[要旨]
リーダーがその業界における『定番』をつくり上げた企業だとすると、チャレンジャーは『新たな定番』を生み出そうとする気概を持った会社だと言うことができます。すなわち、『新たな定番』が登場することによって、市場は活性化し、市場自体が伸びることにつながります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの遠藤功さんのご著書、「経営戦略の教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、業界のリーダーとなっている会社は、製品の生産数を増やすことで、スケールメリットを受けることができますが、これを規模の経済性といい、また、累積生産数が増加すると、工員の習熟度が高まることで生産性も高まりますが、これを経験曲線効果というということを説明しました。
これに続いて、遠藤さんは、業界2番手のチャレンジャーの戦略について述べておられます。「チャレンジャーは、リーダーの背中を見て走ることになりますが、だからといって闇雲にリーダーの後追いをするのは無理と言わざるを得ません。単なるリーダーの後追いは、フォロワーに過ぎません。市場が成長している時は、後追いのフォロワーでも『おこぼれ』を得ることができますが、やがて市場の成長が鈍化すれば、一番最初に脱落するのはフォロワーです。
差別性がなく、リーダーの後追いをしているだけのフォロワーは、戦略とは呼べません。リーダーがその業界における『定番』をつくり上げた企業だとすると、チャレンジャーは『新たな定番』を生み出そうとする気概を持った会社だと言うことができます。『新たな定番』が登場することによって、市場は活性化し、市場自体が伸びることにつながります。フォロワーは『定番の二番煎じ』をつくる会社に過ぎません。
業界が持続的に発展・成長するためには、『健全な二番手』が必要だと言われます。自動車業界におけるトヨタとホンダの関係が好事例として挙げられるでしょう。リーダーに『挑む』チャレンジャー存在してこそ、リーダーも発奮し、お互いの切磋宅間によって、業界の成長がもたらされるのです。チャレンジャーとは、フォロワーに成り下がることなく、独自の価値の創造に挑戦する勇気ある企業のことなのです」
私も、遠藤さんの言うように、「業界が持続的に発展・成長するためには、『健全な二番手』が必要」という考え方は、その通りだと思います。しかし、「差別性がなく、リーダーの後追いをしているだけのフォロワーは、戦略とは呼べません」というご指摘は、必ずしもそうではないと思っています。というのは、パナソニックは、社名が松下電器産業であった時代、他社の定番の二番煎じの製品をつくっていたことから、「マネシタ電器」と揶揄されていたことがありました。
二番煎じというイメージは、あまり良くありませんが、確実に売れることが分かっている製品を、後出しジャンケン的に販売すことで、リサーチ、開発、広告などの費用を抑え、確実に利益を得ることができます。そして、こういった、二番煎じ戦略は、中小企業でも実践できる場合があると、私は考えています。例えば、模倣というよりも、パロディ製品と言えるかもしれませんが、「フランク三浦」を販売している、ディンクスなどは、そのよい例ではないかと思います。
2024/3/25 No.2658