を受けますが、期末が近づくにつ

れ、目標と実績の乖離が大きくなり、もっ

と早い段階から計画的に融資や預金を獲得

しておけばよかったと、何度も後悔してい

ました。


(正直なところ、私も、そういう時に、す

ぐに成績をあげられる「裏技」はないもの

かと考えたりもしました)


でも、成績のよい模範的な職員は、新しい

期が始まるまでに、前もって種まきをして

おき、期が変わってからその刈り取りを行

い、時間的な余裕をもってよい成績をおさ

めていました。


ただ、これも、頭では理解できますが、実

際に実践するとなると、前倒しの仕事はな

かなか実践が難しく、その差が成績の差に

なって現れるのだということを痛感してい

ました。


話を戻して、会社経営者の方も、経営環境

の厳しい時代だからこそ、表面的なことで

右往左往することなく、一日でも早く本質

的な課題の解決に臨むことがライバルに大

きな差をつけるポイントになるということ

を、「裏技」という言葉をきくたびに、私

は思い出します。

 

 

 

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改善意欲

「中小企業は、経営者自らに改善意欲がな

ければ、なかなか改善されないでしょう」

と書くと、100人中100人の人が、

「Yes」と答えるでしょう。


ただ、実際には、経営者の方が改善意欲を

持ち続けることは、なかなか難しいようで

す。


こちらは、少数ですが、「自社は中小企業

なのだから、銀行(または、経営コンサル

タント)がしっかり支援すべき」と、自ら

がどれくらい努力したかには言及せず、外

部に依存的な経営者に会うこともありま

す。


もちろん、このような経営者は論外です。


最も多いのは、「まず、自社が克服しなけ

ればならない課題は認識できたので、すぐ

に、改善活動に着手します」と経営者が自

ら宣言したにもかかわらず、1か月が経っ

ても、3か月が経っても、着手しない経営

者の方です。


そういう私自身も、改善活動にすぐに着手

できない一人です。


人間ドックを受診して、医師の方から食生

活を改めるように言われ、自分もそれに納

得しているにもかかわらず、毎年、同じ指

摘を受けています。


では、なぜ、改善が必要だと納得している

にもかかわらず、経営者の方は、それを実

践に移すことができないのでしょうか?


これは、私の専門外なのですが、顕在意識

だけで納得しても、潜在意識では、現在よ

りつらいこと、難しいこと、きついことは

避けようという意識が残っており、これを

変えることができない限り、新しいことの

着手は難しいようです。


話を戻して、今回の記事の結論は、2つあ

ります。


ひとつは、「やるやる詐欺」的な経営者の

方は、銀行などの支援をする側(だけでは

ないですが)からの信用を失ってしまうと

いうことです。


例えば、「今回、融資の要請には応じます

が、次回までに、この点の改善が見られな

ければ、再度、融資をすることは難しいで

す」と銀行から条件をつけられて融資を受

けた会社が、その後、融資を受けた後も、

何ら改善をしなければ、再度、融資を受け

ることができなくなってしまいます。


少なくとも、何もしないで時間だけが過ぎ

たということではなく、要請通りの活動を

したが未達成だったという状態にすること

は必要でしょう。


ふたつめは、「景気がよくない」という中

小企業経営者の方はたくさんいるものの、

私は、万策が尽きているとは考えていませ

ん。


現時点で、私は、改善活動を実践してみた

が、それでも業況が改善しなかったという

会社は見ていません。


業況が改善しない会社のほとんどが、改善

活動半ばで息切れしてしまったという会社

です。


むしろ、景気がよくないのではなく、現在

は、あまり意思が強くない経営者はきちん

と事業改善ができない時代になっていると

私は考えています。

 

 

 

