鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

パー100

先日、作家の本田健さんのポッドキャスト

を聴きました。


(ご参考→ https://goo.gl/uRmP8N


番組の中で、リスナーの方からの「目標を

立てたものの、達成できそうにないと感じ

たときに、どうすれば意識を持ち直すこと

がでるでしょうか」という質問について、

本田さんは、次のように回答しておられま

した。


すなわち、目標を達成するまでの活動をゴ

ルフに例えれば、必ずしもホールインワン

や、パーでホールアウトする必要はない。


100回打っても、ボールをカップに入れ

ればよい。


1打や数打だけでボールがカップに入ると

思わない方がよい。


目標の達成とは、何度も打ち方を変えるこ

とを繰り返して達成できると思えばよい、

ということでした。


このご指摘に、私も心あたりのあることが

あります。


というのは、本田さんもご指摘されておら

れる通り、ビジネスの目標は、ほんの一握

りのスタープレーヤーのように、最短距離

で達成できるとは限りません。


むしろ、少し進んでは修正し、それを繰り

返しながらやっとゴールにたどりつくとい

う方がほとんどです。


しかし、多くの方は、その修正を繰り返す

ということを避けたがります。


その理由は、恐らく、目標を達成するとい

うよりは、「スタープレーヤー」になるこ

とが目的であったり、仮に修正しながら目

標にたどりつくという過程が必要だと理解

していても、それは数回ですませたいと考

えているからだと私は分析しています。


私は「経営とはPDCAサイクルを回すこ

と」とかねてから述べていますが、正に、

それは、本田さんのご指摘の通り、ボール

を100回打って(数多くの修正を繰り返

して)カップに入れるような作業です。


でも、「経営者はそんな地味な活動ではな

く、パーでホールアウトできなければなら

ない」と考える人が圧倒的に多いと私は感

じています。


そのような人は、「経営」を表面的にしか

理解していない人ではないかと思います。


ですから、パーでホールアウトできること

だけを目指すより、ボールを100回打っ

てでもカップにボールを入れる方が、近道

だと私は考えます。


そして、最初からパーでホールアウトでき

ない人であっても、回数にこだわらずに

ホールアウトすることを繰り返していけ

ば、遠くない将来、パーでホールアウトで

きる能力を身に着けた経営者にもなること

ができるのではないでしょうか?

 

 

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信用保証制度の変更

4月1日から、信用補完制度(信用保証協

会の保証業務)が変更になります。


(ご参考→ https://goo.gl/NP5sFJ


今回の変更で注目されていることは、「信

用保証協会と金融機関の連携」でしょう。


これは直接的には記載されていませんが、

ひとことで言えば、信用保証協会の負担を

減らすということです。


それは、次の文から読み取ることができま

す。


「信用保証への過度な依存が進んでしまう

と、金融機関にとっては、事業性評価融資

やその後の期中管理・経営支援への動機が

失われるおそれがあるとともに、中小企業

にとっても資金調達が容易になることか

ら、かえって経営改善への意欲が失われる

といった副作用も指摘がされており、こう

した副作用を抑制しつつ、中小企業の経営

改善や生産性向上を一層進めていくための

仕組みを構築することが必要です。


こうした考えの下で、信用保証協会と金融

機関との連携を法律上に位置づけ、中小企

業のそれぞれの実態に応じて、プロパー融

資(信用保証なしの融資)と信用保証付き融

資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金

融機関が柔軟にリスク分担を行っていくべ

く、信用保証協会と金融機関との間で更な

る連携を図ります。


また、実効性を担保するため、信用保証協

会向けの監督指針にもリスク分担について

明記し、各信用保証協会・各金融機関のプ

ロパー融資の状況等について情報開示(見

える化)を行うとともに、今般の改正趣旨

が現場レベルで浸透しているかという視点

からのモニタリングを行います」


よって、今回の変更は、将来、信用保証協

会の負担を減らすための、初めのステップ

と考えることができます。


したがって、4月から、融資の受け方に関

して中小企業が受ける影響は少ないもの

の、将来に備えて準備をしておかなければ

ならないということに間違いはないでしょ

う。


では、なぜこのようなことが行われるので

しょうか?


