鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

記憶より記録

先日、佐々木正悟さんのご著書、「なぜ、

仕事が予定どおりに終わらないのか?」

( http://amzn.to/2kpxETl )を読みまし

た。


読もうと思ったきっかけは、自分の仕事を

効率的にしようと思ったからなのですが、

別の意味で気づかされることが書いてあり

ました。


佐々木さんは、完璧主義者は仕事を速くこ

なすことができないとご著書でご指摘され

ておられるのですが、完璧主義者が改める

べき点のひとつとして、自分の記憶の方が

正しいと思ってしまうということです。


その例として、30時間で1,000ペー

ジの原稿を書けると思っている人が、実際

には500ページしか書けなかったとき、

「いつもの半分のペースでしか仕事をしな

かった」と考えてしまいます。


実際は、30時間で500ページしか原稿

が書けないのに、自分は1,000ページ

の原稿を書くことができると考えているか

ら、1,000ページの原稿を書くときに

30時間しか予定を割かない。


それが、完璧主義者は予定通りに仕事を終

わらせることができない原因のひとつだと

いうことです。


これを改善する方法として、佐々木さんは

仕事の記録を付けることをお薦めしていま

す。


仕事の記録を付けることで、実際にやった

仕事の量に納得し、「本当はもっと仕事が

できたはず」という思い込みをなくすこと

ができるということです。


この説明を読んだ時、私はこれに似た経験

が思い浮かびました。


しかし、それは自分のことではありません。


事業の改善のお手伝いをしている会社の経

営者の方の口から出てくる言葉です。


私「月例会議で、事業計画の進捗状況を、

確認していますか?」


社長「確認しています」


私「年度初めに、従業員の方と面談し、1

か年の実績の確認を行い、今後1か年に

担って欲しい役割を伝えていますか?」


社長「各従業員と面談を行い、確認と伝達

を行っています」


私「会社の今年度の目標は、従業員の方に

理解してもらっていますか?」


社長「会議のときに伝えました」


これだけのことを実施していれば、会社の

業績が悪くなることは考えにくいです。


実は、社長は私の質問したことを実践でき

ていると考えているのですが、本当は、で

きていないというのが実情です。


では、なぜ社長は私の質問に対して実施し

ていると答えるのかというと、例えば、会

議は開いているのですが、それだけで従業

員に自分の話した内容は伝わっていると

思ってしまうようです。


会議を開く目的は、会議を開くことではな

く、社長の方針が他の参加者に理解されて

いるかどうかなのですが、そこまでは社長

も確認はすることはほとんどありません。


毎月の実績の確認も、実績の報告は受けて

も、もし計画に遅れが出ていても、その具

体的な改善策を決めずにうやむやなままに

会議が終わり、会議を開いた意味がない状

態になっているのが実情のようです。


しかし、実績の確認の会議は開かれたので

社長は私の質問に「確認している」と回答

するようです。


実は、このようなことが起こらないように

するために、私のようなコンサルタント

ご支援する意義があります。


会議や面談は、その効果があるかどうかが

問われているので、単に会議の参加者が集

まっただけとか、面談のときに社長と従業

員で話し合っただけでは、当然、その意味

はありません。


とはいえ、一朝一夕で、効果のある会議や

面談ができるようにはならないことも事実

で、ある程度の期間をかけてスキルを高め

て行かなければなりません。


結論は、経営者の方は、「会議を開いた」

「面談を実施した」という、表面的な「記

憶」だけでよしとせず、その効果が表れて

いるかどうかという「記録」にこだわるよ

うにすることが大切です。


これは、結構たいへんなことですが、経営

者が身に付けなければならない重要なスキ

ルであると私は考えています。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171005215230j:plain

