鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報発信の目的

私はブログやメールマガジンなどで、情報

発信を続けているのですが、それは、経営

コンサルタントの一圓克彦さんの薦めが

あったからです。


一圓さんも、すでに3年間、情報発信を続

けています。


(ご参考→ https://goo.gl/UanqfK


そして、先日、機会があって、一圓さんの

ブログセミナーを聴いてきました。


ブログセミナーといえば、どのような書き

方をすればよいのか、どういう内容がよい

のかということをお話しすると思います。


もちろん、一圓さんはそれらのことをお話

しされましたが、それらの優先順位は2位

以下です。


いちばん大切なことは、前述の一圓さんの

ブログにも書いてありますが、「情報発信

の『目的=ゴール』を決めること」という

ことだそうです。


そして、「ゴールが明確だと、昨晩の私が

そうだったように、(『きょうくらいは、

さぼってもいいんじゃないの?』という悪

魔のささやきと戦うというような)多少の

苦労は厭わなくなる」そうです。


これは、目的と手段を取り違えるなという

ご指摘だと思います。


このことは多くの方が理解されると思いま

すが、コンサルタントとして私が関わって

来た人たちを見ると、残念ながら、目的と

手段を取り違えている人は少なくないよう

です。


その典型例は、「会社を設立したから(=

社長になったから)、事業がうまくいく」

という考えている人です。


冷静に考えれば、会社の設立はスタート地

点に立っただけのことであり、その後の事

業がうまくいくかどうかは、どのように事

業運営をするかにかかっているわけなので

すが、会社設立をゴールのように考えてし

まう人も珍しくありません。


会社設立は、事業に成功する手段のひとつ

にすぎず、会社設立を目的と取り違えてし

まえば、事業はうまくいくはずはありませ

ん。


情報発信も、見込み客を増やしたり、露出

を増やしたりといった目的がほかにあっ

て、その手段が情報発信です。


単純に「コンサルタントから情報発信をす

れば売上が増えると教えられた」というよ

うな、受け身で臨んでいれば、長続きもし

ないであろうし、よい情報発信もできない

でしょう。


一圓さんのいうように、目的を明確にして

いれば、能動的に情報発信に取り組むこと

ができるし、その情報発信の内容も、読む

側から見てよりよいものとなり、効果が高

くなっていくでしょう。


ところで、私がこのように述べるまでもな

く、「そんなこと、わかっている」と思う

方は多いと思います。


でも、一圓さんがあえてお話しするくらい

実践できている人は多くないようです。


そして、その原因はなにかということが、

今回の記事の結論です。


これは、私の分析ですが、目的と手段を取

り違える人は、意思決定することを避けて

いるのだと思います。


意思決定を避ける理由は、仮に事業がうま

くいかなかったとき、意思決定をした自分

に責任があるということになるからで、無

意識にその責任から逃れようとしているの

でしょう。


ある意味、自社の事業がうまくいかないと

きに、それが自分の責任でないとすれば、

それは気楽かもしれません。


でも、事業の結果に責任を持たなくてよい

経営者というのは、「楽」であっても、果

たして「楽しい」でしょうか?


なぜなら、自分が何をすればよいのかとい

うことは、他人にいちいち許可を求めなけ

ればなりません。


例えば、事業の運営にあたっては、コンサ

ルタントなどに何をすればよいか判断を求

めることになり、自分の意思を事業に反映

させることができません。


そして、事業が失敗したときも自分の責任

にはなりませんが、事業が成功したときも

自分の手柄にはなりません。


事業運営について経営者の方が、他者から

アイディアや助言をきくことに問題はない

し、むしろそうすることの方が望ましいわ

けですが、いったんそれを受け入れるので

あれば、その結果は、それを受け入れた経

営者の責任です。


そう考えれば、自分の意思決定の結果につ

いても、何としてでもよいものとしようと

懸命に取り組むでしょう。


情報発信が続かない人は、自分で自分のこ

とを決めていない人であると私は考えてい

ます。

 