それは、前出の引用文にもある通り、金融

機関が融資業務について、信用保証協会に

依存的になっている部分があり、それを解

消したいと当局が考えているからです。


依存的になっている部分とは、いくつかあ

るのですが、そのひとつは、金融機関が貸

倒リスクを信用保証協会に「丸投げ」しよ

うとしていることです。


これは、信用保証協会が保証した融資につ

いては、融資先が返済不能になっても、信

用保証協会がそれを肩代わりしてくれると

いう機能もありますが、もうひとつの動機

は、金融機関が自己資本比率を高くしたい

という思惑もあります。


それは、次の式を見ていただければご理解

いただけると思います。


自己資本比率=純資産/総資産


金融機関が融資を増やせば、分母の総資産

が増えるので、自己資本比率が低くなって

しまいます。


金融機関は健全さを示すために、自己資本

比率は高くしたいという思いがあるため、

業績のよくない相手には融資を避けたいと

いう思惑が働きます。


しかし、信用保証協会の保証のある融資に

ついては、自己資本比率の計算のときに、

総資産からその融資額を差し引くことがで

きることになっています。


したがって、信用保証協会の保証のある融

資を増やしても、自己資本比率には影響し

ないという効果があることも、金融機関が

融資に対して信用保証協会の保証をつけよ

うとする動機になっています。


もうひとつの信用保証協会に依存的な理由

を挙げると、融資審査を信用保証協会に

「丸投げ」しようとする思惑もあります。


これは、融資審査が得意な人材が少ない、

比較的規模の小さな金融機関にこのような

傾向が高いようです。


このような金融機関は、「信用保証協会に

保証の審査をしてもらい、その結果、保証

の承認が得られれば融資をするが、保証を

しれもらえなければ融資をしない」という

審査の丸投げをしがちです。


主に以上の2点が、今回の信用補完制度の

改定の背景にあると私は考えています。


したがって、今後、どのような対策が必要

かというと、ひとつめは、融資審査を信用

保証協会にあまり依存しない金融機関を探

し、その金融機関との関係を強化すること

です。


ふたつめは、融資を受けやすくする基本的

な対策と変わりませんが、財務状況の改善

や、情報開示を積極的に行うということで

す。


そして、前出の引用文にあるように、「中

小企業にとっても資金調達が容易になるこ

とから、かえって経営改善への意欲が失わ

れるといった副作用」が現れている会社で

あると、信用保証協会から判断されないよ

うにしなければなりません。

 

 

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啐啄同時

禅宗の有名な教えに啐啄同時(そったくど

うじ)というものがあります。


(ご参考→ https://goo.gl/yRdb9u


このことばはすでに多くの方がご存知と思

いますが、あらためて簡単に説明すると、

鶏の雛が卵から出ようとしているときに、

殻の中から卵の殻をつつくタイミングと、

親鳥が外から殻をついばむタイミングが同

時であると、卵の殻がうまく割れて、雛が

卵の中から出ることができるということか

ら、師弟の関係においても、手を差し出す

側と手を伸べる側の意思がかみ合うと、よ

い結果が得られる例えとしてを示されるも

のです。


ここで、今回の記事の結論が分かると思い

ますが、コンサルタントだけががんばって

も、コンサルティングを受ける側に、会社

をよくしようという意思がなければ、よい

結果が出ないということです。


このように書くと、上から目線のように受

け止められてしまうかもしれませんが、私

コンサルタントからコンサルティング

受けていて、計画通りに自分の構想を実現

できておらず、自分にも当てはまることだ

と感じています。


私にお手伝いを依頼してくる経営者の方の

多くも、当然のことながら、自社を改善し

たいと望んでいます。


しかし、それがうまく実現しないとき、そ

の要因のひとつとして、会社をよくするた

めの準備や体制が十分でないということが

多いと感じています。


これも多くの方がご理解されていることで

はありますが、事業をよくしようとすると

きは、いままでと同じことをしていては、

改善はできません。


私の場合は早起きをして、その時間を改善

活動にあてたり、新しい知識を得るための

勉強をしたりします。


ところが、このちょっとしたことがなかな

かできないので、頭では会社をよくしたい

と願いつつも、いつまでも会社はかわらな

いでいるということは珍しくありません。


そのような時、これは少ない例ですが、

コンサルタントを雇ったのに、何も改善

しなかった」という不満を口にする方もい

ます。


話はそれますが、私が事業改善のお手伝い

を始めるときは、その相手の方には「事業

を変えるのは、コンサルタントではなく、

あなたです。


私は、事業を改善しようとするあなたを

しっかりお手伝いさせていただきます」と

お話しして、ご理解いただけた時にお手伝

いをお引き受けしています。


ただ、残念ながら、そのうちの何割かは、

従来のお仕事のやり方を変えられず、事業

改善も望めないことから、お手伝いを辞め

ることになることもあります。


話を戻して、冒頭で述べた通り、事業改善

は、他者に改善してもらうのではなく、自

らが主体的に臨まなければならないという

ことが、今回の記事の結論です。


これは至極当然のことなのですが、私も含

めて忘れられがちなことなので、今回の記

事に取り上げました。

 

