[要旨]
ジャパネットたかたは、メーカーが上手に販売できなかった製品を、上手な説明の仕方でヒット商品にすることで、業績を伸ばして来ました。このことから、製品の価値は、製品そのものよりも、販売の方法にあるということがわかります。
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前回、ジャパネットたかた創業者、高田明さんが書かれた本、「伝えることから始めよう」の感想を書きましたが、もうひとつ注目したことがありました。それは、同社がラジオの通信販売を始めたころ、メーカーが多量の在庫を抱えて困っていた24万8千円のワープロ兼用パソコンを、5,000台も売ったということです。
現在は、チャネルリーダーは、メーカーや卸売会社ではなく、小売業者であるということは、広く、知られています。チャネルリーダーとは、商品の販売価格や数量などの、取引条件を決めるときの主導権を握っている会社のことです。現在は、高品質の製品が低価格で販売されるようになっているので、どのように販売するかが製品が売れるかどうかの鍵になっています。そこで、ジャパネットたかたのように、実際に製品を販売する小売業者が、チャネルリーダーになるということは、容易に理解できます。
では、どういう売り方をすることで、チャネルリーダーになれるのかという具体的な方法は、私は詳しく知りませんでした。高田さんの場合、ひとことで言えば、商品の良さを伝えるということです。そう言ってしまえば簡単ですが、それは、高田さんの独自の工夫があるということはもちろん、メーカーの立場ではなく、利用者の立場に沿った提案をしているということです。これもひとことで言えば、ベネフィットを説明しているということでしょう。そして、その売り方こそ、高田さんのご著書のタイトルである、「伝えることから始めよう」ということでしょう。
ちなみに、高田さんは、その優れた販売手法で、前述のワープロだけでなく、若者向けの製品と考えられていたタブレット端末を、高齢者に多く販売したり、床を掃除する掃除機として開発されたレイコップを、布団向けの掃除機としてヒットさせたりしたそうです。今回、高田さんの本を読んで改めて感じたことは、「価値」は製品そのものよりも、「製品の提供の仕方」にあるということです。これから新たな事業を始めるときは、価値がどこにあるのかということを見極めることが、ますます重要になってくると思います。