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なぜ『経営』にこだわるのか

先日、「経営」とはどういうことかという

ことについて、そのひとつの側面を説明し

た際にも少し触れましたが、私の最新刊の

「図解でわかる経営の基本いちばん最初に

読む本」( http://amzn.to/2lu3fU4 )で

も、多くのページにわたって「経営」につ

いて説明しています。


(ご参考→ https://goo.gl/SoHkRG


というのは、私はこの「経営」ということ

ばにこだわりを持っているからです。


ただ、私は、学者ではないので、言葉の定

義がどうこうということにこだわりを持っ

ているということではありません。


これは、多くの人が耳にしていると思いま

すが、「起業してみたものの、こんなはず

ではなかった」ということを口にする起業

家の方は少なくないと思います。


また、これも以前に触れましたが、同様の

ことを、米国の作家、マイケル・E・ガー

バーが、彼の主著、「はじめの一歩を踏み

出そう」( http://amzn.to/2Bn53VE )で、

「起業熱」という言葉を使って言及してい

ます。


(ご参考→ https://goo.gl/kyUbm9


そこで、もし、「経営」が何を指すかとい

うことを、少なくとも「経営者」になろう

とする人が、漠然とではなく具体的な意味

を知っているだけでも、起業してから「こ

んなはずではなかった」と感じてしまうこ

とを、少しでも防ぐことになるのではない

かと私は考えています。


そのため、私は、起業しようとする方に、

より具体的な「経営」について知る機会を

増やしたいと考えています。


もちろん、実際に経営者になってからでな

いと学べないこともあります。


だからといって、起業前に学べることを学

ばないで起業するよりは、事前に持つこと

ができる知識を持っておく方が、起業前に

準備できることが増え、かつ、起業後も、

より高い確率で事業を軌道にのせることが

できるでしょう。


そして、もうひとつ、起業家の方に知って

おいていただきたいと思うことは、必ずし

も有能なプレーヤー(従業員)が有能なマ

ネージャー(社長)になることができると

は限らないということです。


このことも、徐々に多くの方が理解される

ようになってきていると思いますが、やは

り、「自分は会社員として誇れる実績を上

げたから、経営者になれば、もっと大きな

実績をあげられるし、その名声はすべて自

分のものになる」と考えて起業する方はい

るようです。


かつては、事業現場で優秀な実績を残した

方が、経営者としても優秀な業績をあげる

ことが一般的でした。


しかし、現在は、経営環境がより複雑に

なってきており、経営者のスキルの差が大

きく業績に影響するようになってきていま

す。


まったく業種の異なる会社の事業をいくつ

も立て直す、いわゆる、専門経営者が日本

でも多く見られるようになったのは、その

ような状況を反映しているからです。


そこで、プレーヤーからマネージャーに転

身しようとする方は、あらためて、マネー

ジャーとしてのスキルをきちんと学ぶこと

が求められていると私は考えています。


そういった面からも、「経営」とは何かと

いうことを、起業家の方には、しっかりと

知っていただきたいと思っています。


そして、経営者の方が、経営のスキルを身

に付けるためのお手伝いをする人が、正に

「経営」コンサルタントだと考え、私は、

経営コンサルタントを名乗っています。

 

 

 

