鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

助言も改善も部分最適でなく全体最適を

[要旨]

中小企業の助言を行う外部専門家は、自分の専門分野を中心に助言を行う傾向があり、それをそのまましたがってしまうと、助言を受けた会社の改善活動も、部分最適の改善活動を行ってしまうことになります。したがって、改善活動が部分最適になることを避けるためにも、経営理念と、それを目指すための経営戦略を明確にし、それらを遂行するための活動はどういうものかを検討することが求められます。


[本文]

飲食店コンサルタントの中西敏弘さんのメールマガジンを読みました。メールマガジンの要旨は、「中西さんが、あるラーメン店経営者から、事業改善の相談を受けたが、そのラーメン店は、それまで、顧問会計士からの助言により、利益を得るためにFLコスト(食材費と人件費の合計額)を下げることに注力していた。そこで、中西さんは、コストの管理に注力するよりも、客数を増やすことによって売上高も増やす方法を実践することに注力することを助言した。その会社は、直ちにそれを実践したところ、1か月で売上が増加傾向になった」というものです。

この事例から学ぶことはたくさんあると思うのですが、経営コンサルタントとして、私は、「部分最適」の助言をすることは避けなければならないということを、改めて感じました。外部専門家には、営業系、運営系、財務系、情報技術系さまざまな方がいるのですが、私自身も、自分の専門分野を中心に助言をしてしまいがちです。

そして、中西さんが相談を受けた会社は、会計士から、その方の専門分野である、会計面での助言を受けたため、改善活動も部分最適になってしまい、事業活動全体が改善しなかったのだと思います。私がコンサルティングをする場合、事業活動のすべてについて、適切に助言できるわけではないのですが、まず、経営理念を明確にし、それを達成するための簡易な戦略マップを作製してから、限られた経営資源を、どの改善活動にどれくらいあてるべきかということを考えてから、助言を行うようにします。

なお、助言を受ける側も、販売活動や、生産活動に関する助言を求めようと傾向があります。一方で、財務活動、労務活動などの間接部門の活動への助言は、あまり関心がない方が多いようです。もちろん、それぞれの改善活動に対して、どれくらい注力するとよいのかということについては、会社の状況に応じて、めりはりをつけるべきだと思います。しかし、前述のラーメン店のように、偏った改善活動を行わないようにすることにも留意しなければならないでしょう。

2023/6/20 No.2379