どしゃぶりの時に傘を取られないために

「晴れの日に傘を貸し、どしゃぶりの時に

傘を取り上げる」と銀行を揶揄する経営者

の方は多いと思いますが、それでは、

どしゃぶりのときに傘を取り上げられない

ようにするにはどうすればよいかというこ

とについて述べたいと思います。


前述の揶揄は、会社の業況の良い時は、銀

行はおべっかを使うのに、業況が悪くなる

と、手のひらを返したように態度が冷たく

なるということを指しているのでしょう。


これは、明らかに銀行に否があります。


なぜなら、取引先への接し方は、一貫性が

求められるからです。


しかし、銀行は株式会社であり、銀行の業

務は営利事業です。


銀行には融資先の事業を発展させるという

役割もありますが、かといって、損失の出

る取引は避けなければならないという事情

もあります。


ですから、これは銀行だけではありません

が、もうかりそうな相手には機嫌をとり、

もうからなさそうな相手からは距離を置こ

うとするということは仕方がない面もあり

ます。


そこで、お互いに商売を営んでいる立場と

しては、銀行が自社に機嫌取りをしている

ということを真に受けることはあまり賢く

ないとも言えます。


ですから、仮に自社に機嫌取りをしてくる

銀行があったとしても、それは自社がピン

チになったときも続けてもらえるのかどう

かということを、的確に見抜かなければな

りません。


しかしながら、銀行の多くは、業況が悪い

会社とは取引をしたくないと考えていると

いうのが現実でしょう。


ですから、銀行の姿勢を見抜くことよりも

自社と銀行の信頼関係を強くすることの方

が、現実的と言えます。


このように書くと、「融資を受ける会社だ

けが一方的に負担が大きいのではないか」

と感じる方もいると思いますが、逆に、業

績のよい会社は複数の銀行で融資シェアの

奪い合いになります。


ですから、融資を得るための銀行への働き

かけが負担であると感じるとしても、それ

を、不平等と感じることは適切ではないと

私は考えます。


また、銀行から「どしゃぶりのときに傘を

取り上げられた」という会社の中には、

「晴れのときに驕り高ぶっていた」という

会社も少なくありません。


堅実な会社は、業績がよいときも悪いとき

も、一貫して謙虚に銀行に接していると私

は考えています。


銀行に対しては、決して媚びる必要はあり

ませんが、かといって、誠実に向い合うこ

とは、決して損ではないと思います。


話しを戻して、銀行から信頼を得るには、

具体的にどのようなことをすればよいかと

いうと、これも字数の兼ね合いから、概要

のみを書くと、自社の状況をつまびらかに

報告することと、自社の方針を適宜伝える

ことだと思います。


自社の状況をつまびらかに伝えることとは

具体的には、前月の月次試算表を銀行に毎

月持参するか送付することです。


ここで、月次試算表を送ることが、自社の

状況をつまびらかに伝えることになるのか

という疑問を持つ方も多いと思います。


確かに、必ずしもそうとは限りませんが、

年に1回作成される決算書を、銀行から催

促を受けてようやく提出する会社も少なく

ない中にあって、毎月月次試算表の提出を

している会社は、銀行から見れば、提供を

受ける情報の量はかなり多いと受けとめら

れるでしょう。


しかも、月次試算表を銀行に持参する会社

は、その際に、銀行の職員へ数値以外の情

報として自社の状況を伝えるだけでも、融

資稟議書を書くときの好材料が多くなると

感じることができます。


ふたつめの、自社の方針を伝えるというこ

とについてですが、できれば、年に1回、

自社の経営方針発表会を社内で開き、そこ

に銀行職員を招くということをすることが

望ましいと私は考えています。


こうすることで、会社の状況を銀行に理解

してもらいやすくなるだけでなく、自社の

事業に取り組む姿勢が熱心であるというこ

とを銀行職員に感じ取ってもらうことがで

きるでしょう。


発表会に銀行職員に来てもらえない、また

は、発表会を開くことが難しいという場合

は、経営方針を記載した書面を銀行に届け

るだけでも効果はあります。


もし、自社の経営方針を毎年作成すること

が負担であると考えている経営者の方がい

るとすれば、そのようなことをせずに、銀

行にピンチのときは助けて欲しいと願うこ

とは、虫がいいということになるのではな

いかと私は考えます。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171005174800j:plain