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CFと利益

最近、「キャッシュフロー経営」という言

葉をよく耳にします。


キャッシュフロー(CF)とは、直接的に

は、お金の流れという意味ですが、会計で

は、会社の中をお金が出たり入ったりして

流れた結果、会社に残ったお金(=現金+

預金+短期的に運用している有価証券)が

いくらかということを指しています。


あえて、ここで説明するまでもありません

が、なぜ、CFが大切かというと、ひとつ

は、現金がなくなると、会社の事業が停止

してしまうからです。


具体的には、材料を仕入れたり、従業員に

給与を支払ったりできなくなり、事業が止

まってしまうばかりでなく、いわゆる「支

払いの停止」をしてしまった会社は、社会

的な信用も失ってしまいます。


もうひとつは、ひとつめの理由と重なる部

分もありますが、CFが適正な財務管理を

行うための管理の対象になっているからで

す。


というのは、利益が増えても現金がないと

いう「勘定合って銭足らず」の状態になる

ことは、適切でない財務状態なので、その

ような状態になることを避けるよう、CF

についてもしっかりとした管理を行わなけ

ればなりません。


以上がCFの大切さの根拠ですが、本題に

戻ると、私は、最近のCFの大切さが強調

されることについては、疑問を感じていま

す。


前回の記事( https://goo.gl/bgJsx9

でも触れましたが、融資を受ければCFが

増えますが、それだけですべてが解決しな

いにもかかわらず、それ以上のことをしよ

うとしない会社も存在します。


CFの維持も大切ですが、CFを安定させ

るためには、本源的には利益を得なければ

なりません。


これを言い換えれば、黒字の会社でなけれ

ば、資金提供(融資や出資)をしようとす

る協力者はなかなか現れません。


とはいえ、このことは理解されているにも

かかわらず、CFが利益より強調されやす

い状況にある理由は2つ考えられます。


ひとつは、財務管理そのものが稚拙な会社

が多いということです。


本来ならば、CFと利益のバランスを勘案

しながら、財務管理をすることが理想なの

ですが、不慣れな人にとっては、それは、

やや高度な管理となるので、「まず、現金

の残高から管理しましょう」と指導する専

門家が多いのだと思います。


ふたつめは、CFの維持は短期的な課題で

あり、利益獲得という長期的な課題より、

比較的容易に解決できるからでしょう。


「お金が足りない」というときは、銀行に

融資を受けたり、仕入先に支払いを待って

もらうといった対応で、直ちに解決できま

す。


一方、「会社が赤字になりそうだ」という

ときは、どうすれば赤字を解消できるかと

いう分析を行い、それに対する改善策を考

え、それを実践するというステップを踏ま

なければなりません。


こういった事情から、CFに経営者の関心

が向きがちなのだと思います。


今回の記事の結論は、CFと利益は、それ

ぞれ、別の意味で大切であり、どちらの方

が大切か比較することができないこと、そ

して、CFを維持することが利益の維持に

つながり、また、利益を維持することがC

Fの維持につながるというように、お互い

に貢献し合っているということです。


したがって、管理の仕方が容易などの理由

で、CFだけ重要視するということは、結

果として、CFの維持も困難にすることと

なり、避けなければなりません。

 

 

 

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融資を受けた後何をするか

「銀行が、こちらから依頼した通りの金額

を、やはり、こちらから依頼した通りの期

間、融資してくれたとしたら、次に、あな

たの会社では何をしますか?」


これは、私が、融資の申請のお手伝いをす

る会社経営者の方に最初に行う質問です。


なぜ、このような質問をするかというと、

このことを銀行は最も知りたいからです。


すなわち、融資の申し込みがあった会社に

融資をするのであれば、その会社が融資を

受けて、さらに事業が改善するということ

が前提になります。


そこで、融資を受けた会社は、その後、事

業改善のために、どのような活動をするの

かということを、銀行は知りたがるわけで

す。


ところが、私の経験では、融資を受けた後

に、具体的に何かをしようとしている経営

者の方は、これまでほとんどいませんでし

た。


私が質問した経営者の方は、恐らく、「お

金が足りないから融資を申し込んだ、そし

て、融資が受けられたら、今まで通りに事

業を続けられる」というところまでしか考

えていないのでしょう。


これを別の言い方をすれば、融資を受ける

ことがゴールになっていて、融資をすべて

返済し終わるところまでは考えていないと

いうことでしょう。


このように書くと、「融資を受けるのであ

れば、経営者は、融資の返済が終わるとこ

ろまで考えておかなければならない」と私

が言おうとしていると受け止めてしまうか

もしれません。


確かにそのような面もありますが、その前

に、見落とされがちなことがあります。


というのは、とにかく融資が受けられれば

よいというような、その場のことだけをや

り過ごすこしか頭にない経営者の方に限っ

て、「銀行から融資をしてもらうには、労

力がかかる」と考えているのではないで

しょうか?


そして、だからこそ、何らかの融資対策が

必要になると考えていることでしょう。


しかし、これは、本末転倒なことだと思い

ます。


事業改善に向き合おうとすることなく、融

資対策だけで頭がいっぱいという経営者の

方は、厳しい言い方ですが、会社経営を放

棄しているようなものです。


そして、銀行を説得して融資を受けること

は労力がかかるとはいえ、本来の役割であ

る、顧客や従業員などに働きかけて、事業

を地道に改善していく活動よりは、銀行に

依頼して、融資を引き出すことの方が、ま

だ楽であると考えているのだと思います。


これは、「水は低きに流れ、人は易きに流

れる」ということでしょう。


今回は、やや、辛口になりましたが、私が

会社経営者の方は「融資対策」をあまり行

うべきではないと考えている理由のひとつ

は、経営者の方が、本来取り組むべき事業

改善活動から逃れたいために、融資対策を

口実にしてしまう例が多いからです。


ただ、そのような会社は、当然、事業は悪

化する一方で、ますます融資を受けにくく

なり、早晩、事業が行き詰ることになるこ

とは明らかです。

 

 

 

