鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資セールス

会社を設立して、事業が軌道に乗り

始めるころまでは、銀行から融資の

セールスを受ける機会が多いと

思います。


特に、いまは、銀行も収益機会を

増やそうと懸命になっているため、

創業準備段階からアプローチを

受けることもあります。


もちろん、融資を受ける側からは

それはありがたいことなのですが、

私は、油断は禁物だと思っています。


銀行から見て、創業時と黎明期の

会社への融資は、信用保証協会の

保証を付けやすい、金額は比較的

少額のいずれか、または両方の

条件で融資を受けることになる

でしょう。


これは、銀行から見れば、リスクが

小さいということです。


すなわち、うまみのある融資という

ことです。


そこで、「油断は禁物」と前述した

理由は、銀行もリスクをともなう

融資を申し込んだときに、銀行は

それに応じてくれるかどうか、

疑わしいということです。


「これまで銀行が融資をセールスして

くれているから、自社は銀行から

評価されている。


これからも、融資を依頼したらすぐに

応じてもらえるだろう」と考えている

場合、必ずしもそれに応じてもらえない

かもしれないということです。


特に、創業後、1~3年は、赤字を計上

しても、大目に見てもらえるのですが、

3年を経過しても赤字が続くようで

あれば、将来の見込みはないと判断

され、新規融資は応じてもらえない

可能性があります。


また、黒字であっても、融資額が

5,000万円程度を超えてくると、

信用保証協会の保証枠の残りが少なく

なってくるので、このような段階で

追加融資を依頼すると、銀行側は、

信用保証協会の保証がなくても融資を

するかどうかということを検討する

ことになります。


このような段階になって、初めて

銀行は自らのリスクで融資を行う

という前提で審査を行うことになり、

その結果で銀行の自社に対する真の

評価が分かることになります。


もちろん、業績のよい会社、将来性の

ある会社は、銀行からも評価を得る

ことができます。


しかし、事業規模の小さいときに、

銀行から融資セールスを受けていた

からといって、自社の方針や業況を

銀行へきちんと伝えるという対応を

怠っていると、銀行からは手のひらを

返すような対応をされるかもしれない

ので、油断しないように注意しましょう

ということが、今回の結論です。

 

 

 

 

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劣等感

私が事業の改善のお手伝いをする中で、

その原因を分析していくと、その中に

経営者の方の劣等感がネックになる

ことがあると考えるようになりました。


とはいえ、これは私が指摘するまでも

なく、すでに多くの方がそう認識して

おられると思います。


しかしながら、やはり、経営者の方が

感情的な面に行動を支配され、なかなか

改善が進まないということがあります。


その具体例は枚挙にいとまがありま

せんが、私が銀行勤務時代に担当して

いた、建設会社の経営者について

書いてみます。


その経営者の方は、私のような銀行

職員を、その会社の従業員がいる

場所で、よく叱りました。


叱る内容は、「お前の礼儀作法が悪い」

「銀行は自分の都合でしか融資しない」

などといったことです。


お話しの内容はごもっともなのですが、

果たして従業員のいるところで叱る

必要があるのか、銀行の末端の職員に

要求すべきことなのかということを

考えると、叱ることの本当の目的は、

会社経営があまりうまく行っていない

ことによるストレスの発散や、自分の

部下に対して自分は偉いんだという

アピールをすることなどだと考えて

います。


このように書くと、「経営者が銀行

職員をいじめることはけしからん」と

記載しているように思われますが、

本旨はそういうことではありません。


ちなみに、この手の経営者は意外と

たくさんいたので、渉外係をしていた

私としては、叱られることには慣れて

いました。


話しを戻すと、銀行職員を批判する

ということは、自社の事業で利益を

得るための活動としては重要性は

あまり高くないことです。


もう少し直接的に書けば、銀行職員を

批判する時間は、自社の事業のために

使うべきでしょう。


経営者の方の劣等感が強いと、あまり

本質的でないことに時間をとられて

しまい、事業の効率性が低くなって

しまうということです。


もっと悪い例としては、自社の利益が

出ているかどうかということよりも、

業界でのポジションや、自分の肩書、

世間体、面子などを優先してしまうと

いう会社経営者もいます。


そのような方たちに「会社にとって、

利益を得ることが最優先される目標

です」とお伝えすると、「自分もその

通りだと考えている」と回答して

もらえるのですが、普段の行動は、

感情に支配されてしまうようで、

なかなか変わりません。


結論としては、会社経営者という

仕事は、人の上に立つ役割なので、

普通の人はなかなかなくすことが

できない劣等感についても、あまり

支配されない強い精神力が求め

られるということです。


経営者といえども生身の人間です

から、メンタル面の強さも鍛える

ことが大切です。

 