特定社債保証制度

今回は、特定社債保証制度について説明し

ます。


特定社債保証制度とは、会社が資金調達を

するために発行する社債について、その社

債を引き受けた人(会社)に対して返済

(償還)の保証をする制度です。


この制度の説明の前に、まず、社債につい

て説明します。


社債とは、会社法で定められた資金調達方

法のひとつです。


会社は社債券を発行し、投資家にそれを引

き受けてもらい資金を調達します。


社債も負債(固定負債)に分類されます

が、銀行からの長期借入金との違いは、次

の通りです。


(1)長期借入金は分割返済だが社債は期

日一括返済である。


(2)長期借入金は変動金利が一般的だが

社債は固定金利である。


(3)長期借入金は借用証書で1対1の取

引だが、社債は複数の投資家から資金調達

し、また社債券は流通性のある有価証券で

ある。


政府も、歳入が不足するために、国庫債券

国債)を発行します。


国債は、複数の投資家が引き受けて、また

投資家の間で売買されます。


一般の会社では、この国債に相当する資金

調達方法が社債ということになります。


それでは、特定社債保証制度について説明

します。


特定社債保証制度とは、会社の発行する社

債に対して、その80%の金額を信用保証

協会が保証することで、一般の社債よりも

資金調達を容易にするものです。


また、保証協会の保証は一般的には2億8

千万円が限度ですが、社債の場合は、保証

額は4億5千万円まで(社債発行額は5億

6千万まで)保証を利用できる点でも有利

です。


ただし、この保証を利用できる条件は、純

資産が5千万円、自己資本比率が20%以

上といった一定の要件が必要です。


なお、この制度を利用した場合、社債を引

き受ける「投資家」は、特定社債保証制度

の申請を仲介する金融機関です。


社債の制度は、不特定の投資家に引き受け

てもらうこととなっていますが、実質的に

は、保証を仲介した金融機関が「融資」を

しているときと同じことになります。


ただし、社債の発行条件は前述の通りであ

り、長期的なまとまった資金を調達しよう

とする会社にとっては有利な制度です。


また、一般的に、社債を発行できる会社は

信用のある会社であり、社債を発行したと

いう事実は、会社の役職員の士気を向上さ

せることにもなります。


さらに、特定社債保証制度を利用した社債

発行は、多くの場合、保証の仲介をした銀

行がプレスリリースを行い、新聞にも掲載

されることから、社会的な信用が増すこと

にもなります。


このように、特定社債保証制度による社債

発行は、資金の調達だけでなく、自社の事

業の発展のメルクマールにもなることです

ので、ぜひ、多くの会社に利用していただ

きたいと思っています。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171004182010j:plain

