米国の作家のカーネギーの著書「人を動か
す」( http://amzn.to/2FmjtnH )を読みま
した。
カーネギーはベストセラー作家として有名
ですので、この本を読んだ人は多いと思い
ますが、その本の中に、リーダーシップに
ついて考えさせられるお話しが書いてあっ
たので、ご紹介したいと思います。
それは、カーネギーが10年間研究をして
その成果を著書にもしている、第16代米
国大統領のリンカーンに関することです。
の戦いのとき、南軍のリー将軍は、嵐の中
で敗走を始めました。
しかし、その途上で、増水していたポト
マック川があり、リー将軍は、そこで足止
めせざるを得ませんでした。
そこで、リンカーンは作戦会議を開くこと
を省いて直ちに攻撃命令を出し、それを電
報と特使を使って、北軍を指揮するミード
将軍に伝えました。
しかし、ミード将軍はリンカーンの意図に
反して作戦会議を招集し、かつ、言い訳を
並べて、いつまでもリンカーンの命令を実
行に移しませんでした。
その結果、やがてポトマック川の水位は下
がり、リー将軍は逃走してしまいました。
これは、単に北軍が勝てる機会を逃しただ
させようとするリンカーンの思いも実現で
きなくなったことを意味します。
これに対して、普段から節度を保っている
リンカーンも、大きな失望をし、ミード将
軍あてに、「あなたにもう期待はしない。
絶好のチャンスを失った。私の苦悩は図り
しれない」という手紙を書きました。
しかし、この手紙はミード将軍へは届けら
れなかったようです。
というのは、この手紙はリンカーンの死後
に、遺品の中から見つかったそうです。
これについて、カーネギーは、次のように
リンカーンの心を推し量っています。
すなわち、ミード将軍の立場とすれば、毎
日、血を流している部下を見ていて、これ
以上、流血することは避けたいと考えてい
たのだろう。
さらに、リンカーンの手紙をミード将軍が
読めば、単にリンカーンのことを恨むだけ
だろう、このようにリンカーンは考えて、
ミード将軍への手紙を書いただけで、出す
ことはしなかったというものです。
このリンカーンのお話しは、批判はだれで
もできることであり、愚かな行為だ。
そして、批判することによって、その相手
から恨まれ、自分の成し遂げようとするこ
との障害になることもある。
一方、賢明で偉大な人は、批判をせずに相
手を理解し、人から恨まれないようにする
結果、偉大なことも成し遂げることができ
るようになるということを、カーネギーが
伝えたいと考えて取り上げたようです。
このカーネギーの考えは、まったくその通
りだと思いますが、さらに、私は、リー
ダーがどうあるべきかを考えるよい事例に
なっていると思います。
ここで、ひとつお断りさせていただくと、
ミード将軍がリンカーンの命令に従わな
かったことが正しかったかどうかというこ
とについては、ここでは論じることができ
ないという前提でお話を進めます。
この分野は、私は責任をもってお話しする
ことができませんが、ミード将軍がリン
カーンの指示に従っていれば戦争が早く終
結できたと考えることもできるし、逆に、
ミード将軍がリンカーンに従わなかったこ
とで、北軍の被害を少なくすることができ
たと考えることもできます。
要は、何が正しいかということは、何を基
準にするかによって変わるということで
す。
話を戻して、リーダーの命令は絶対という
タイプのリーダーシップもあるし、また、
可能な限り現場に権限を委譲するというタ
イプのリーダーシップもあります。
そして、そのどれが適しているかというこ
とは、組織の構成員の能力によります。
構成員の能力が低い場合は、前者のような
リーダーシップが適しているし、その逆の
場合は後者のようなリーダーシップが適し
ています。
では、目指すべき組織の状態とリーダー
シップはどういうものかというと、組織の
構成員の能力が高く、そして、権限ができ
るだけ現場に委譲されている状態でしょ
う。
これを別な言い方をすると、多くのことに
ついてリーダーの指示通りに動いている組
織というのは、一見、統率が取れているよ
うで、ある意味、リーダーの単独の考えで
動いているということです。
逆に、現場がリーダーに必ずしも従わない
組織というのは、その現場の判断が正しい
かどうかはさておき、組織全体で活動して
いる組織といえるでしょう。
そして、そのような組織のリーダーは、前
述のリンカーンのように、現場からの反発
によって苦しむこともありますが、ある意
味、それは、優れた組織の一面でもあると
私は考えています。
そして、そのような組織のリーダーは、単
に命令を出せばよいという単純な役割を担
えばよいというわけにはいきません。
能力の高い組織は、それだけリーダーの能
力も資質も高いものを求められるというこ
とが今回の結論です。
繰り返しになりますが、部下は社長の指示
に従いさえすればよいという考えの社長の
経営している会社は、組織としての成果は
あまり大きくない状態だといえるでしょ
う。
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