 

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経理規定で透明性を高める

これは、知り合いの経営者から聞いたお話

です。


ある決算期に顧問税理士から届いた決算書

を見たら、役員貸付金が数百万円になって

いた。


その要因は、社長が会社の経費となると認

識して支出していたものが、決算の段階で

税理士の方が経費にならないと判断したも

のを役員貸付金として計上していた。


もし、こんな金額になるのであれば、決算

を過ぎてから、勝手に役員貸付金として処

理するのではなく、その都度指摘して欲し

かった。


また、もし、その都度指摘してもらう機会

があれば、こちらの言い分を税理士の方が

理解してくれて、経費になったものもある

と思う、というものでした。


そして、その経営者の方は、役員貸付金を

減らすために、毎月、役員報酬から一部を

役員貸付金の減額に充てているということ

でした。


このようなことになった最終的な責任は、

経営者自身にあると私は思います。


しかし、私が、会社をご支援する同じ専門

家として感じることは、もし、私の顧問先

から同じような不満を持たれたら、それは

専門家として、恥ずかしいと感じることで

しょう。


経営者の方は、経費にならないものを会社

の経費として支出してしまうことがある可

能性があることは十分に予見できるわけで

すから、そうであれば、事前にそれを防ぐ

よう助言する機会はあったはずです。


決算においても、経費にならないと思われ

た支出を役員貸付金として計上するという

結果だけを事後的に伝えるということも、

さらに不満を感じさせてしまうことになり

ます。


このような、あまり親切でない税理士の方

は、私の知っている税理士の方の中にはい

ませんし、極一部の方だと思いますが、機

械的な対応をされた顧問先の会社は、事業

に悪い影響が出ることになると思います。


このようなことを防ぐには、経理規定を作

ることです。


経理規定によって、どのような支出が会社

の経費になるかが明確になります。


ただ、経理規定を作っても、人によって解

釈が異なる場合もあるので、100%正し

経理ができるようになるわけではありま

せんが、前述の経営者の方のような不満は

なくなるでしょう。


また、経理規定があれば、従業員の方から

見ても、会社の支出の透明性が高まり、不

公平感がなくなるという効果があります。


ちなみに、経理規定についてではありませ

んが、ルールの大切さについて、以前、社

会保険労務士・行政書士の寺内正樹先生に

ポッドキャストでお話しいただいておりま

すので、ご関心のある方は、寺内先生のお

話もお聴きいただければと思います。


(ご参考→ https://goo.gl/1V7rHa


今回の記事の結論は、効率的な組織運営に

は、ルールが欠かせないということです。


会社経営において経営者の方が労力を割く

多くの部分は、組織運営です。


会社が創業して間もない時期は、経営者と

従業員の間では阿吽の呼吸で組織がまわり

ますが、組織が大きくなにつれて、それで

は組織がまわらなくなります。


そうなるときに備えて、早い段階でルール

を作っておくことをお薦めします。


もちろん、私が事業改善のお手伝いをする

ときは、このルール作りを最初のステップ

にしています。

 

 

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付加価値にこだわる

会社の赤字の原因の多くは、粗利益(≒付

加価値)が少ないことです。


(ちなみに、粗利益の少なさ以外で赤字に

なる原因としては、過剰設備、不良在庫の

発生、回収不能債権をかかえるというもの

があります)