 

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出されなかった手紙

米国の作家のカーネギーの著書「人を動か

す」( http://amzn.to/2FmjtnH )を読みま

した。


カーネギーはベストセラー作家として有名

ですので、この本を読んだ人は多いと思い

ますが、その本の中に、リーダーシップに

ついて考えさせられるお話しが書いてあっ

たので、ご紹介したいと思います。


それは、カーネギーが10年間研究をして

その成果を著書にもしている、第16代米

国大統領のリンカーンに関することです。


南北戦争の激戦となった、ゲティスバーグ

の戦いのとき、南軍のリー将軍は、嵐の中

で敗走を始めました。


しかし、その途上で、増水していたポト

マック川があり、リー将軍は、そこで足止

めせざるを得ませんでした。


そこで、リンカーンは作戦会議を開くこと

を省いて直ちに攻撃命令を出し、それを電

報と特使を使って、北軍を指揮するミード

将軍に伝えました。


しかし、ミード将軍はリンカーンの意図に

反して作戦会議を招集し、かつ、言い訳を

並べて、いつまでもリンカーンの命令を実

行に移しませんでした。


その結果、やがてポトマック川の水位は下

がり、リー将軍は逃走してしまいました。


これは、単に北軍が勝てる機会を逃しただ

けでなく、リー将軍をとらえて戦争を終結

させようとするリンカーンの思いも実現で

きなくなったことを意味します。


これに対して、普段から節度を保っている

リンカーンも、大きな失望をし、ミード将

軍あてに、「あなたにもう期待はしない。

絶好のチャンスを失った。私の苦悩は図り

しれない」という手紙を書きました。


しかし、この手紙はミード将軍へは届けら

れなかったようです。


というのは、この手紙はリンカーンの死後

に、遺品の中から見つかったそうです。


これについて、カーネギーは、次のように

リンカーンの心を推し量っています。


すなわち、ミード将軍の立場とすれば、毎

日、血を流している部下を見ていて、これ

以上、流血することは避けたいと考えてい

たのだろう。


さらに、リンカーンの手紙をミード将軍が

読めば、単にリンカーンのことを恨むだけ

だろう、このようにリンカーンは考えて、

ミード将軍への手紙を書いただけで、出す

ことはしなかったというものです。


このリンカーンのお話しは、批判はだれで

もできることであり、愚かな行為だ。


そして、批判することによって、その相手

から恨まれ、自分の成し遂げようとするこ

との障害になることもある。


一方、賢明で偉大な人は、批判をせずに相

手を理解し、人から恨まれないようにする

結果、偉大なことも成し遂げることができ

るようになるということを、カーネギー

伝えたいと考えて取り上げたようです。


このカーネギーの考えは、まったくその通

りだと思いますが、さらに、私は、リー

ダーがどうあるべきかを考えるよい事例に

なっていると思います。


ここで、ひとつお断りさせていただくと、

ミード将軍がリンカーンの命令に従わな

かったことが正しかったかどうかというこ

とについては、ここでは論じることができ

ないという前提でお話を進めます。


この分野は、私は責任をもってお話しする

ことができませんが、ミード将軍がリン

カーンの指示に従っていれば戦争が早く終

結できたと考えることもできるし、逆に、

ミード将軍がリンカーンに従わなかったこ

とで、北軍の被害を少なくすることができ

たと考えることもできます。


要は、何が正しいかということは、何を基

準にするかによって変わるということで

す。


話を戻して、リーダーの命令は絶対という

タイプのリーダーシップもあるし、また、

可能な限り現場に権限を委譲するというタ

イプのリーダーシップもあります。


そして、そのどれが適しているかというこ

とは、組織の構成員の能力によります。


構成員の能力が低い場合は、前者のような

リーダーシップが適しているし、その逆の

場合は後者のようなリーダーシップが適し

ています。


では、目指すべき組織の状態とリーダー

シップはどういうものかというと、組織の

構成員の能力が高く、そして、権限ができ

るだけ現場に委譲されている状態でしょ

う。


これを別な言い方をすると、多くのことに

ついてリーダーの指示通りに動いている組

織というのは、一見、統率が取れているよ

うで、ある意味、リーダーの単独の考えで

動いているということです。


逆に、現場がリーダーに必ずしも従わない

組織というのは、その現場の判断が正しい

かどうかはさておき、組織全体で活動して

いる組織といえるでしょう。


そして、そのような組織のリーダーは、前

述のリンカーンのように、現場からの反発

によって苦しむこともありますが、ある意

味、それは、優れた組織の一面でもあると

私は考えています。


そして、そのような組織のリーダーは、単

に命令を出せばよいという単純な役割を担

えばよいというわけにはいきません。


能力の高い組織は、それだけリーダーの能

力も資質も高いものを求められるというこ

とが今回の結論です。


繰り返しになりますが、部下は社長の指示

に従いさえすればよいという考えの社長の

経営している会社は、組織としての成果は

あまり大きくない状態だといえるでしょ

う。

 

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社長は誰にも怒られない

「社長は誰にも怒られない」と書くと、

「それじゃ、コンサルタントに怒ってもら

えということか」という結論がすぐにお分

かりになると思います。


今回の記事の結論は、確かにその通りなの

ですが、コンサルタントの役割という観点

から述べたいと思います。


ところで、コンサルタントの役割とはどう

いうことが考えられるでしょうか?


