[要旨]
製品を生産する際に発生するすべての原価を計算するものを全部原価計算といい、原価を変動費と固定費に分け、変動費だけを対象とする原価計算を、直接原価計算と言います。そして、直接原価計算は、管理会計の考え方に基づく原価計算です。
[本文]
前回は、標準原価計算を行っている場合であっても、会計期間の終わりに実際原価を計算し、さらに、実際原価と標準原価の差異である価格差異と数量差異を算出してから、それらを主に売上原価に計上するということを説明しました。今回は、全部原価計算と直接原価計算について説明します。前回までの説明してきた原価計算は、製品を生産する際に発生するすべての原価を計算するものでしたが、これを全部原価計算といいます。一方、原価を変動費と固定費に分け、変動費だけを対象とする原価計算を、直接原価計算と言います。
この変動費とは、生産高に比例する原価であり、固定費とは生産高にかかわらず一定額である原価をいいます。しかし、変動費や固定費は、実際に把握することは難しい費用です。というのは、財務会計の科目では、変動費や固定費に分類できる科目もありますが、どちらかに分けることができないものもあります。では、変動費と固定費が明確にできないにもかかわらず、なぜ、直接原価計算を行うのかというと、直接原価計算は、財務会計の考え方ではなく、管理会計の考え方に基づく原価計算だからです。ちなみに、変動費や固定費も管理会計の考え方に基づく費用です。
それでは、この変動費や固定費という管理会計の考え方が、なぜ、用いられるのかというと、固定費は、ほぼ、コントロールできない費用である一方、変動費はコントロールできる費用なので、管理の対象を変動費に絞ろうとすることによるものです。この変動費と固定費の考え方で、よく利用されているものが、CVP分析です。CVP分析は、損益分岐点売上高を計算し、それを超える売上高を得ることによって利益を得ようとするときに使われます。これについては、今回は詳しく解説しませんが、経営判断に、より有益な情報を得るための会計が管理会計であり、それに基づいて行われる原価計算が直接原価計算であるということです。
2022/3/30 No.1932