今回は、もう7年近く前のことですが、
ニューヨークの地下鉄で行われた、著名な
バイオリニストのジョシュア・ベル氏の実
験について述べたいと思います。
この実験は、演奏会のチケットが100ド
ルもするベル氏が、ニューヨークの地下鉄
のホームで、3億5,000万円のバイオ
リンで演奏したとき、通行人たちはどのよ
うな反応を示すかということを試したもの
です。
(ご参考→ https://goo.gl/XYaGB9 )
実験結果は、ベル氏が45間演奏している
間、約20人の人が投げ銭をし、その集
まった金額は32ドル、1時間の演奏を終
えるまでに演奏者がベル氏だと気づいた人
はいなかったそうです。
この実験から分かることはさまざまなので
すが、私が指摘したいと思ったことは、一
定の品質は、特殊な人しか分からないとい
うことです。
恐らく、ベル氏の演奏を聴いた人は決して
下手とは感じていないと思いますが、だか
らといって、100ドルのチケットを払う
相手なのかどうかは、自分自身で判断でき
る人は少ないのだと思います。
(気づく人がいたとしても、ベル氏の演奏
をゆっくり聴く余裕がなかったということ
もありますが)
これを言い換えれば、ベル氏の演奏を聴く
ために100ドルのチケットを買う人は、
自分自身で100ドルの価値があると判断
しているのではなく、専門家が評価してい
るから100ドルを支払うのだということ
でしょう。
私は、この実験を知ったとき、漫才師の島
田洋七さんの自伝小説「佐賀のがばいばあ
ちゃん」( http://amzn.to/2I6kuT3 )を思
い浮かべました。
同書は、ウィキペディアによると、「洋七
の祖母の逸話を耳にしたビートたけしが、
最初に書籍化を強く勧め、洋七がそれに応
え執筆した。
1987年に『振り向けば哀しくもなく』
という題名で太田出版から3,000部を
自費出版。
2001年に加筆・修正のうえ『佐賀のが
ばいばあちゃん』と改題し、愛育社から2
度目の自費出版。
2004年に徳間書店で再出版され、一気
に話題と」なったそうです。
同じくウィキペディアによると、その後、
同書の関連本まで含めて2007年までに
400万部が売れたほか、映画化、テレビ
ドラマ化、コミック化、舞台劇の上演がさ
れるまでにヒットしています。
もちろん、この本の内容はすばらしいもの
と思いますが、最初の出版から10数年を
経てからヒットしたきっかけは、島田さん
自身がこの本を持って、全国でがばいばあ
ちゃんに関するトークショーをしたことの
ようです。
裏を返せば、中身は良くても、単に出版し
ただけではヒットしないということです。
ちなみに、80年も前に出版された、吉野
源三郎の「君たちはどう生きるか」
( http://amzn.to/2FWoo01 )が、最近、
ブームになり、コミック版が170万部、
新装版が40万部売れているそうです。
このような本があるということを知ると、
実は、あまり話題にはならなかったけれ
ど、実は名著だったという本がもっとある
のではないかと思えてきます。
今回の結論は、売れない商品=だめな商品
とは限らないということです。
ですから、売れない商品は、その良さに気
づく人が少ない可能性もあるので、絶えず
情報発信を行うことが大切だということ
を、ベル氏の実験を見て感じました。
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