これには定義があるわけではないので、正

解というものはないのですが、多くの方

は、どうすれば事業がうまく行くかという

方法を考えて、それを顧問先に助言すると

いう役割を思い浮かべるでしょう。


私もかつてはこのように考えていたのです

が、実際にコンサルタントになってみてか

らは、この役割の比重はあまり高くないと

いうことに気づきました。


では、どういった役割が求められているの

かというと、なかなか社長がひとりでは気

づかないことを、部外者の立場から指摘す

るということと、社長の仕事が遅れないよ

う動機づけを行うということです。


よく、経営者は孤独と言われていますが、

それは、何らかの決断をすることが役割の

人にとっては避けられないものです。


それでも、コンサルタントのような立場に

ある人は、より客観的な観点からの助言を

行い、経営者の意思決定を支援することが

できます。


また、どのような人でも意思決定は独り善

がりになりがちですが、それを避けるため

にも、部外者であるコンサルタントの支援

が役立ちます。


要は、コンサルタントは「答えを教える」

ということよりも、顧問先の経営者との関

わりの中で、「あるべき方向に向いてもら

う」よう働きかける役割(この中には、上

から目線で恐縮ですが、「経営者を怒る」

ということも含まれるでしょう)の方が大

きいということです。


と、ここまで特に真新しいことではないこ

とを書きましたが、実は、このことは、私

自身が他者からコンサルティングを受ける

中で実感してきたことです。


もし、私がコンサルティングを受けていな

ければ、意思の弱い自分はもっと仕事が遅

くなったであろうし、ひとりで考えた結論

よりも、他者からの目線でも検討した、よ

りよい結論を導き出せなかったかもしれま

せん。


そして、その私が受けているコンサルティ

ングとは、日報コンサルティングです。


(ご参考→ https://goo.gl/XVUhr2


そして、この日報コンサルティングを広め

ているメンバーのひとりである一圓克彦さ

んが、先日配信された、一圓さんのポッド

キャスト番組で、次のようにお話しされて

おられました。


(ご参考→ https://goo.gl/pbm8db


すなわち、「経営者のことを怒る人はだれ

もいない。


だから、ついつい仕事を先延ばしにしてし

まいがちだ。


そこで、毎日、経営者に日報を書いてもら

い、『日報コンサルタント』がその日報に

励ましの言葉や助言などを書いて送り返す

ことで、経営者が意識を変えるように働き

かけていく。


そうすると、わずかな変化でも、それを毎

日積み重ねていくことによって、やがて大

きな変化となり、それが業績向上という結

果となって現れる」というものです。


冒頭にも述べましたが、改めて今回の結論

を書くと、日報コンサルティングの事例か

らも分かる通り、経営者も生身の人間であ

ることから、常に正しい判断を行ったり、

当初の意思を貫き通したりすることは難し

いので、経営コンサルタントなどの外部の

力を借りることが賢明ということです。


ちなみに、日報コンサルティングにご関心