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最大限よりもバランス

先月、おかげさまで、小職の最新刊、「図

解でわかる経営の基本いちばん最初に読む

本」( http://amzn.to/2lu3fU4 )が増刷さ

れ、第3刷となりました。


著名なベストセラー作家の著書と比べたら

ゆっくりとした売れ方ですが、1年3か月

で2回の増刷というのは、これまで私が書

いてきた本の中では、最も速く売れている

本であり、また、版元の出版社の本の中で

も、比較的、増刷の速さが速いようです。


この本は、当初は、出版社の方はあまり乗

り気ではなかったのですが、よい方向に予

想を裏切ったことになり、私もうれしく

思っています。


とはいえ、結果として、たまたま拙著が売

れたというように考えてはいません。


この本に、当初、出版社が乗り気でなかっ

た理由として、類書がたくさんあるという

こと、実務書というよりは参考書という感

じの本であったことなどがありました。


でも、私とすれば、類書は経営用語解説書

的なものばかりで、物足りなさを感じる本

ばかりでしたので、きちんとした内容で書

けば、きっと買ってくれる方はいると考え

ていました。


その、きちんとした内容の本にするために

盛り込んだ要素はいくつかあるのですが、

そのひとは、「経営とはなにか」を強調し

とことです。


「経営」ということばは多くの方が使って

いるにもかかわらず、「経営とはなにか」

を説明できる方は少ないと私は感じていま

す。


そもそも、多くの経営入門書でさえ、経営

の定義を書かずに経営戦略や学説ばかりを

取り上げており、すなわち、幹の部分に触

れず、枝葉ばかり解説しているから、それ

が物足りなさを感じる要因になっているの

だと思います。


一方で、この経営は何かということを説明

することも、確かに難しいという面もあり

ます。


そのため、拙著の中では、何か所にも分け

て経営を解説することになってしまいまし

た。


このようなこだわりをもって書いたことか

ら、拙著は予想よりも速く売れているのだ

と分析しています。


と、ここまで長い前振りとなったのです

が、今回の記事の主旨は、なかなか説明が

むずかしい経営について、そのひとつの側

面を説明したいと思います。


経営者の方は、自社の業績を最大限にする

ことが役割と考えている方が多いと思いま

す。


このことは、一見、当然と思えるのです

が、では、最大限の業績とはどういうこと

でしょうか。


すべての役職員が全力を出し切って、得ら

れるであろう利益を、100%得ることで

しょうか?


例えば、ある会社で、売上を前年比5%増

で成長させるために、(違法にならない範

囲で)従業員の方に残業をさせていたとし

ます。


その結果、何とか、5%増は維持できてい

るとします。


では、この会社の経営者は、役割を十分に

果たしているといえるでしょうか?


売上増加という実績で見れば、経営者の采

配は正解と言えるでしょう。


でも、それと同時に、残業が多いことに

よって、従業員の士気が下がったり、定着

率が下がるリスクも増加します。


それが、近い将来、採用コストの増加、人

材育成のためのコストの増加、商品の品質

の低下による競争力の低下などで顕在化し

てくるでしょう。


そう考えた場合、売上の増加だけにこだわ

るよりも、5年~10年の長い目で、どう

することが利益を最大化するかという観点

で経営した方が、正解と言えるかもしれま

せん。


ここでは、長期的な視点で見ることが大切

という表現をしましたが、会社の経営資源

である、ひと・もの・かねはそれぞれ有限

であり、それらの制約のある中で、まず、

どのように経営資源の配分を調整するかと

いうことが、経営者の役割、すなわち、経

営ということであると私は考えています。


利益(かね)は、比較的、短期的な結果を

期待されがちですが、そのために従業員

(ひと)が犠牲になると、長期的な視点で

は悪影響を及ぼすことにもなります。


ここでは、売上と従業員の関係だけを例示

しましたが、実際には、もっと複雑な事情

が絡み合って、難しい判断を求められるこ

とでしょう。


経営者には、結果責任が求められますが、

だからといって、経営資源の配分を誤って

しまうとバランスが崩れ、事業が停止して

しまいます。


繰り返しになりますが、経営者には利益を

得るという責任は免れないものの、単に、

直接的に利益を追求するのではなく、社内

の利害を上手に調整(≒経営)することに

よってこそ、利益が得られることになると

考えることが妥当でしょう。

 