仕入れた商品に、十分な付加価値を加えた

金額で販売ができなければ、人件費、設備

費などの固定的な経費に充てることができ

ずに、事業は赤字になります。


これは会計的な観点ですが、経営的な観点

からは、赤字の事業は顧客から価値が少な

い商品を提供している事業と判断されてい

ることであり、それは意味のない事業とい

うことができます。


そして、このような事業を営んでいる経営

者の多くは、「競争が厳しいので、この価

格でしか商品を売れない」という言葉を口

にします。


これは、その会社がおかれている経営環境

を伝えているとは思うのですが、私は、そ

れはあまり意味のない言葉であると思って

います。


ここからは、上から目線のように思われる

ことをご容赦いただきたいのですが、経営

環境が厳しい中で事業を行っている限りで

は、消耗戦になってしまうことは至極当然

です。


だから、「競争が厳しいので、この価格で

しか商品を売れない」という説明は事実な

のですが、この言葉からは改善の手がかり

はほとんど得られません。


ただし、ひとつだけ得られる手がかりがが

あり、それは、血みどろの戦いが行われて

いるレッドオーシャンから、競争相手のい

ないブルーオーシャンに、自社の事業を移

すということです。


すなわち、事業展開する場所(顧客、商

品など)を変えるということです。


それをしないで、「競争が厳しいので、こ

の価格でしか商品を売れない」と口にする

ことしかしないのであれば、事業はますま

す先細っていくだけです。


とはいえ、「レッドオーシャンからブルー

オーシャンに移ることは、口で言うほどや

さしくない」と考える方が圧倒的に多いと

思います。


正直、私もそう思っています。


ただし、事業の場所を変えるといっても、

お店を隣町に移すというような物理的な移

転や、商品を変えるといっても、酒店がコ

ンビニエンスストアに変わるというような

業種の変更だけではありません。


たとえば、以前もご紹介しましたが、プロ

野球チームの横浜DeNAは、従来は、売

上をあげるには、試合に勝つことと考えて

いたものの、球場で応援を楽しんでもらう

ことでファン(顧客)の満足は高まると考

えて、球場の座席をチームカラーにする、

グラウンドにせりだしたエキサイティング

シートを設けるといった工夫を行ったこと

で、チームの成績は5~6位であっても

単年度黒字にしたという例もあります。


すなわち、プロ野球球団という事業であり

ながら、「商品」の定義を、「試合に勝つ

こと」から、「ファンに応援を楽しんでも

らうこと」に変えることで、事業領域をブ

ルーオーシャンに移すことができたと、私

は考えています。


(ご参考→ https://goo.gl/FiKUtH


もうひとつ例を挙げると、仙台市の郊外の

温泉で有名な秋保にある、スーパーマー

ケットの「主婦の店さいち」では、店舗面

積約80坪だけで、年間約6億円を売り上

げており、1日約5,000個売れている

おはぎだけで、その売上の約半分を占めて

いるそうです。


業種としてはスーパーマーケットなのです

が、なぜ、このお店が約6億円の年商があ

るかといえば、おはぎなどの総菜の作り方

や、それを製造するパートの主婦の教育法

です。


このお店では、ライバルは「家庭の味」と

考えており、いわゆる「既製品」でない味

を求める人たちに支持されています。


(ご参考→ https://goo.gl/BFoYtn


ここまで例を2つ示しましたが、話を戻す

と、「競争が厳しいので、この価格でしか

商品を売れない」という状況であれば、付

加価値を認めてもらえる事業を行うべきで

あり、それは、必ずしも、設備の新調や、

場所の移転など、物理的な変更をともなわ

ないで行うこともできるということです。


そして、実は、これも口で言うほどやさし

いことではありません。


詳細は割愛しますが、事業にたずさわる人

たちの考え方を変えたり、スキルを高めた

りすることの方が、いわゆる業種転換など

よりずっと難しいでしょう。


だからこそ、そこに経営者の手腕が問われ

ていると私は考えています。

 

 

 

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(注:写真と本文は関係ありません)

貸借対照表は連続している

簿記を習った人には常識なのですが、貸借

対照表は連続しているということは、意外

と知られていないようです。


ここで、わざわざ、「貸借対照表が連続し

ている」と述べているということは、損益

計算書は連続していないということでもあ

ります。


損益計算書は、会計期間の最初の日に、前

期の数値は引き継がずに、すべての科目の

残高が0になり、その日から改めて、収益

と費用の科目の金額が会計期間の末日まで

積み上げられて行きます。


そこで、損益計算書には、欄外に「自●●

年●●月●●日~至〇〇年〇〇月〇〇日」

と、それぞれの科目の積み上げられた期間

が示されています。


そして、決算日には、収益の科目の金額の

合計額と、費用の科目の合計額の差額が計

算され、それが次期繰越金として、貸借対

照表の純資産の部に加えられます。


(その会計期間が赤字の時は、次期繰越金

がマイナスになり、その分が、純資産の部

から減額されます)


一方、貸借対照表は、会計期間の最初の日

に、すべての科目が、前期の数値を引き継

ぎます。


そして、すべての科目に、会計期間中の増

加や減少が反映されたものが、決算日にそ

の期の貸借対照表となります。


貸借対照表の数字は、期間中の増減が反映

されているとはいえ、決算日時点の会社の

資産などの状態を表しているため、欄外に

は、「〇〇年〇〇月〇〇日」と、決算日の

日付「のみ」が示されるところが、損益計

算書と対照的です。


ここまでの説明は、会社のもうけは、毎期

数値がリセットされる損益計算書で計算さ

れ、そのもうけは、前期の数値を引き継ぐ

貸借対照表に加えられるということの説明

でした。


すなわち、貸借対照表が示す会社の資産

は、毎期毎期大きくなっていくということ

です。

(会社が赤字の場合は、貸借対照表は、逆

に小さくなります)