 

 

 

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素早い対応が交渉を有利にする

私が銀行で働いていたときは、何度も

失敗をしました。


もともと私は口下手なので、渉外係を

していて、図らずもお客さまを怒らせて

しまうことがありました。


そういったときは、とにかく、その

お客さまを最優先して対処します。


もちろん、最優先して対処したからと

いって、必ずしも許されるわけでは

ないのですが、少なくとも「逃げた」

とか「不誠実」ということは言われる

ことはありません。


むしろ、言い訳をしたり、後手後手の

対応をすると、話がこじれて対処が

難しくなります。


このような経験から、問題を解決する

には、素早い対応が大切ということを

学び、その後、難しい折衝があった

ときは、私はクイックレスポンスを

心がけるようになりました。


繰り返しますが、クイックレスポンス

だけで、交渉相手がこちらの思い通りに

なるわけではありませんが、最も負担の

かからない方法がクイックレスポンス

だと思います。


だからといって、他の人もクイック

レスポンスするべきだとまでは言わない

までも、逆に、融資先から難しい融資の

申し込みを受けた時に、こちらの問い

合わせになかなか回答をしてもらえない

ことがあると、「本当に融資をして

欲しいと考えているのだろうか」と思う

ときもありました。


そうはいっても、即答をしてもらえない

相手にはそれなりの事情もあるので、

やむを得ない場合もあるでしょう。


とはいえ、難しそうな融資の申し込みを

する場合、「どうすればよいでしょうか」

と質問を私が受けた場合、そのひとつの

方法として「銀行からの質問にはすぐに

回答するようにしましょう」と私は回答

しています。


(さらには、「銀行から問い合わせを

受ける点を少なくするように、詳しい

情報を銀行に提供しましょう」とも

お伝えしています)


これに対しては、「そもそも銀行に

説明する時間に余裕があれば、事業も

そんなに苦労せずもうけている」と

お考えの方もいると思います。


しかし、これは鶏と卵の話になって

しまいますが、そのような会社は

あまりもうからない事業をしている

から時間に余裕がないのか、事業の

改善のための時間の余裕がないから

いつまでも事業が上向かないのかと

いうことになります。


いずれにしても、そのような会社は、

事業の改善の見込みは低く、融資を

前向きに検討してはもらえなくなる

でしょう。


今回は、クイックレスポンスを例に

上げましたが、こちらが不利な立場に

ある交渉は、なんらかの努力が相手に

伝わる必要があるということが結論

です。

 

 

 

 

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文明の利器

総務省の統計によれば、平成28年度

末の、携帯電話とPHSの契約数の

合計は約1億6,600万件で、国民

ひとりあたり1.3台を持っていると

いうことになるそうです。


携帯電話が普及した要因には様々な

ものがあると思いますが、かつての

ように、単に、通話以外にも便利な

機能があると言えるでしょう。


ちなみに、総務省の公表している

「平成28年通信利用動向調査の

結果」( https://goo.gl/MpDrTp )に

よれば、「スマートフォン保有する

個人の割合は56.8%」という状況

であり、電話機を携帯しているという

よりも、パソコンを携帯していると

いう意味合いが強いでしょう。


さらに、「スマートフォン保有する

世帯の割合は71.8%で、パソコンを

保有する世帯の割合の73.0%と

1.2ポイント差」(同調査)になって

いるということであり、スマホはPCに

取って代わるものになりつつあると

いえます。


そして、同調査では、ICTに関する

労働生産性について「テレワークを導入

している企業は未導入企業の1.6倍、

ICT教育を実施している起業は未実施

企業の1.3倍」になっているという

結果をしめしています。


これについては、私は意外と高いと

感じましたが、事業者においても、

ICTを導入することは競争力を

高める鍵になっていることは間違い

ないようです。


その一方で、私は経験的にICTに

ついて気になっている点があります。


というのは、ICTによって、どの

ような疑問についても、直ちに回答が

見つかるようになってしまい、その

結果、人はあまり考えることをしなく

なってしまうのではないかという

ことです。


さらには、最近は、AI(人工知能)も

さまざまなところで活用されるように

なってきており、かつては機械には

できない分野であった「判断業務」も、

文明の利器にとって代わるようになって

きているということです。


この人工知能の普及は、人間の行う

作業を補助し、ますます労働生産性

高めることにもなりますが、それは、

人間の仕事も奪うことにもなりかね

ません。


直ちにICTやAIが人の仕事を奪う

訳ではありませんが、ICTやAIが

周りにあるという環境で、新たな人材の

育成が求められていると思います。


このような環境に対応できるかどうかと

いうことが、これからの自社の事業の

競争力を高めるポイントになると私は

考えています。

 

