鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営者と銀行の赤字に関する認識の違い

これは、私がこれまで何度も述べてきたこ

となのですが、今回、赤字に関する銀行と

会社経営者の認識の違いについて、改めて

述べたいと思います。


融資をしている会社が赤字になると、いっ

たん、銀行は、その赤字をそのまま受け止

めます


たとえ赤字であっても、事業は続いていく

だろうとか、一時的なものかもしれないと

いう観点で見ることはしますが、赤字の会

社は赤字の会社です。


少なくとも好ましい状況ではありません。


そして、詳細は割愛しますが、銀行は赤字

の会社に対して警戒を始めます。


一方、赤字になった会社経営者の多くは、

赤字になったことをあまり深刻に受け止め

る方は少ないようです。


中には、赤字になったことを重く受け止め

る経営者の方にお会いしたこともあります

が、残念ながら、そのような方は少数派で

した。


では、なぜ、多くの経営者の方は赤字につ

いて、あまり敏感ではないかというと、そ

の理由のひとつは、現在の経営環境は中小

企業にとって逆風下にあるから、会社の事

業は赤字になることはやむを得ないと考え

ているからのようです。


でも、それは表向きであり、実際は、赤字

になったからといって、直ちに事業は行き

詰らないからです。


それはなぜかというと、事業が赤字であっ

ても、資金繰は直ちに底をつかないからで

す。


そこで、まだ資金があるので、そのうちに

挽回すれば大丈夫だと、安易に楽観視して

しまうのでしょう。


もうひとつの理由は、多くの中小企業の場

合、組織としては会社であっても、実際は

経営者個人の信用、いわゆる「顔」で事業

を営んでいるという面もあると思います。


例えば、多くの会社は、「赤字の会社に対

しては商品を販売(購入)したくない」と

いう方針を持っていると思いますが、経営

者が「どうか、自分の顔を立てて、自社に

商品を販売(自社の商品を購入)して欲し

い」と頼み込めば、会社が赤字であること

の影響は少なくなります。


いわゆる「浪花節」です。


そして、今回の記事の結論は、会社の事業

が赤字になった場合、それを直ちに改善す

る活動に取り組むべきということなのです

が、その前に、これからのビジネスは「浪

花節」は通用しなくなっていくということ

も強調したいと思います。


それは、現在のビジネスの世界では、年を

追って透明性が求められつつあり、当事者

にしかわからない事情で決定が行われるこ

とは批判されるようになってきています。


私が銀行職員時代には、赤字の会社に対す

る融資の稟議書を書いているとき、その案

件を取り上げようとする理由に事欠いて、

「経営者の人がらは極めて良好であり、主

力銀行として引き続き支援したい」という

決まり文句を書くことがあったのですが、

いまは、そのような抽象的な理由はまった

く考慮されなくなっているでしょう。


そのような背景を考えると、これからは、

中小企業であっても、決算書の数字に敏感

になっていく必要は高まっていると考えま

す。

 

 

 