効果のあるPDCA

世の中には、成功するための本やセミナー

や教材などであふれています。


しかし、それらがいつまでたってもなくな

らないのは、それらが実際には効き目がな

いということになってしまいます。


もちろん、それはコンサルタントにも当て

はまります。


現在の日本にはコンサルタントがあふれて

いますが、いつまで経ってもいなくなりま

せん。


これは、嘘のように思われるかもしれませ

んが、コンサルタントとして働いている私

自身の目標は、世の中にコンサルタント

不要とすることです。


とはいえ、力不足の私には、その目標を達

成するまでには、相当の時間がかかりそう

です。


話しを戻して、多くの方が本などの媒体で

成功するための方法を示しているのに、そ

のような本などがなくならない理由は何か

ということを、コンサルタントである私は

ずっと考えてきています。


その結論の一端を、岡村拓郎さんのご著書

「自分を劇的に成長させる!PDCAノー

ト」( http://amzn.to/2fKrqf6 )から感じ

ることができました。


岡村さんは、PDCAを実践して、自分自

身を改善する方法を示していますが、記述

の多くに、なぜPDCAを実践することが

できないのかということを割いています。


これを、私がひとことでまとめて述べると

不完全さを理由に行動をしないということ

です。


もう少しつっこんで述べれば、人は潜在意

識で変わることを恐れているために、不完

全さをよい理由に変化をさけているという

ことです。


このことについて、岡村さんは、次のよう

に書いています。


ひとつめは、イチロー選手は3千本のヒッ

トを打ったが、そのためには6千回アウト

になっている。


したがって、成功するためには、あらかじ

め失敗することを許容して行動しなければ

ならないということです。


これについては、「失敗は成功の母」とい

う格言があり、多くの方が理解されている

ものの、前述の通り、感情の面で変化を避

けたいと感じてしまうことが、変わること

を妨げているのでしょう。


ふたつめは、本質的なこと以外に時間をか

けないということです。


岡村さんは、仕事は100点を狙わずに、

70点~80点を目指すべきと述べておら

れます。


というのは、テストで言えば、100点を

目指すためには、20点~30点分は応用

問題やひっかけ問題が占めており、それを

解けるようにするには、相当の労力が必要

になって、非効率的だということです。


仕事の内容によっては、絶対に間違いが許

されないというものもありますが、ここで

岡田さんが述べている主旨は、100点を

目指す仕事ばかりをしていると、本当にや

らなければならない仕事を犠牲にすること

になりかねないということです。


仕事を俯瞰して取捨選択することが必要で

あるということです。


みっつめは、PDCAの回数を増やすとい

うことです。


岡村さんは、ノートを使って、毎日、PD

CAを行うことを薦めています。


これは比喩的な言い方ですが、PDCAを

毎月実施している人は、年1回しか実施し

ない人の12倍の速さで改善を見込むこと

ができます。


同様に、週1回実施する人は52倍、毎日

実施する人は365倍の速さになります。


これは、私がよく使う例えなのですが、仕

事を野球に例えた時、多くの方は、ヒット

を重ねることをせず、ホームランばかりを

打つことを考える。


確かにホームランを打てば1打で点が入り

ますが、ホームランを打てる確率は低く、

小刻みにヒットを重ねることの方が確実に

加点につながります。


しかも、ホームランを打つには、それなり

の体力を養ったり技術を身に付ける必要が

あるのに、ユニフォームを着たばかりのよ

うな人が、いきなりホームランを狙うとい

うことをする人もいます。


そして、真に点が入らない理由には目を向

けず、自分が点を取れない理由は対戦相手

が強いからだと主張して、自らを改善しよ

うということから避けてしまいます。


繰り返しになりますが、PDCAをなかな

か実践できない理由は、目の前の小さな事

がらを軽んじているということです。


すなわち、「大事の前の小事」ということ

です。


そして、先ほどは、「人は変わることを避

けようとする」ことが成功につながらない

理由としてあげましたが、小さなことを軽

んじるという驕りも同様に成功しない理由

になっていると思います。


よって、「変わる」「驕らない」というこ

とを決意するだけでも、自分自身や経営す

る会社は改善するものと、私は考えていま

す。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171003111631j:plain

利息は返すものではなく払うもの

中小企業診断士の安田順さんのご著書、

「社長のための『中小企業の決算書』読み

方・活かし方」( http://amzn.to/2kaErju )