があるという方は、こちらからお問い合わ

せいただければと思います。

http://yuushi-zaimu.net/contact/

 

 

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デザインレビュー

先日、中小企業診断士の神谷俊彦先生にお

会いし、神谷先生のご著書「生産管理の実

務と問題解決徹底ガイド」の内容について

インタビューしてきました。


(ご参考→ http://amzn.to/2Dox39z


生産管理という言葉から、対象の業種が製

造業であるという印象を受けるかもしれま

せんが、決して製造業にとどまることな

く、流通業、サービス業にもあてはまる内

容の本です。


そして、やはり生産管理という言葉から、

現場の改善が対象という印象を持たれると

思いますが、必ずしも現場の改善だけでよ

い製品が生産できるわけではなく、経営者

の役割と現場との関わり方についても言及

されています。


むしろ、現在は、経営者の役割の方の重要

性が高まりつつあります。


そして、その経営者と現場との関わりにつ

いては、いくつものポイントがあるのです

が、今回はその中からデザインレビュー

( Design Review , DR , 設計審査)に

ついて述べたいと思います。


DRは、製造業の方にはなじみのある言葉

かもしれません。


製品を受注したときに、依頼に基づいて、

その詳細はどのようにするか、どれくらい

のコストをかけるか、生産に関して誰が何

を担当するかということなどを決める会議

がDRです。


まったく同一ではありませんが、製造業以

外でも同様のことが行われていると思いま

す。


例えば、要件定義とか、意思統一会議、方

針決定会議というものがこれに該当するで

しょうす。


これをひとことで言えば、現場に関わる人

たちのベクトルを揃えるということです。


そして、今回の結論は、このベクトルを揃

えることが、実はとても大切ということで

す。


なぜ大切なのかということについては、こ

れもたくさんの理由があります。


もし、DRが行われなかったり、一部の人

だけでDRが行われてしまうと、製品の設

計の段階で欠陥があったときにそれを気づ

きにくくなるということが挙げられます。


また、実際に作業でも、現場の方は言われ

た通りに受動的に作業をしているという状

態になり、チームワークが発揮されなかっ

たり、ミスが発生したときに責任の押し付

け合いになってしまいます。


さらに、一部の人だけ(経営者だけ)が分

かっていればいいという状態で製品づくり

が行われるよりも、全員が関わって製品づ

くりが行われる方が、よりよい製品ができ

あがったり、より効率的な工程で製造でき

るようになるでしょう。


すなわち、ベクトルを揃えるということは

面倒なように思えますが、競争力の高い製

品づくりには大切なプロセスだということ

です。


もし、自社製品がなかなかよくならないと

悩んでいる経営者の方は、このDRを実践

してみたり、すでにDRを実践している場

合は、そのやり方を工夫してみることをお

薦めします。

 

 