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人手が多くても繁盛するとは限らない

8月のことですが、徳島市の伝統行事であ

阿波踊りについて混乱がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/T3ahPp


これに関して、たくさんの報道があったの

ですが、誤解をしている方も多いと感じま

した。


誤解のひとつは、地域新興を支える役割が

ある市役所が、なぜ、「総踊り」をしよう

とする踊り手と対立したのかということで

す。


これについては詳細は割愛しますが、かつ

ての阿波踊りの主催者であった徳島市観光

協会が4億円を超える累積債務を抱えてお

り、今年3月に、徳島市は同協会の銀行か

らの借入金を肩代わりし、同協会の破産申

し立てをしています。


もっと簡単に言えば、「昭和50年代から

発生してきた」(徳島市役所のホームペー

ジより)累積赤字について、これ以上増や

すことを避けるために、同協会を破産させ

たということです。


ここで、私がお伝えしたかったことは、徳

島市は唐突に同協会を破産させたのではな

く、同協会が累積赤字の問題解決をここま

で先送りしてきており、その問題点は同協

会も認めていることから、単に徳島市の対

応だけを批判することは妥当ではないとい

うことです。


ふたつめの誤解は、「お祭りはたくさんの

人手があるのだから、工夫さえすれば、お

祭りの運営は黒字化できるはずだ」と考え

ることです。


4日間開かれる阿波踊りの人手は、今年は

108万人、昨年は123万人だったよう

です。


これだけの人手があれば、それなりの収入

もあるはずだと考える方が多いのも仕方な

いのかもしれません。


そして、社会起業家の木下斉氏によれば、

23万人の集客がある宮崎県宮崎市の青島

ビーチパークや、25万人が集まる札幌大

通公園の夏のビアガーデンなどは、黒字で

運営されており、地方のお祭りが赤字にな

ることを防ぐことが、決して不可能である

というわけでもないようです。


(ご参考→ https://goo.gl/nYz9xU


しかし、私も地方のお祭りの支援に携わっ

た経験から、お祭りの黒字化は決して容易

ではなく、阿波踊りの運営についても、現

実として30年以上赤字が続いていたとい

うことも、多くの方に受けとめていただき

たいと思っています。


その赤字の原因はひとつではありません

が、大きなもののひとつは、伝統行事であ

るから不採算になっても仕方ないという考

え方が広がることです。


私は、この考え方はおかしいと思っていま

す。


なぜなら、伝統行事を理由とするならば、

広告を出したり、無料バス運行などによっ

て集客することは行わず、自然体でお祭り

を行うべきです。


私は、広告を出したり無料バス運行を否定

はしませんが、そのような“商業的”な考

え方に基づいてお金をかける以上、赤字に

ならない範囲で広報を行うか、または、お

祭りに参加する方々でそれらの費用を負担

すべきです。


ただ、“お祭り”の錦の御旗があると、当

事者の人たちは、ある面で甘えが出てしま

い、それが長く続くとそれが当たり前と感

じてしまうことが、今年の阿波踊りのよう

な混乱につながってしまったのだと思いま

す。


と、ここまで阿波踊りの混乱について書い

てきましたが、今回の記事の主旨は、お祭

りへの批判でも、それに関して誤解をして

いる人たちへの批判でもありません。


実は、私が小売業や飲食店を営もうとする

方から融資のご相談を受けるとき、「●●

地区は人通りが多い」という要因だけで売

上が得られると安易に考えている方が多い

ということです。


もちろん、人手の多い場所で事業展開する

ことは、売上を増やすためのひとつの要因

ではありますが、それだけで売上が増える

ほど、事業は単純ではありません。


競争環境の激しい時代にあっては、マーケ

ティングミクス、マーチャンダイジング

ターゲティング、ポジショニングなど、精

緻な戦術を打ち出さなければなりません。


今回、阿波踊りのもめごとを見て、事業展

開はどんぶり勘定ではなく、精緻に行うこ

との大切さを改めて感じました。


自社の事業は、“お祭り”ではなく、実業

として考えなければ、安定した運営は実現

しないでしょう。

 

 

 

 

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クルー満足度84%

いま、マクドナルドさんのテレビコマー

シャルで、「働く環境のクルーの満足度

は84%」と放送されています。


( https://youtu.be/kgLdkpz9ET8 )


