[要旨]
デューデリジェンスとは、『最善』を意味するDueと、『努力』を意味するDiligenceを合わせた言葉で、直訳すると、『最善の努力』という意味です。特に、会社の資産の額を示している、貸借対照表の金額は、会計の手続きの観点で価額が算定されているために、M&Aの際に、そのまま買収価格とすることは妥当でないことから、デューデリジェンスによって、妥当な価格を求めなければなりません。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、成果の見通しにブレがある事業は、会計的にリスクがあると言われますが、そのような事業を営むには、純資産比率を高くするなど、財務的な安全性が求められるということを説明しました。今回は、デューデリジェンスについて説明します。
「デューデリジェンスとは、『最善』を意味するDueと、『努力』を意味するDiligenceを合わせた言葉で、直訳すると、『最善の努力』という意味になる。もともとは、1980年代に、M&Aの中で、買収する側の会社が、買収される会社に対して行なういろいろな調査を意味する言葉として使われ始めた。その後、新たに株式公開をする会社に対する調査など、会社に対するさまざまな調査を意味する言葉として使われてきている。ただ、一般にデューデリジェンスというと、M&Aの中で買収された会社に対して行なわれる調査を意味する場合が多い」(275ページ)
M&Aをするとき、買収される会社の調査が必要ということは、多くの方が理解できると思います。そして、その理由については、次回以降、順を追って説明したいと思います。ただ、会計的な面で、仮に、買収される会社が、正確に会計処理を行っていたとしても、それでも調査が必要になるということを、今回、強調しておきたいと思います。それは、貸借対照表の資産の額は、必ずしも、時価ではないからです。
繰り返しになりますが、会計の手続きでは、貸借対照表に計上する資産の額は、時価で決めることにはなっていません。というのも、会社の資産は、時価を求めることが煩雑であるために、便宜的に計算された価額を計上したり、また、時価を算出することが難しいために、これも便宜的な価額を計上したり、さらに、利害関係者保護のために、あえて価額を低く見積もったりするからです。したがって、会社を買う場合、貸借対照表の金額は、そのまま、買収価格にできないので、デューデリジェンスを行うことが必要になってくるということです。
2022/5/3 No.1966