を拝読しました。


内容としては、銀行職員は、なかなか本音

を融資先の経営者に話さない。


また、融資審査にあたって銀行職員は、一

般的な財務分析を行っていない。


そのため、融資を受けている会社は、銀行

の不意な方針転換に翻弄されやすい。


そこで、銀行の考え方を理解してそれに備

えておくことが大切だということです。


そして、この本には、私が銀行職員時代に

感じたことがたくさん盛り込まれていて、

共感することも多く、お薦めしたい書籍で

す。


今回は、そのなかから長期借入に関する考

え方について取り上げたいと思います。


安田さんは、銀行から融資を受けている会

社の経営者に対して、「銀行に(毎月)い

くら返済していますか?」と問うと、「元

金と利息を合わせて●●●円くらいです」

という答えが返ってくることが少なくない

と述べておられます。


これについて、安田さんは、前述のような

言い回しが決して誤っているわけではない

ものの、きちんと「『返済元金』は●●●

円、『支払利息』は●●●円」と回答すべ

きだと述べておられます。


すなわち、返済するものは融資元金であり、

支払利息は返済するものではなく支払うも

のであるということをきちんと認識するべ

きということです。


これは、私の経験ですが、かつて事業再生

をするために、銀行から債務免除、すなわ

ち、借入金の棒引きを受けた会社の経営者

から、「今回、借入金の返済の一部を免除

したと言われても、うちの会社はこれまで

借入した額の倍も支払ってきている」と、

ぽつりと言われたことがあります。


現在は、金利はかなり低いので、その水準

から考えるとイメージしにくいかもしれま

せんが、かつて、借入金の金利が8%程度

の時代は、長期借入金を返済すると、返済

が終わるまで、支払利息額は相当な額にな

りました。


前述の経営者の言った、倍というのは誇張

しすぎですが、例えば、1億円の融資を受

けて、金利が8%とすると、これを10か

年で返済するときの金利総額は約4千万円

になります。


もちろん、元金は返済する(貸借対称表の

負債の部が減少する)もので、利息は支払

う(損益計算書の支払利息・割引料が増加

する)ものということは、私が説明するま

でもなく、多くの方は理解すると思います。


でも、経営者の方の中には、支払利息は経

費とは考えていないという方もいるようで

す。


前述の経営者の方は、「債務免除といって

も、それに相当する程度の利息は銀行は受

けとっているのだから、銀行は損をしてい

ないはずだ」と主張したいのでしょう。


もちろん、銀行は慈善事業ではないので、

融資利息は正当なもうけなのですが、債務

免除を受けた会社の経営者としては、感情

的に、自分たちは銀行に迷惑をかけていな

いと思いたかったのだと思います。


話しを戻して、安田さんが述べたいことの

趣旨は、長期借入金の返済元金は相当額の

利益を得ることを目標として認識している

かどうかが、リスケジュール(融資の返済

条件の変更、実質的には、融資元金の返済

猶予)を受けなければならなくなるかどう

かの分かれ目になっているということです。


すなわち、長期借入金の返済元金と支払利

息相当額以上の利益(この利益には、減価

償却費を加算した金額を指します)を目標

として事業に臨んでいる会社は、確実に融

資額を減らすことができます。


一方、資金繰りが繰しくなったら、新たに

借入をして、それで以前に借りた融資を返

済すればよいと考えている経営者の経営す

る会社は、借金が膨らんで、いつかリスケ

ジュールをしてもらわなければならなくな

ってしまうということです。


「利益」と「現金」、「支払利息」と「返

済元本」は違うということを分かっている

方は多いと思いますが、その一方で、前述

のような誤った判断をしてしまう人は意外

と多いということです。


これは、私への戒めでもありますが、自分

はこのことは分かっていると思いつつ、実

は間違ったことをしてしまっていることも

あるので、慢心には注意すべきということ

を感じました。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171001160833j:plain

会社にお金が残らない本当の理由

先日、税理士の岡本吏郎さんのご著書、

「会社にお金が残らない本当の理由」

( http://amzn.to/2xSpTdw )を拝読しまし

た。


本のテーマの「会社にお金が残らない本当

の理由」は、会計のルールは主に税金を計

算するために作成されていて、経営者の経

営判断にはあまりむいていない、また、経

営者も、会計に関する情報から正しい経営

判断をしていないということのようです。


岡本さんの考え方が正しいかどうかはさて

おき、私もコンサルティングをする中で、

岡本さんのご主張に共感する点がたくさん

ありましたので、その概要をご紹介したい

と思います。


ひとつめは、現在の会計のルール、すなわ

ち、財務会計(中小企業の場合は、実質的

税務会計で作成された決算書が財務会計

で作成されたものとなっています)は、経

営者が感じる数字と異なっているという指

摘です。


財務会計に対して、経営者の判断のために

利用される管理会計というものもあります

が、岡本さんは、経営者の役に立つ会計と

は、財務会計の考え方が基になっている管