この満足度は、とても高いと私は感じて

います。


そして、現在、私が制作しているPod

cast番組にご出演していただいてい

る、マクドナルドOBで、経営コンサル

タントの松下さんのお話をきいている

と、その数値は決して嘘ではないと感じ

ます。


同社では、従業員の方が職場をあまり評

価せず、短期間で退職してしまうと、さ

らに募集をしたり育成したりするコスト

が膨らんでしまうので、それを防ぐため

に、従業員の満足度を高めているようで

す。


そして、それは、顧客満足度にもつなが

る、一石二鳥の施策でもあります。


ただ、この従業員満足度を高めるための

活動は、確かに容易ではないようです。


例えば、マクドナルドでは、時給を上げ

るときや昇格させるときの根拠を、すべ

て書き出して、店内に掲示しているよう

です。


松下さんによれば、その書き出した内容

は、畳一畳分にもなるそうです。


こうすることで、評価の公平さを従業員

に理解してもらえるので、不満がなくな

るだけでなく、従業員自身がどれだけ成

長したかを自ら確認でき、そして、自分

がどれだけお店に貢献しているかもわか

るので、士気が高まるということです。


そして、松下さんは、そのようなことを

するために労力やコストは必要ではある

ものの、従業員に短期間で辞められてし

まうことによって発生する労力やコスト

に比べたら、ずっと少ないということで

した。


多くの経営者の方は、「事業を発展させ

るためには、顧客満足度を高めなければ

ならないが、そのためには、まず、従業

員満足度を高めなければならない」と聞

いても、「そんなことはわかっている

が、それは建前で、現実にはそんなこと

はなかなか実践できない」と考えている

のではないでしょうか?


上から目線で恐縮ですが、私は、そのよ

うに考える経営者の方は、実は、従業員

満足度を高めることができないか、また

は、億劫がっているだけで、それを正当

化するために、従業員満足度を高めるこ

とは建前というように言い訳しているの

だと思います。


しかし、繰り返しになりますが、松下さ

んは、従業員満足度を高めるための労力

やコストは、新たに従業員を募集し、育

成する労力やコストよりも少ないと述べ

ています。


それが事実であれば、倫理的、道徳的な

価値観を排除しても、従業員満足度を高

めることの方が、理にかなっているで

しょう。


これについても、「手段はどうであれ、

事業が黒字になればよい」という反論を

する方もいると思いますが、従業員満足

度に否定的な方が業績をあげようとする

ときは、単に、従業員を酷使しているだ

けなのではないでしょうか?


さらに、「マクドナルドが従業員満足

を高めることができるのは、大企業だか

らだ」と反論する人がいるかもしれませ

ん。


でも、従業員満足度を高めているのは、

お店単位の活動であり、それを実践する

ためのノウハウも、松下さんが3冊のご

著で惜しみなく公開しています。


今回は、マクドナルドの例で述べました

が、現在の日本で、会社が業績を高める

ための手法は、経営者の方が、より経営

者らしい活動をすることだと私は考えて

います。


これは、私の経験から感じるのですが、

業績の芳しくない会社の経営者ほど、現

場にしがみついて、本来の経営者として

の役割から逃げているように感じていま

す。


(ご参考→ https://goo.gl/8cR5mY

 

 

 