 

 

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経営者とコンサルタントの対立は望ましい

私は、労働問題専門の弁護士さんを何人か

知っているのですが、会社側につく方と、

従業員側につく方がいらっしゃいます。


それは、誰から受任をしたかということで

明確で、それぞれの委任者の利益のために

問題の解決を図ろうとします。


ところが、事業者向けのコンサルティング

の場合、依頼主がわかりにくい場合があり

ます。


例えば、事業再生のコンサルティングは、

コンサルタントは会社と契約し、報酬も会

社から支払われますが、実質的には、その

会社の株主である再生ファンドやその会社

を支援している銀行の意図に従って行われ

ます。


そのため、事業再生をする中で、社長の能

力が不足すると判断したときは、コンサル

タントが、社長の交代を株主に求める場合

もあり、実際に社長が交代することもあり

ます。


(事業再生をしている会社の社長は、事業

再生を行う前からの社長がそのまま就任し

ている場合や、再生ファンドから指名され

たターンアラウンドマネージャーなどが就

任している場合もあります)


コンサルタントが社長と対立することがあ

るというのは不思議な感じがしますが、会

社の最終的な責任者は株主なので、コンサ

ルタントの意見と株主の意見が一致すれば

社長が解任されることもあるわけです。


一方、一般的なオーナー会社の場合、社長

は大株主でもあるため、コンサルティング

も社長の意向に沿って行われます。


それでは、コンサルティングを受けている

オーナー会社で、コンサルタントと社長の

間で意見が対立した場合はどうなるでしょ

うか?


その場合は、コンサルタントが自ら顧問を

おりるか、社長がコンサルティング契約を

解除することになります。


もちろん、コンサルタントの力量が足りな

い場合や、方針の選定にあたってコンサル

タントが誤った判断をしている可能性もあ

るので、そのような時は、コンサルタント

と会社との関わりを断つことが正解という

ことになります。


ただ、私の経験から、コンサルタントと社

長の意見が対立する時というのは、社長側

が改善活動の継続に音を上げる時というこ

とが多いと感じています。


そのような場合、コンサルタントの方針が

正しいかどうかというよりは、社長の能力

の高さによって改善活動が停止してしまう

ことになります。


現実には、もっと複雑で、コンサルタント

と社長のどちらが正しいかというように、

明確に線引きができるものではなく、仮

に、社長の能力があまり高くないという場

合は、コンサルタント側にも、社長のキャ

パシティに応じて、実践しやすい改善方針

を提示することが求められます。


ただ、オーナー会社の場合、事業再生をし

ている会社と違って、社長の交代は選択肢

にありません。


解任されない限り、ずっとひとりの社長と

事業改善に取り組むことになります。


だからといって、私は、オーナー会社のコ

ンサルティングを行うことを否定的に考え

てはいません。


むしろ、やりがいがあると思っています。


正直なところ、事業経営において、経営者

の判断や、コンサルタントの判断は、事前

に100%正しいというものを出すことは

できません。


右に進むことが100%正しく、同時に、

左に進むことが100%正しいということ

もあります。


逆に、右に進むことが100%間違いであ

ると同時に、左に進むことも100%間違

いということもあります。


問題なのは、結果は、後からわかることな

ので、結果がどうかよりも、事前にどれだ

け検討を尽くしたかということが大切にな

ります。


そういった議論を、経営者とコンサルタン

トの間で行うことは、とても意義があると

思います。


むしろ、コンサルタントが経営者の解任を

選択肢に入れているというのは、専制的で

あり、判断も誤りやすくなると思っていま

す。


(念のために付言すると、事業再生のよう

な、期間が区切られている関与の場合は、

経営者の変更がやむを得ない場合もあるの

で、経営者の変更そのことを否定するとい

うことではありません)


ちょっと、変なまとめなのですが、社長が

ひとりで何でも決めたり、逆に、コンサル

タントが何でも会社に指示したりというこ

とではなく、両社で大いに議論していくと

いうことが、経営者の方の経営センスを、

より研ぎ澄まされたものにしていくものだ

と私は考えています。


そして、経営コンサルタントは、何でも社

長のいいなりになったり、逆に、何でも口

出しをしたりするのではなく、社長の議論

の相手となって、社長のセンスを高めてい

くことが、大きな役割のひとつであると思

います。

 

 

 

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