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道筋が見えなければ成功できない

私の事務所の近所には、宝くじの1等の当

せん者がたくさん誕生していることで有名

な、西銀座チャンスセンターがあり、ジャ

ンボ宝くじの発売が始まると、そこには長

蛇の列ができます。


日によっては、数時間待ちの列ができるく

らいですので、宝くじの人気の高さが伝わ

ります。


実は、私の知り合いの経営者の方で、毎

回、宝くじを10万円分以上購入する人が

います。


その方の経営する会社は業況があまり芳し

くないので、もし宝くじが当せんしたら、

当せん金を銀行からの融資の返済にあてた

いとの思いがあるようです。


もちろん、宝くじの当せん確率はとても低

いので、その方も宝くじがそう簡単に当せ

んするとは考えているとは思いませんが、

それでも運にすがりたいという思いが強い

ことから、たくさんの宝くじを購入すると

いうことをしているのでしょう。


ここまで宝くじのことを書きましたが、こ

れも述べるまでもなく、会社の事業が赤字

だからといって、宝くじを買って、その当

せん金で埋めようということを「あてにし

ている」人はまったくいないでしょう。


前述の通り、宝くじが当せんする確率は非

常に低く、非現実的な方法だからです。


しかし、宝くじが当せんすることをあてに

しているような経営者の方を見ることがあ

あります。


そのひとつめは、かつての成功体験に縛ら

れて、会社の体制を変えようとしない経営

者のタイプです。


ドッグイヤー、マウスイヤーと言われてい

る時代にあって、自社の業績のよかった時

代のような経営環境が「またやってくるこ

とにして」、それを待ち続けているタイプ

の経営者です。


そのような時代がやってくる確率は、宝く

じの1等が当たる確率より低いでしょう。


このような受け身の姿勢では、事業はすぐ

に行き詰ります。


ふたつめは、開業したときからスタープ

レーヤーを目指すタイプの経営者です。


自分が目標とする会社や経営者はいるもの

の、そのような人にはそれなりの下積み時

代があったことから現在の地位に立ってい

るにもかかわらず、そのことに気づかな

かったり、または、下積み時代があったこ

とは分かっていても、それをとばしていき

なり成功者になろうとします。


世の中には、生まれながらにして才能に恵

まれた人もいることは事実ですが、それは

例外的と考えるべきでしょう。


その可能性にかけることを100%否定は

しませんが、そうであれば、リスクのすべ

てを自己責任で負うことができる状態にす

べきであって、融資を受けて創業するなど

といったことをする一方で、甘い見通しで

事業を始めることは避けるべきです。


ここまで記述した2つのタイプの経営者に

ついては、「宝くじが当せんすることをあ

てにしているような経営者」と表現しまし

たが、もう少し具体的に書くと、自分が目

指すところまでの道筋が見えていないとい

うことだと私は分析しています。


逆に言えば、道筋が見えていないから、宝

くじが当せんすることをあてにしているよ

うなことをしてしまうのでしょう。


これを言い換えれば、成功が確実な経営者

は、成功までの道筋が分かっているという

ことです。


例えば、その道筋に、長い下積み期間があ

ると分かっていれば、それを分かった上で

起業するわけですから、その下積み期間に

も耐えることができるのでしょう。


(この例を挙げたからと言って、成功する

には、必ずしも下積み期間が必要だという

ことではありません)


要は、起業して目指すところが、単なる願

望のままであっては、ほぼ成功しないわけ

ですから、起業するにあたっては、目標に

至る道筋を示すことができるまで明確なも

のにしておかなければ、本当に宝くじが当

せんすることをあてにしているようなこと

になってしまいます。

 

 

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高付加価値経営

静岡県にある、プリンターなどの精密機械

を製造している、上場会社のスター精密

元相談役の佐藤誠一さんの著書「野望と先

見の社長学」( http://amzn.to/2DCB7X2 )

