[要旨]
経営者の方の事業運営上の判断は、法律に触れないものとすることは、最低限のことです。よい成果を得るためには、さらに、ビジネスの観点からよい判断を行うことが必要ですが、この観点を持たずに判断をしてしまうことは避けなければなりません。
[本文]
岡田正宏さんが制作しているポッドキャスト番組に出演していた、弁護士の平岡卓朗先生のお話を聴きました。平岡先生によれば、平岡先生は、すでに中小企業診断士の資格も取得しており、顧問先の事業が発展するための、より、適切な助言をしていきたいとお話しされておられました。
資格が2つあれば、助言の幅が広がるということは、すぐに理解できますが、平岡先生は、幅が広がるというよりも、多面的に助言をしたいとお考えのようでした。というのは、顧問先から、「コロナで売上が減ってしまったので、従業員の給料を下げたいが、いくらぐらいまでなら大丈夫なのか」という質問を受けたとき、弁護士としては、違法にならない額を回答することになります。
顧問先の経営者は、給料を下げることで、減益の幅を縮めようと考えているわけですから、違法にならない範囲で給料を引き下げることは、ある面で、会社を守ることにつながります。しかし、平岡先生は、中小企業診断士としては、違法かどうかにかかわらず、いま、従業員の給料を下げれば、士気が下がり、業績をさらに悪化させることになりかねないとも助言できるようになると、お考えのようです。
すなわち、法律に触れない判断をしたとしても、それは、必ずしも、ビジネスの観点から正しいとは限らないということです。このことについては、多くの方が理解すると思うのですが、私も、ときどき、手続きに問題がないかということだけに関心を持つ経営者の方に会うことがあります。冷静に考えれば、法律に触れさえしなければよいということであれば、誰でも経営者を務めることができます。
でも、会社の経営は、法律を守ることは当然で、さらに、よい成果を得るために、さまざまな要因を勘案しながら難しい判断を行い、その良し悪しで成果が決まるものであるということは言うまでもありません。でも、窮地に立っている経営者の方は、最低限の法律に触れているかどうかしか、気がまわらなくなるのでしょう。平岡先生のお話を聴いて、とても頼もしい専門家の方がいらっしゃるということを感じました。