鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ゾンビ会社はなぜ減らないのか

[要旨]

日本には、全体の約1割の、16.5万社のゾンビ会社があると言われています。これらの会社がなかなか減らない要因は、ゾンビ会社は立場の弱い会社として政府の手厚い支援があること、また、経営者が外聞を気にして、なかなか、銀行への支援を求めようとしないことなどが考えられます。


[本文]

11月10日に、インターネットテレビAbemaTVの番組で、帝国データバンク情報統括部長の上西伴浩さんと、ライブドアやZOZOなどの幹部を務めた経験のある実業家の田端信太郎さんが、ゾンビ会社について対談していました。番組の中で、田端さんは、「日本は資本主義の国で、金融は基本的に市場経済で行われるべきだと思っているが、ゾンビ企業に対して公的なお金が何らか手当てされているように見える。

純粋な借り手と貸し手による、“焦げついても貸したほうが悪い”“それに見合う金利を取っていたから仕方ない”で済む話ではない。医療に例えれば、生き返る見込みがない人間に対して輸血をしているようなもの」と指摘しています。これに対して、上西さんは、「金融機関の本業支援などに相談すれば、出口対策の余地はあると思う。経営者は孤独で、“取引先にバレたらまずい”、“金融機関に行ったらまずい”と。金融機関とちゃんとコンタクトしている方は、実際に相談している人もいる。経営者の考え方の違いで損得が分かれている」とコメントしています。

さらに、田端さんは、「一番肝なのは、この会社は“生き返る”、“手遅れだから放っておこう”という判断を誰がどうやるかだ。それをする人がいなくて、ほとんどの人がどうせ関わるだけ無駄だと思っている」と指摘しておられます。これに対して、上西さんは、「“助ける・助けない”の線引きを誰がするのかは何も明文化されていない。サービスや商品に違うやり方でやったら収益が上がるような価値があれば、投資もされるだろう。

トリアージではないが、何らかのロールモデルをいくつか作って示していけば、頑張る人は頑張るところに来ていると思う」と答えておられます。私は、このお2人の会話の内容は、極めて正鵠を射ていると考えています。ゾンビ会社は、社会全体からみれば、存在しない方がよいと、ほとんどの方が考えると思いますが、同時に、個別の会社に対しては、「なんとか助けてあげることはできないのか」と考えたりします。

本来なら、田端さんもご指摘しておられるように、ゾンビ会社は信用が低いのだから、ゾンビ会社への融資もそれに見合った高い金利で融資すべきなのに、一方で、「頑張って業績を回復させようとしている会社には、低利で融資して支援しよう」という視点で、政府(政府系金融機関)が低利融資で支援をします。したがって、ゾンビ会社はどうすべきかという、国民の意見がまとまらないと、現状は続くことになると思います。

もうひとつ、私が問題だと考えていることは、上西さんがご指摘しておられるように、業績が悪化した会社は、社会的な体面を気にして、銀行などに業績回復のための相談をしたり、事業再生の要請をすることを躊躇することがあるということです。これに関しては、私も、銀行勤務時代に、特に、地方都市の会社ではよく目にしました。

ただ、地方では、地縁・血縁などのしがらみが強く、事業再生の決断をすることに躊躇するという、経営者の気持ちも理解できなくもありません。ただ、最終的に倒産してしまうよりも、それに至る前に何らかの対策を取る方が、結果として、その経営者に対する地域からの評価は違ってくると思います。今回の記事に結論はなく、現状がどうなっているのかという説明だけで終わります。

2022/11/21 No.2168