理会計以外のものを指しているようです。


詳細は同書をお読みいただきたいのですが、

手っ取り早く述べれば、従業員ひとりあた

りの付加価値について岡本さんはご指摘さ

れておられます。


すなわち、中小企業は従業員ひとりあたり

1,500万円の付加価値(≒粗利益)を

獲得することを目標とすべきとご指摘して

おられます。


1,500万円が妥当かどうかということ

は議論があると思いますが、私は岡本さん

の考え方に同意します。


というのは、多くの経営者の方は、ひとり

の従業員で1,500万円の粗利益を得る

ことは困難と考えるでしょう。


しかし、岡本さんは、逆に、ひとりの従業

員に1,500万円の付加価値が得られな

い事業は、経営が安定しないとご主張され

ておられます。


要は、事業はそれだけ難しく、安易に起業

することは避けるべきだということです。


これについて、岡本さんはひとつの逸話を

ご紹介しています。


岡本さんは、業績が芳しくない会社の経営

者に対し、いったん、会社を清算すること

をお薦めしたそうです。


その経営者は難色を示したものの、岡本さ

んが説得し、事業を撤退することになった

そうです。


しかし、その後、その会社は岡本さんが示

した手順を実行することなく、5年が過ぎ

たそうです。


その間、役員報酬と同額の赤字を計上し続

け、その赤字の分だけ、借金が増えたそう

です。


これは何を物語っているかというと、何ら

かの対策をするよりも、借金をすることの

方が容易であるということです。


借金をすれば会社の倒産は免れますが、単

に解決を先延ばしにし、そして、その解決

をより困難にしてしまっているということ

です。


要は、経営者はやるべきことを先延ばしせ

ずにきちんと取り組みましょうということ

であり、改めて指摘するまでもなく当たり

前のことです。


ただ、心が弱いため、借金することによっ

て、その場を逃げてしまう方が多いという

ことです。


前述の、従業員ひとりあたり1,500万

円の付加価値も、岡本さんによれば、これ

が会社にお金を残す最低限の金額というこ

とです。


これが達成できないために、借金で不足分

補っているに過ぎないと岡本さんはご指摘

しています。


結論としては、数字を正しく読むことと、

さらに大切なのことは、数字を正しく読ん

だことから導き出される対応策を逃げずに

取り組むことだということです。


岡本さんのご著書にはたくさんの示唆があ

りましたが、結論はシンプルだと思いまし

た。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171001075807j:plain

ぶれない

先日、横浜DeNAベイスターズ初代社長

を務めた、池田純さんのご著書「空気のつ

くり方」( http://amzn.to/2x23JBA )を読

みました。


池田さんは、ベイスターズの野球チームと

しての成績が振るわない中で、売上高を

2011年の51億円から、2015年に

93億円に増やした功績で有名です。


その具体的な手法は、池田さんのご著書を

お読み頂きたいと思いますが、そのポイン

トはファンをよろこばせる要素である「空

気」をどうやってつくるかというところで

あると思います。


そして、なぜ、池田さんが売上高を5年間

で80%以上伸ばすことができたかという

理由を探りながら読んでいったところ、そ

の最大の理由は、当たり前と感じるかもし

れませんが、意思の強さだと思いました。


意思の強さのひとつの現れとして、池田さ

んは、いったん口にしたことを、周囲の反

応が否定的であっても撤回しなかったそう

です。


これをすぐに撤回してしまうと、逆に、信

頼を失うと考えたそうです。


すなわち、ぶれることをしなかったという

ことです。


これは、池田さんは精神的にきつかったと

本に書いていました。


もうひとつは、匿名組織内調査をして、自

分への痛い空気を受けとめるということを

したそうです。


すなわち、従業員が社長である自分をどう

思っているのかということを匿名で調査し

たということです。


従業員が社長をどう思っているのかという

ことを、一方的にきかされるということは

とてもつらいということは、想像に難くあ

りません。


実際に、「社長はひとりで戦っている」、

「いつも忙しそうで話しかけにくい」とい

う意見があったそうです。


さらに、「なぜ黒字にしなければならない

のかわからない」という、社長である池田

さんの考え方と真逆のことを考えている従

業員が多く、池田さんと同じ思いの人は、

池田さんの期待より少ない3分の1にとど

まったそうです。


でも、池田さんは、現実を知ることができ

たから、判断を誤ることはなかったと書い

ていました。


私も、これまで経営者の役割はつらいもの

と書いてきましたが、池田さんの具体的な

経験を知り、引き受けることは本当にたい

へんなことだということを感じました。


ただ、池田さんのような意思の強さがあれ

ば、赤字があたりまえといわれているプロ

野球球団を黒字にすることも可能なのだと

いう、希望も感じることができました。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20170930232703j:plain