を読みました。


この本からは学ぶことがたくさんあったの

ですが、今回は、その中から、高付加価値

経営についてご紹介したいと思います。


佐藤さんは、同書の中で、次のように述べ

ておられます。


「事業経営の本質は付加価値の分配にあ

り、と社長は考えるべきである。


会社の利益が、売上から経費を差し引いて

得られるという考え方は、経理のもので

あって社長の考え方ではない。


社長は、売上ではなくて、付加価値を中心

にして経営を考えなければならない」


まず、「会社の利益が、売上から経費を差

し引いて得られるという考え方は、経理

もの」という指摘は、溜飲が下がる思いが

しました。


私ごとですが、会計を専門としておりなが

ら、経営コンサルティングの仕事をしよう

と私が志した理由は、会計とは事業のひと

つの側面を表すものであって、事業がわか

らなければ、真に会計を理解することには

ならないということを、私の学生時代の恩

師から教えられたからです。


このようなことを書くと多くの批判を受け

るかもしれませんが、多くの会計の専門書

は、会計的な観点での正しさを実現するた

めに、どのような事業運営を行うべきかと

いう論調のものが多く、前述のような教え

をいただいていた私としては、そのような

本に出会うと、胸のつかえる思いをしてい

ましたが、佐藤さんの考え方を読んで、ま

さしくこれが本当の会計の考え方だと感じ

たわけです。


話しを戻して、「社長は、売上ではなく

て、付加価値を中心にして経営を考えなけ

ればならない」ということも、重要な視点

であり、一見、多くの経営者の方もその通

りだと考えると思いますが、実際には、付

加価値はあまり意識されていないように思

います。

 

これは、ドラッカーの言葉である、「事業

の目的の真の定義はたったひとつしかな

い、それは顧客の創造である」( There is

only one valid definition of business

purpose : To create a customer. )に

通じると私は考えています。


ドラッカーは「顧客」という言葉を使って

いますが、顧客は自社の製品を購入する相

手であり、購入する相手を創造することと

は、自社の事業の付加価値を認めてもらう

相手を創造するということです。


別の言い方をすれば、100万円の製造原

価の製品を、付加価値の得られない100

万円で販売するとすれば、それは、その製

品が評価されているのではなく、単に、安

さを評価されて購入されているということ

になります。


でも、120万円で売れる顧客を創れば、

それは20万円の付加価値を創造したとい

うことです。


ですから、佐藤さんとドラッカーの述べて

いることは同じであると、私は考えていま

す。


ところが、これは、私の経験から感じるこ

となのですが、自社製品に十分な付加価値

を加えることが実践できていない会社は少

なくないようです。


そのような会社の経営者の多くは、その原

因について「いまの状況では、この値段で

しか売れない」と説明します。


競争が激しい時代にあって、そのような事

情も理解できなくはありません。


ただ、厳しい言い方ですが、では、なぜ、

付加価値を得られない相手にしか販売をし

ようとしないのか、または、なぜ、付加価

値を得られない製品を製造しているのかと

いうところが真の問題なのだと思います。


それは、ドラッカーの言葉で言えば、顧客

(=付加価値)の創造が事業の目的である

のに、その事業の目的を目指していないと

いうことです。


確かに、付加価値を得ることは非常に難し

い課題です。


しかし、だからこそ経営者はそれなりの能

力が求められるということです。


では、どうすれば付加価値を産むことがで

きるのかということについては、別の機会

に述べたいと思いますが、付加価値を産む

ことを意識している、すなわち、事業の本

当の目的を目指している経営者は意外と多

くはないのではないでしょうか?


もうひとつの佐藤さんのご指摘である、

「事業経営の本質は付加価値の分配にあ

り、と社長は考えるべきである」というこ

とですが、これも経営者の重要な役割を示

していると私は思います。


すなわち、経営者の役割は利害調整です。


利害調整とは、ひと、もの、かねといった

限りのある経営資源から、最大の成果を得

るためにはどう配分するかという判断をす

ることが、その中心です。


この経営資源の配分の仕方は、経営者の腕

の見せどころですが、その結果が、付加価

値の分配として現れます。


従業員に手厚く報いようとすれば人件費が

増えるし、会社の蓄積を増やそうとすれば

内部留保が増えます。


設備を増やせば、減価償却費が増えます。


もう少し分かりやすく述べれば、経費など

の配分は、受動的なものではなく、経営者

の能動的な活動の結果と見るべきというも

のです。


今回の結論は、付加価値というものさしを

通して、経営者の目指すべきことがらが明

確になるということです。


事業運営が思い通りに行っていないという

経営者の方は、佐藤さんの指摘する観点か

ら、自社の状況を見直してみることをお薦

めします。

 

