[要旨]
組織開発の効果は、(1)目標を達成できるようにすること、(2)活動しやすい環境を確保する、(3)組織文化などを形成するという効果があります。しかし、この組織開発は、経営者にとって難易度が高い面があるため、なかなか取り組みにくいものの、それを実践できれば、他社との競合に差をつけるチャンスになります。
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今回も、前回に引き続き、コンサルタントの早瀬信さんたち3人の著書、「いちばんやさしい『組織開発』のはじめ方」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、組織開発とは、現場にいる人たちが自ら、人と人との関係性を通して、組織内の違和感のあるプロセスを見通し、より良い組織をつくる活動を指しており、すなわち、人材開発が個人の能力を高める活動であることにとに対し、組織開発は組織の仕組みなどを改善する活動であるということについて説明しました。これに続いて、早瀬さんは、組織開発で得られる効果について述べておられます。
「では、『良いチームや良い組織』の『良い』とは、どのような状態を指すのでしょうか。それには、3つの観点があると言えます。(1)効果性:目標が達成できる…企業組織であれば、『予算を達成する』、『ヒット商品を開発する』、『品質を安定させる』などが想定できます。スポーツチームであれば、『試合に勝つ』ことでしょう。つまり、組織として成果を上げられるかどうか、『効果性』という観点です。組織開発では、関係する人々が共に活動するため、納得して目標に向かって動くチームができています。その結果、目標達成に素早く近づけるようになるのです。
(2)健全性:明るくイキイキ元気がある…目標達成ができる組織の共通点は、『コミュニケーションがきちんと取れている』、『助け合える』、『教え合っている』など、明るくイキイキしていることです。つまり、組織が『健全性』を保てているか、という観点です。組織開発では、人と人との関係性を築きながら、組織のプロセスを見直していくので、人間関係が深まり、支援関係が生まれるため、メンバーは元気になっていきます。
(3)継続性:良い状態を自分たちで継続できる…目標を達成し、明るく元気がある、でも、人事異動で課長が代わったら、チームの雰囲気が変わり、以前ほど活気がなくなってしまった、結果として、業績も振るわない……これでは困りますね。企業に限らず、組織での行動は長く続いていくべきものです。たとえ、リーダーが代わっても、あるいは先輩が卒業しても、新しいメンバーが入ってきても、同じように明るくイキイキした雰囲気を変えず、目標を達成し続けていく。つまり、組織の風土をつくり上げ、それを維持していく『継続性』という観点です」(35ページ)
組織開発は、目標を達成できるようにするために行うということは、ある意味、当然のことです。そのために、健全性や、継続性を高めることが必要になってくるということだと思います。私は、特に、継続性がポイントになっていると考えています。というのは、組織風土や組織文化というのは、一朝一夕にはつくることができないからです。でも、逆に言えば、よい組織風土は、新しいメンバーにも良い影響を与え、メンバーが単独で活動するよりも大きな成果につながります。
そこに組織の大きなメリットがあると思います。ところが、組織開発とはどいうことか、漠然としている面があるし、また、理解できたとしても、決して易しい活動ではないと思います。だからこそ、うまく組織開発に取り組むことができる経営者は、会社をより強くすることができると言えるでしょう。
2024/3/10 No.2643