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住宅を手放さないようにするには

私は、よく、事業の先行きが芳しくない会

社の経営者の方から、もし、会社が倒産し

ても、自分の自宅を手放さないですむ方法

はないかということを相談されます。


これについては、私は、法律上認められる

可能性はあるとしても、実質的には不可能

であるか、または、筋違いだと思っていま

す。


業績が芳しくなく、銀行から多くの融資を

受けている会社では、社長が自宅を持って

いる場合は、ほぼ、その自宅は融資のため

の担保となっています。


そのため、その自宅を第三者に売却するこ

とは、実質的にできません。


そこで、銀行に隠れて、家族や親類の名義

で住宅を入手するという方法が考えられま

す。


仮に、これを法律的に詐害行為(銀行など

の債権者を害する行為)とみなされないよ

うに行うことができたとしても、片や、銀

行に対しては会社の支援を求めておきなが

ら、経営者は会社ではなく自分のために蓄

財をすることは、道義にもとる行為でしょ

う。


それをあえて行おうとする方については、

その是非を議論する意味はありません。


別の方法として、セールアンドリースバッ

クという方法があります。


ここでいうセールアンドリースバックと

は、事前に銀行に承認を得たうえで、ま

ず、経営者の自宅を第三者に売却します。


このとき、売却の条件として、売却後は、

当該住宅を売主に賃貸することを条件にし

ます。


こうすることによって、経営者は自宅の所

有権は他人に渡しますが、自宅には引き続

き住み続けることができます。


しかし、これは、実質的には、その経営者

に対して融資をすることと同じです。


すなわち、住宅の売買額が融資額に相当

し、家賃が毎月返済額に相当します。


業況が芳しくない会社の経営者に対して、

形式的には住宅の売買であっても、実質的

な融資をしようとする人は、なかなか現れ

ないでしょう。


そして、もし、経営者が、セールアンド

リースバックをした住宅の家賃を支払うこ

とが可能であるならば、本来は、その金額

を事業改善や、銀行への融資返済にあてる

ことが本筋でしょう。


ここで、「それでは、会社経営者は、銀行

に自宅を奪われるしかないのか」と考える

方もいるでしょう。


それはその通りです。


でも、そのような状態に至らないようにす

ることは可能だったはずです。


私は、業績がよいうちから事業の改善に心

がけるべきと、常にお伝えしています。


しかし、会社の赤字が数か年続いた状態の

会社のほとんどは、専門家に頼って業績を

改善しようとはしません。


そして、債務超過やそれに近い状態になっ

て、危機的な状況に至ってから、コンサル

タントなどになんとかして欲しいと相談に

訪れたりします。


でも、そのような状態では、選択の余地は

残っていません。


常に自社の状況を正確に把握し、一日でも

早く、どうすることもできなくなるような

状況に至らないようにすることが、経営者

に求められているのです。


厳しいようですが、会社がどうにも動きを

とれなくなった状態になったとき、自分が

被害者であるかのような言動をする経営者

を見ることがありますが、私は、会社をそ

のような状況になるまで至らしめた責任

は、まず、経営者にあると思います。

 

 

 

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代位弁済に関する誤解

銀行との融資取引で、代位弁済というと、

ほとんどが、信用保証協会が保証した融資

を、融資を受けた会社に代わって返済する

ことを指します。


(希ですが、例えば、業績の芳しくない会

社を支援するために、別の会社がその会社

の融資を代位弁済する場合など、信用保証

協会以外の会社が代位弁済をすることもあ

ります)


この代位弁済は、当然、資金繰が行き詰っ

て融資を返済できなくなった会社に対して

行われますが、銀行は、可能な限り独力で

融資を返済して欲しいと思っているので、

代位弁済による融資回収は最終的な手段と

考えています。


(念のために補足すると、融資を代位弁済

してもらった会社とその連帯保証人は、そ

の後、破産しない限り、代位弁済しても

らった金額と、その金額に対してかかる遅

延損害金を、信用保証協会に支払う義務が

あります)


しかし、私がこれまでお会いしてきた何人

かの会社経営者の方から、“融資コンサル

タント”なる人から、代位弁済を受けるこ

とを提案されたことがあるとききました。


その理由は、銀行から融資を受け続けてい

ると、毎月多額の融資返済を続けなければ

ならないが、信用保証協会に代位弁済をし

てもらうと、1か月に1万円~数万円を支

払いさえすればよくなるので、資金繰が楽

になるというものです。


この点については、事実です。


しかし、いったん、代位弁済を受けてしま

うと、事業を回復させることは実質的に不

可能になります。


なぜなら、新たな融資を受けることがほと

んど不可能になるからです。


その最大の理由は、信用保証協会に代位弁

済してもらった債務(これを求償債務とい

います)が残っており、仮に、銀行が新規

融資を行っても、その支払いに充てられて

しまう可能性が高い、すなわち、実質的に

融資の借換が行われてしまうことになるか

らです。


さらに、仮に、信用保証協会に求償債務を

すべて払い終わったとしても、「代位弁済

を受けた会社」という履歴がずっとついて

まわり、銀行は新たな融資に極めて消極的

になります。


(この説明も、必ずしも正確ではありませ

んが、おおよそこの通りであるとご理解く

ださい)