 

 

 

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事業改善のタイミング

事業改善のお手伝いをする会社は、

すべてではないですが、あまり

マンパワーに余裕がない会社は

少なくありません。


それは、業績の改善のお手伝いを

依頼されるわけですから、マン

パワーに余裕がないというのも

当然といえます。


しかし、冷静に考えれば、業績が

よくないのですから、今までとは

違うことをしなければならないと

いうことはご理解いただけると

思うのですが、やはり、毎日、

目の前の課題に取り組んでいると、

新たなことに着手しようとする

ことは難しいようです。


そうなってくると、多くの場合、

コンサルタントに対して、「改善

計画を考えて欲しい」、「改善策を

実践するための銀行との交渉をして

きて欲しい」、「従業員への改善

計画の説明をして欲しい」、「改善

計画の進捗状況を毎月調べて欲しい」

という依頼をしてくるこということに

なりがちです。


これらについては、手本を見せて

欲しいという趣旨であれば、理解

できるのですが、新たな負担を

コンサルタントに依存するという

ことであれば、「コンサルタント

という名目で新たな従業員を雇用

したのと変わりありません。


もうひとつの問題点は、コンサル

タントだけが旗振りをしているという

ことになり、事業改善のための活動が

受動的に従業員に受け止められて

しまいかねないということです。


事業の改善は、少なくとも経営者が

自ら熱心に取り組んでいるという

姿勢が、従業員に伝わらなければ、

単に、忙しい中でさらに負担を

増やすだけの、余計なこととして

受けとめられてしまいます。


これは、どうしても、経営者の方が

最優先に取り組んでいるという姿勢が

見えるようにしなければなりません。


ここまで書いてきた内容からは、

「事業改善をするのは自分のこと

なのに、コンサルタントに依存

し過ぎるな」というように感じ

られるかもしれません。


確かに、そのようなことは回避

すべきですが、私がそのような

会社をたくさん見てきて感じる

ことは、決断は早めに行うべきと

いうことです。


人は、どうしても現状を変える

ことは苦手です。


だから、少し、業況が悪くなった

程度では、「なんとかなるだろう」

という楽観的な考えで、現状を

変えるための努力を避けてしまい

がちです。


しかし、それが続くと、忙しさが

増す中で、業況ももっと悪化して

しまうという悪循環に陥ってしまい

かねません。


今回の結論は、事業改善のための

決断は早めに行うようにしましょう

ということです。


こういっている私自身も、あるコンサル

タントからコンサルティングを受けて

いますが、課題を計画通りに実施できて

いません。


私自身も、早めの決断をしなければ

なりません。

 

 

 

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リスクと金利

株式、国債投資信託などの金融

商品を多くの人が利用するようになり、

リスクとリターンは正比例している

ということも多くの人に認識されて

いると思います。


すなわち、リターンが多くなるほど

投資のリスクも大きくなるという

ことです。


ところで、銀行の融資審査もこれと

同じ論理が働きます。


実際のところは、リスクを客観的に

数値化することは難しいのですが、

仮に、1,000万円の融資の

申し込みがあった会社が、1年後も

事業を続けている確率が95%、

逆に言えば、1年後に倒産している

確率が5%であるとします。


このリスクを金額で表すと50万円

(=1,000万円×5%)という

ことになります。


銀行は、この50万円をリスクと

見込んで費用を計上しますので、融資

金利が5%以上でないと、銀行に

とって、採算のとれない融資という

ことになります。

 

