鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社にお金が残らない本当の理由

先日、税理士の岡本吏郎さんのご著書、

「会社にお金が残らない本当の理由」

( http://amzn.to/2xSpTdw )を拝読しまし

た。


本のテーマの「会社にお金が残らない本当

の理由」は、会計のルールは主に税金を計

算するために作成されていて、経営者の経

営判断にはあまりむいていない、また、経

営者も、会計に関する情報から正しい経営

判断をしていないということのようです。


岡本さんの考え方が正しいかどうかはさて

おき、私もコンサルティングをする中で、

岡本さんのご主張に共感する点がたくさん

ありましたので、その概要をご紹介したい

と思います。


ひとつめは、現在の会計のルール、すなわ

ち、財務会計(中小企業の場合は、実質的

税務会計で作成された決算書が財務会計

で作成されたものとなっています)は、経

営者が感じる数字と異なっているという指

摘です。


財務会計に対して、経営者の判断のために

利用される管理会計というものもあります

が、岡本さんは、経営者の役に立つ会計と

は、財務会計の考え方が基になっている管

理会計以外のものを指しているようです。


詳細は同書をお読みいただきたいのですが、

手っ取り早く述べれば、従業員ひとりあた

りの付加価値について岡本さんはご指摘さ

れておられます。


すなわち、中小企業は従業員ひとりあたり

1,500万円の付加価値(≒粗利益)を

獲得することを目標とすべきとご指摘して

おられます。


1,500万円が妥当かどうかということ

は議論があると思いますが、私は岡本さん

の考え方に同意します。


というのは、多くの経営者の方は、ひとり

の従業員で1,500万円の粗利益を得る

ことは困難と考えるでしょう。


しかし、岡本さんは、逆に、ひとりの従業

員に1,500万円の付加価値が得られな

い事業は、経営が安定しないとご主張され

ておられます。


要は、事業はそれだけ難しく、安易に起業

することは避けるべきだということです。


これについて、岡本さんはひとつの逸話を

ご紹介しています。


岡本さんは、業績が芳しくない会社の経営

者に対し、いったん、会社を清算すること

をお薦めしたそうです。


その経営者は難色を示したものの、岡本さ

んが説得し、事業を撤退することになった

そうです。


しかし、その後、その会社は岡本さんが示

した手順を実行することなく、5年が過ぎ

たそうです。


その間、役員報酬と同額の赤字を計上し続

け、その赤字の分だけ、借金が増えたそう

です。


これは何を物語っているかというと、何ら

かの対策をするよりも、借金をすることの

方が容易であるということです。


借金をすれば会社の倒産は免れますが、単

に解決を先延ばしにし、そして、その解決

をより困難にしてしまっているということ

です。


要は、経営者はやるべきことを先延ばしせ

ずにきちんと取り組みましょうということ

であり、改めて指摘するまでもなく当たり

前のことです。


ただ、心が弱いため、借金することによっ

て、その場を逃げてしまう方が多いという

ことです。


前述の、従業員ひとりあたり1,500万

円の付加価値も、岡本さんによれば、これ

が会社にお金を残す最低限の金額というこ

とです。


これが達成できないために、借金で不足分

補っているに過ぎないと岡本さんはご指摘

しています。


結論としては、数字を正しく読むことと、

さらに大切なのことは、数字を正しく読ん

だことから導き出される対応策を逃げずに

取り組むことだということです。


岡本さんのご著書にはたくさんの示唆があ

りましたが、結論はシンプルだと思いまし

た。

 

 

 

 

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