ところで、前述の“融資コンサルタント

は、融資を受けられなくなっても、事業を

続ける方法はあると説明しているようです

が、そうであれば、それは代位弁済を受け

る前でも実践できるはずです。


そして、もうひとつ、事業を回復させるこ

とができなくなる理由は、融資の返済がき

ついことが事業を回復できない原因ではな

いということです。


というのは、いわゆるリスケジュールを受

けた会社の多くは、実態として、更に事業

の回復が遅くなっていることからもわかり

ます。


リスケジュールも多くの方がご存知と思い

ますが、融資の返済負担が重くなっている

会社が、一時的に銀行への融資の返済を棚

上げし、その間に、事業の回復に集中して

利益を出せるようにしようとする手法のこ

とです。


この手法そのものに問題はないのですが、

実態は、融資の返済が棚上げされたことで

経営者は安心してしまい、業績が回復しな

いまま返済の棚上げしてもらえる期限を迎

え、再度、リスケジュールの延長をしても

らっている会社が多いようです。


そのような会社の経営者は、「会社の資金

繰が逼迫しているから、思う通りの事業展

開ができず、業績を回復させることができ

ない」と考えているようです。


これは表向きはもっともらしく聞こえます

が、私の経験からは、そのように考えてい

る経営者の方は、単に会社を延命し、その

間に経営環境の風向きが自社の都合のいい

方向に変わってくれないかという、極めて

薄い希望しか持たず、現実から逃げている

だけだと感じます。


よって、代位弁済で資金繰を改善できるか

らとか、リスケジュールで資金繰を改善で

きるからといって、そのような手段をとっ

たとしても、実際には事業の改善が進むこ

とは少ないようです。


今回の記事の結論は、代位弁済を受ける、

というよりは、そのような状況に至ってし

まった会社は、ほぼ、事業の再生は困難で

あるということです。


少なくとも、事業を再生するために代位弁

済を受けるということは非現実的です。


代位弁済を薦める“融資コンサルタント

は、恐らく、会社の将来のことなどは一切

関心がなく、経営者に甘い言葉を投げかけ

てそそのかし、自分が報酬を得る機会だけ

を狙っているのでしょう。


なお、詳細な説明は割愛しますが、例外的

に、第二会社方式で事業再生を行うとき

は、事業再生を受ける会社が信用保証協会

から代位弁済を受けた後に融資を受けると

いうことがあります。


これは、事業の公共性が高いなどといった

一定の条件があるときに行われるものであ

り、どのような会社でもこの方法で事業再

生ができるという訳ではありません。

 

 

 

 

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100点を目指さない

先日、ある事業主の方とお話をしていて、

その方にとても共感していただいたことが

あるので、共有させていただきたいと思い

ます。


それは、経営者の方は、100点を目指す

べきではないということです。


経営者は、業績を向上させるために、常に

目標の100%以上を目指さなければなら

ないと考えている方が多いと思います。


例えば、新製品を開発し、その販売目標を

1年間で1万個と設定したとします。


そして、経営者としては、早く1万個の目

標を達成させ、さらに、1つでも多くの製

品を販売したいと考えることでしょう。


しかし、新製品の販売目標は、会社として

重要とはいえ、販売部の目標です。


もし、経営者が、販売部につきっきりの状

態で(会社によっては、社長が販売部長的

な会社もあると思います)、販売部の従業

員と同じように、1万個の販売目標の達成

のための活動だけをしたとしたらどうなる

でしょうか?