ここで、やっと本題に入ります。


私が銀行で働いていたときに、融資先から

決算書をいただいたときに、最初に確認す

ることは、前回いただいた決算書と、今回

いただいた決算書が連続しているかという

ことです。


正確さを犠牲にして、分かりやすく書け

ば、損益計算書の今期の利益を、前期の純

資産の部に加えた金額が、今期の純資産の

部の金額になっているかということを確認

します。


これは、前述の説明から見れば、そうなる

ことは当たり前なのですが、金額が合わな

い決算書を何度か見ることがありました。


そのような決算書を見た時は、会社の方に

その旨をお伝えして、正しいものを提出す

るようにお願いします。


また、金額が合わない決算書をその場で気

づかずに、後になって気づくと、上司に叱

られてしまいます。


ちなみに、なぜ金額が合わない決算書が作

成されるのかというと、それは、粉飾をし

ているからです。


具体的には、繰越損失(繰越利益がマイナ

スになっている状態)のある会社が、その

繰越損失を減らし、その分、何らかの実態

のない資産を増やします。


ただ、ここで、どうして銀行に分かってし

まうような粉飾が行われるのだろうとお考

えになる方が多いと思います。


これは、私は直接確かめたことはないので

すが、複数の方から聞いた話を総合する

と、税理士の方が顧問先の社長に詳しいこ

とは知らせずに、銀行から融資を受けやす

い決算書にしようとして、繰越損失を減ら

すという、よくない「気遣い」をしている

ということのようです。


このようなことをする税理士の方は極一部

だと私は考えていますが、この程度の粉飾

では銀行にはわからないだろうと考えてい

る方もいらっしゃるようです。


誰がなぜ連続しない貸借対照表を作るのか

ということはさておき、経営者の方は、ぜ

ひ、いちど自社の貸借対照表が連続してい

るということを確かめてみることをお薦め

します。


このような確認をすることは、会計に関心

を持つためのひとつのきっかけになると私

は考えています。

 

 

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在庫管理は経営判断

私が初めて出版した本のテーマは在庫管理

( http://amzn.to/AseBrq )でした。


そして、先日、九州大学大学院の星野裕志

教授が、ポッドキャスト番組で、たまたま

在庫管理についてお話されておられまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/NkyxoW


星野先生のお話の概要は、「在庫を持たな

いようにするには受注してから製品を製造

すればよいが、ビジネスチャンスを活かす

には、見込で生産しなければならない。


そこで、実際には、経営者がどのようなタ

イミングで製品を製造するのかという判断

がポイントになる。


例えば、この冬は、女性の履くブーツが例

年より流行しておらず、ブーツの見込み生

産をしていた製造業の経営者は頭を抱えて

いると思う」、というものです。


在庫管理のテクニックとしては、リードタ

イム(受注してから納品するまでの期間)

を情報技術などにより短くする手法や、

ビッグデータなどから需要予測を精緻化す

るなど、ある程度効率化できます。


しかし、効率化=利益の最大化ではないと

ことろが、この在庫管理の難しいところで

す。


そこで、最終的には、利益を最大化する在

庫管理とは、経営者の判断の的確さという

ことになります。


適切な在庫管理の手法というと、どうやっ

て不要な在庫を減らすかといって、戦術に

目が行きがちですが、実は、それよりも、

経営判断が大切です。


私が冒頭で触れた本を書いていたときも、

このことを読者の方に理解してもらいたい

と思いから、懸命になって原稿を書いてい

たことを、星野先生のお話を聴きながら思

い出しました。


ここで、もう少し深く在庫管理について言

及すると、実は、前述の経営判断も、どれ

が正しくてどれが誤っているということ

は、明確にすることが難しいということも

言えます。


例えば、同じパソコンでも、価格の安さよ

りも店頭で見てその場で買うことを優先し

たいという人もいるし、納品まで時間がか

かっても価格の安さを優先したいという人

もいます。


国内のパソコンメーカーでは、両方の需要

を取り込もうとして、見込生産と受注生産

の両方を行っている会社もあります。


結論としては、何の経営判断もせずに、単

に成り行きで在庫を決めるのではなく、何

らかの経営判断をして、それがよい結果に

結びついたかどうかということを検証しな

がら、自社の利益が最大化する方法を見つ

け出すという、PDCAサイクルを回すこ

とが大切だということです。

 

 

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