 

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事業計画こそ経営

私は事業計画を重視しています。


なぜなら、事業計画なしには経営ができな

いと考えているからです。


と、このように書いても、このことを正面

から否定はされないものの、実際に事業計

画が作成されていない会社や、銀行から依

頼されて渋々作るという会社も少なくない

ようです。


そこで、事業計画を作成することは大切と

いうことを、多くの経営者の方が分かって

いる一方で、なぜそれが実践されないのか

ということについて、考えてみました。


そこで、改めて、事業計画の意義について

確認したいと思います。


会社の事業運営を、航海に例えれば、目的

地は会社の目指すところである経営理念に

該当します。


そして、どのような航路をたどるかという

ことは、事業を進める方法を示す経営戦略

に該当します。


その次に、実際の航海を行うにあたって

は、誰が、何を、いつまでに、どれだけな

どといった、具体的な計画や準備を行いま

すが、このようなことは事業運営において

も行われており、これが事業計画に該当し

ます。


広い海の中を長期間にわたって行われる航

海は、まさにリスクのともなうものである

からこそ、周到な計画と準備が必要です。


これらを欠いて、航海を無事に終えること

は不可能でしょう。


同様に、事業運営を成功させるためには、

きちんとした事業計画が策定され、それに

従った活動が行われなければならないわけ

ですが、冒頭で述べたとおり、それが実践

されていない会社は少なくありません。


その理由について、私がこれまでに見てき

た会社の状況から類推すると、会社を起こ

した創業者が、社長に就くということを起

業の目的にしている、もしくは事業を始め

るということが目的になっているというよ

うに、ゴールとスタートを取り違えている

ということがひとつだと思います。


もうひとつは、将来のことは不確定である

ので、計画を立てる意味がないと考えてい

るというものです。


これは、一見、筋が通っているように思わ

れますが、そもそも、事業がうまく進むと

考えていなければ、事業も始めていない訳

ですから、将来を見通せないという主張に

は矛盾があります。


事業計画に意味がないという主張の裏に

は、「計画に従って事業を進める」という

煩雑なことを避けたいという考えがあるの

であって、これは、ある意味、経営者とし

ての責任を放棄していると言えます。


これに対しては、「事業管理が経営のすべ

てなのか」という疑問もあると思います

が、経営者には事業を黒字にするという最

低限の義務があり、それをコミットすると

いう意味で事業計画は必要です。


もちろん、事業計画を作成すれば、必ず事

業が黒字になるということではありません

が、とはいえ、経営環境の厳しい時代に

あっては、前述の航海の例えにもある通

り、周到な準備なしに事業を黒字に導くこ

とは、見通しが甘いと言わざるを得ませ

ん。


むしろ、利益を得ている会社ほど、精緻な

事業計画を立て、より効率的な事業運営を

目指して邁進しており、その結果が黒字と

なって現れていると言えます。


話しはそれますが、事業計画は立てるもの

の、単に従業員に「ノルマ」を課すだけの

ことしかしないような経営者もいますが、

それは、ノルマだけを与えられた従業員か

ら見れば、数字を割り振るだけの経営者を

頼る必要はなく、そのような経営者の経営

する会社は早晩行き詰るでしょう。


今回の結論は、成り行きで事業を行うこと

だけを考えている経営者にとっては、事業

計画の必要性は感じませんが、成り行きで

事業を行うのであれば、経営者そのものが

不要であるということです。


現在の経営環境では、どのように事業を運

営するかが事業の成否を分けているのであ

り、そのためには計画の立案と遂行管理は

欠かせず、それを通して事業を成功に導く

役割が経営者に与えられています。


このことを認識し、事業計画に基づいた事

業運営を行っていない会社の経営者は、肩

書だけの経営者ということになってしまい

ます。

 

 

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