例えば、多くのライバルと競合している顧

客から、製品価格の値下げを要求され、そ

れに応じるために、製造部の従業員の方に

新製品の単価引下げができるよう指示した

り、さらには、材料の仕入先にも単価引下

げを要求するとします。


そうした結果、新製品の販売価格を下げ、

販売目標は達成できたものの、製造部の従

業員の士気が下がっていたり、仕入先との

協力関係にひびが入っていたり、新製品の

販売単価引下げがひびいて会社全体の利益

が減少したりしてしまうかもしれません。


先ほど、新製品の販売目標は販売部の目標

と書きましたが、それを達成したとして

も、会社全体の目標である利益増加に貢献

していなければ、販売目標の達成は意味の

ないものになります。


もしかしたら、新製品は、採算のとれる単

価で購入に応じてくれた顧客に対してだけ

販売していれば、仮に、その個数が70個

だけだったとしても、会社全体の利益は増

加していたかもしれません。


そうすれば、従業員の士気が下がることを

避けられたかもしれないし、仕入先との良

好な関係も維持できていたかもしれませ

ん。


ここまでの説明を要約すると、経営者の役

割は、販売部の目標達成(部分最適)だけ

を考えずに、会社全体の目標達成(全体最

適)を第一に考えなければならないという

ことです。


したがって、全体最適のためには、ひとつ

の部門の目標が、100点にならないこと

もあるということです。


逆に、ひとつの部門の目標を達成すること

を優先すると、会社全体の得べかりし利益

を引き下げてしまうかもしれません。


今回は、単純な例を示しましたが、実際の

会社はもっと複雑な要因が絡み合ってお

り、経営者の方は、さらに難しい判断を行

わなければならないでしょう。


ただ、一般的に、会社の利益は売上を増や

すことと、単純に考えられがちですが、実

際には必ずしもそうではないので、多面的

に会社の状況を把握しながら、全体として

最適な事業活動を行うための意思決定、部

門間の調整などを行うことが、経営者の役

割になるということが、今回の記事の結論

です。

 

 

 

 

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採用の決断

先日、従業員が10名ほどの、ある製造業

の会社経営者夫婦とお話する機会がありま

した。


その中で、先日採用した、ある従業員の方

についてお話をしてもらいました。


その方は、採用面接のときに、ひとことも

お話しなかったそうです。


そして、おそらく公共職業安定所の方から

聞いていたのだと思いますが、他の会社の

採用面接でもひとこともしゃべらなかった

ので、何社からも不採用が続いていた方

だったそうです。


しかし、その経営者の方は、その応募者の

方が、自動車運転免許証を取得していたこ

とから、きちんとものごとをやり遂げるこ

とができる人だと考え、採用することにし

たそうです。


そして、その方は、採用後は真面目に働き

続け、一度も欠勤したことがないというこ

とでした。


おそらく、他の従業員の方の中には、突然

欠勤する人もいるからなのかもしれません

が、その経営者の方は、その従業員の方を

採用してよかったと感じているようです。


ここまでご紹介したできごとは、人には必

ず長所があるから、採用は前向きに考える

ことが大切だ、ということを伝えるために

書いたと受け止められるかもしれません。


でも、私がお会いした経営者の方と同じよ

うなことをしている経営者の方は、すでに

たくさんいらっしゃると思うので、私があ

えて薦めるまでもないと思っています。


では、なぜ、この記事に書いたのかという

と、少ないチャンスを活かそうとすること

が大切だと思ったからです。


前述のお話の従業員の方は、結果として真

面目に働く人でしたが、もしかしたら、あ

まり仕事に熱心でない人であったり、他の

従業員の方とうまく仕事ができない人だっ

たかもしれません。


それでも、そのリスクを承知で前述の経営

者の方は採用する決断をしました。


もし「採用で失敗したくない」と考えてい

たとしたら、他の会社のように、不採用と

していたことでしょう。


そして、会社経営というのは、このような

経営者の方の決断の積み重ねが基本になっ

ていると私は考えています。


話が飛躍するかもしれませんが、最近、官

庁で障害者の雇用者数を水増ししていたこ

とが分かりました。


確かに、障害者の方の雇用数は法律で義務

付けられていますが、その前に、どんな人

にも活躍できる機会をつくろうということ

が法律の主旨であり、官庁こそ、そのお手

本を示す立場にあると思います。


でも、水増しをした官庁は、恐らく、法律

に満たない数の障害者の方を受け入れるべ

きところを、それを億劫がって、数字だけ

とりつくろったのでしょう。


法律違反したことも問題ですが、法律の主

旨を理解するどころか、障害者の方の権利

を踏みにじる行為の方が、もっと問題だと

私は考えています。


そして、官庁がそのようなことをする背景

には、前例踏襲という悪しき慣習に支配さ

れているからではないでしょうか?


話を戻して、前述の従業員の方は、障害者

の方ではありませんが、人とのコミュニ

ケーションに難がある人であり、経営者の

方はあえてその方を採用するという、英断

をしています。


そして、失敗の可能性も許容して、なんら

かの決断をすることなしには、事業は前進

しないというのが、この記事の結論です。


文字数の兼ね合いで詳細な説明は割愛しま

すが、「前例踏襲」するだけで事業が発展

するのであれば、経営者は不要です。

 

 

 

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