ところが、この会社は純資産が500

万円あるとすれば、仮に会社が倒産

しても、500万円は自社の資産で

返済してもらえそうなので、リスクは

25万円(=(1,000万円-

500万円)×5%)ということに

なり、融資金利は2.5%以上で

採算が得られることになります。


以上は、ものすごく単純な例なので、

実際はもっと複雑な計算が行われ

ますが、リスクと金利の凡その関係を

理解してもらえると思います。


よく、「銀行から自己資金が少ない

という理由で融資を断られた」という

ことを経営者の方がお話しになる

ことがありますが、この一因には、

融資金利から見て採算がえられる

見込みがないとうこともあると

考えられます。


自己資金は、本来は、創業する前に

貯めてから創業するか、すでに開業

している会社は、ある程度の過去の

利益の蓄えが備わってから、新たな

投資をすべきですが、それ以外の

方法として、ベンチャーキャピタル

(VC)からの出資を受けるという

方法があります。


ただし、VCの出資を受ける条件と

して、株式の価値が、数か年で

出資額の数百倍になることが条件と

いうことが多いようです。


ある意味、VCから見れば、高い

リスクを背負う代わりに、リターンも

ある程度が見込めることが前提という

ことでしょう。


このようなVCを利用することも

避けたいのであれば、やはり、自分

自身で自己資金をためる方法を採る

しかないでしょう。

 

 

 

 

 

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バカ正直な営業

先日、オーダーメイドスーツを販売

している株式会社museの代表

取締役を務める、勝友美さんのご著書

「営業は『バカ正直』になればすべて

うまくいく」( http://amzn.to/2w57iXB )

を拝読しました。


この本で最も心に残ったことばは、

次の部分です。


「営業マンなら、言いたくないことを

言い、したくないことをする。


そうやって、自分にウソをついてでも、

相手に気に入られることが必要だと

思っている人は結構多いんじゃないかと

思います。


けれど、私はそうは思いません。


実際、私が今までお客さまと会っている

時にしてきたことは、正直に話し、行動

すること。


面倒な決め事は一切ナシです。


もしも、これだけで営業がうまくいくと

したら、営業をするのがずっとラクに

なると思いませんか?」(同書84

ページ)


「どんなに大切なお客さまが相手でも、

自分にウソをついてまで行動を変え

ない。


これが私のモットー


営業マンだから、接待をするのは当然。


この考えにも疑問があります。


何かをしてもらう代わりに、何かを

するという考え方がまず、好きじゃ

ない。


スーツを買ってもらう代わりに、

お客さまのいうことならなんでも

聞く。


それでは単なる御用聞きです」(同書

86ページ)


引用した内容は、本のタイトル通りの

内容であり、勝さんの最も伝えたい

部分でもあるでしょう。


そして、このことは、すべての方が、

必ずしも受け入れることができるとは

限らない内容でもあると思います。


勝さん自身も、「私の考えと合わない

人は自然と離れていきます」と、本で

述べておられるように、万能の考え方

ではありません。


ところで、私がお伝えしたいことは、

「勝さんのように正直な営業をしま

しょう」ということではありません。


ただし、正直であることは大切だと

思っています。


その理由のひとつは、「『あ、今日

あの人と会わなくてはいけない』と

憂鬱になるような商談が続くことは、

限りなくゼロに近いです。


とても健やかな気持ちで、大好きな

お客さまのスーツを作らせていただ

いています」と勝さんが本で述べて

おられるように、ストレスがなく

なるということです。


もうひとつの理由は、課題を先送りに

することにならないということです。


やや意味が異なりますが「噓つきは

泥棒の始まり」ということわざが

あるように、正直でないことが積み

重なると、後から解決しなければ

ならないことが増えてしまいます。


「嘘も方便」ということわざもある

ものの、方便が多すぎると、結果と

して、事業をよい方向に進めようと

するときの足かせになってしまい

ます。


私はときどき、業績があまり芳しく

ない会社から、融資の申請のご支援を

依頼されるのですが、そのような

ときは、「これからこのように事業を

改善していきます」という改善策を

添えることで、多くの場合は融資の

承認を得ることができます。


しかし、すべてではないものの、

融資の承認を得られても、そこで安心

してしまい、銀行に約束した事業の

改善を怠ってしまう会社も少なく

ありません。


そのような会社は、「方便」を重ねて

いるだけであり、早晩、事業は行き詰る

ことでしょう。


そして、そのような会社の経営者からは

「建前ばかりではやっていけない」と

いうこをよく耳にします。


かくいう私も、100%正直に生きて

いるかというと、弱い部分もあるので、

嘘をつくことはあります。


ただ、ここで伝えたいことは、正直さを

道徳や倫理で論じるのではなく、事業を

発展させていく観点から考えれば、

近道になるということです。


これを言いかえれば、不正直さは課題の

先送りであるということです。


最後に、私の個人的な経験ですが、私が

かつて勤務していた銀行で、不良債権

多さなどから、多くの預金者が不安を

抱き、短期間に多くの預金の引き出しが

行われたとき、「建前通りに事業をして

いる会社でないと、顧客からは支持され

ない」ということを痛感したということを

付け加えさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

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