鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

兎角亀毛

[要旨]

事業を営んでいれば、リスクを避けることはできないものであり、それを避けようとせず、うまく対処する能力を持つことが、経営者としての能力が問われる所です。


[本文]

先日、実業家の堀江貴文さんが、東洋経済に、事業とリスクに関するコラムを寄稿していました。その要旨は、仏教の教えに、「兎角亀毛」(とかくきもう)というものがあり、それは、「うさぎに角があるわけではないし、かめに毛が生えるはずもないのだから、そんなものについて考えても意味がない」というものだ。

ところで、多くの人は、「死んだらどうなるのか」とか、「人生の目的は何のか」などと、将来を憂うことを考えてしまうが、そのような考えは、堀江さんにとっては、兎角亀毛のように、考えることに意味がないことだ。なぜなら、人生にはリスクはつきものであり、それらは避けようとしても避けることはできないからだ。しかし、そうでありながら、人によっては将来のリスクにおびえ、常に将来のことを心配してしまう。

例えば、堀江さんが運営しているオンラインサロンでも、「この案件、おもしろそうだし、あなたがやってみたら?」と堀江さんが勧めると、「やってみます!」と即答する人がいる一方で、いろいろと理屈をこねて、最後の最後までやろうとしない人もいる。そのような一歩を踏み出すことができない人は、リスクに打ち負けてしまう程度の意欲しか持っていないということだ。「本当にやりたいこと」を見つけた人というのは、多少のリスクがあっても、勝手に突っ走り始めるものだ、というものです。

私も、堀江さんと考えは同じです。そして、私がこれまで見てきた経営者の方たちは、堀江さんほどではなくても、リスクを、(いい意味で)楽しんでいる方の割合の方が、そうでない方の割合よりも高いと感じています。すなわち、リスクにびくびくしている人は少数派だと思っているのですが、それは、リスクにびくびくしている人が少数というよりも、リスクにびくびくしている人は、経営者には向かず、自ら「経営者」を辞めていった結果だと思っています。

だからといって、単に、経営者はリスク志向であればよいのかというと、私は、それだけでは不足すると思っています。リスクに立ち向かうには、それに対する十分な備えをしておくなど、リスクが顕在化した時にきちんと対処できなければ、事業の継続も難しくなります。例えば、現在、新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動が思うようにいかない会社が多いと思いますが、前もってBCPの策定をしていた会社は、その影響を減らすことができています。

逆に、リスクを恐れていないとしても、後先考えずに、何の備えもせずに事業に臨んでいるだけの会社は、早晩、事業が立ち行かなくなるでしょう。すなわち、私は、経営者の能力は、事業活動ではリスクを避けることができないものの、それをどうコントロールするかというところで発揮されると考えています。もうひとつ付け加えたいのですが、リスクにびくびくしている経営者の方は、すべてではありませんが、事業方針を問うと、事業を拡大したいと答える方が少なくありません。

私は、事業は、必ずしも拡大する必要はなく、縮小均衡という言葉もあるように、規模が大きくなくても、利益が得られていれば継続することができます。もし、事業活動をするにあたって、リスクを避けたいのであれば、商品の付加価値を増やしたり、支出を減らしたりする手法をとればよいのですが、リスクを避けたいと思いつつ、事業も拡大したいと希望しているという矛盾する考え方を同時に持っている経営者の方に会うことがあります。

これは私にもあてはまりますが、人は、無意識のうちに、互いに矛盾した考え方を、同時に持ってしまうこともあるので、そのような経営者の方がいることは、あり得ることだとは思うのですが、会社経営者の方は、一般の方と比較して、重い責任を担っていることから、矛盾した考えを持つことは、避けなければなりません。そう考えれば、経営者の資質とは、リスクとどう付き合うのかということに尽き、そして、それは堀江さんも指摘しているところでもあると思います。

 

 

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