[要旨]
コロナ禍の影響で収入が減った法隆寺は、境内の整備費用をクラウドファンディングで募ったところ、2千万円の目標を半日で達成しました。このような、法隆寺を支援しようとする人たちがいることは、法隆寺にとって、貸借対照表には表れない「無形の資産」であり、仮に銀行が法隆寺の融資審査をするとしたときに評価されるポテンシャルと言えます。
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新型ウイルス感染防止対策の影響で、参拝者が減少したことから、境内の整備費用の捻出のために、6月15日に開始した、法隆寺のクラウドファンディングが、開始日の半日で、目標額の2千万円を達成したそうです。支援募集から3日目の本日は、支援額は、約6千万円になっており、法隆寺を支援したいと考える方の多さにはたいへん驚かされます。
そして、このような、支援したいと考える人の多さは、法隆寺にとって「無形の資産」と言えるでしょう。仮に、銀行が法隆寺から融資を申し込まれたとしたら、貸借対照表に現れていない、この「無形の資産」を、「ポテンシャルがある」として、きっと評価することでしょう。実際には行われないと思いますが、仮に、法隆寺が新しい建物を建てるので、支援者からの寄付が集まるまで、建築代金の融資をして欲しいと、銀行が依頼されたとしたら、前述の「無形の資産」を評価し、すぐに融資承認を出すのではないでしょうか?
このような「無形の資産」は、一般の会社でもみられる例です。例えば、外食店のドムドムハンバーガーでは、コロナ禍で迎えた2021年3月期決算は、店頭販売だけの売上高は前年比98%台後半だったそうです。でも、15万枚(2021年4月時点)も販売された、ドムドムハンバーガーのロゴマークの入ったメッシュマスクなど、グッズのEC販売が好調で、全体の売上高は前年比109%に伸びたそうです。
すなわち、同社の売上の約10%はECサイトだったということですが、これも、法隆寺と同様、ドムドムハンバーガーのファンの多さの現れでしょう。そして、このような「無形の資産」は、ピンチのときこそ、自社の事業を助けてくれます。会社の経営環境が追い風のときは、あまり意識できないことですが、現在のように逆風が吹いている時こそ、自社を応援してくれる顧客づくりを意識することが大切ということを、法隆寺のクラウドファンディングの成功例を見て感じました。
2022/6/17 No.2011