鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

損益分岐点分析(5)

[要旨]

限界利益とは、Marginal Profitの訳語で、売上で得られた代金の端の方にある利益という意味です。


[本文]

前回まで損益分岐点分析について説明してきましたが、今回は、限界利益について少し解説します。限界利益とは、売上高と変動費の差を示しており、また、商品が1つ売れたときに増加する利益のことでもあります。ただ、「限界」ということばは、日本語では、「制限」、すなわち、英語のLimitという意味を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、限界利益は、英語のMarginal Profitの訳語です。

Marginalは形容詞ですが、その名詞形はMarginで、日本語でも、しばしば、マージンという外来語で使われることがあります。ビジネスで使われるマージンとは、利幅や利鞘という意味ですが、それは商品を販売して得られた金銭の端の部分を指します。したがって、Marginalとは、「端の方の」とか、「周辺部分の」ということになるのですが、それが、限界利益が訳されるときに、「限界の」という日本語をあてられたようです。

でも、限界利益では、直感的に理解しにくいと思いますので、仮に、私が訳す立場にいたとしたら、多くの方が理解しやすいように「周辺利益」と訳したと思います。とはいえ、現在は、限界利益ということばで広まってしまっており、いまからこれを変えることは難しいと思いますので、「限界利益とは、端の方にある利益」と理解していただければと思います。

ちなみに、限界利益と同じものを指すことばに、貢献利益というものがあります。貢献利益の貢献とは、(営業)利益を増やすことに貢献する利益という意味で使われているようです。したがって、限界利益を貢献利益と言い換えることもできなくはないのですが、私は限界利益を貢献利益に言い換えることは避けた方がよいと考えています。その理由は、貢献利益は別の意味でも使われることがあるからです。その場合、貢献利益とは、売上から変動費と部門固定費を引いた残りを指します。

部門固定費とは、商品や顧客などの部門別に変動費、固定費を計算する管理会計の考え方で計算された固定費のひとつです。その場合、固定費は、部門固定費と共通固定費に分けられます。したがって、部門別に損益を計算するときの貢献利益とは、貢献利益=売上高-変動費-部門固定費=限界利益-部門固定費ということになります。むしろ、貢献利益は、こちらの意味で使われることが多いようです。したがって、混乱を避ける観点から、限界利益と同じ意味で貢献利益を使わないようにした方がよいでしょう。

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