鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

住宅を手放さないようにするには

私は、よく、事業の先行きが芳しくない会

社の経営者の方から、もし、会社が倒産し

ても、自分の自宅を手放さないですむ方法

はないかということを相談されます。


これについては、私は、法律上認められる

可能性はあるとしても、実質的には不可能

であるか、または、筋違いだと思っていま

す。


業績が芳しくなく、銀行から多くの融資を

受けている会社では、社長が自宅を持って

いる場合は、ほぼ、その自宅は融資のため

の担保となっています。


そのため、その自宅を第三者に売却するこ

とは、実質的にできません。


そこで、銀行に隠れて、家族や親類の名義

で住宅を入手するという方法が考えられま

す。


仮に、これを法律的に詐害行為(銀行など

の債権者を害する行為)とみなされないよ

うに行うことができたとしても、片や、銀

行に対しては会社の支援を求めておきなが

ら、経営者は会社ではなく自分のために蓄

財をすることは、道義にもとる行為でしょ

う。


それをあえて行おうとする方については、

その是非を議論する意味はありません。


別の方法として、セールアンドリースバッ

クという方法があります。


ここでいうセールアンドリースバックと

は、事前に銀行に承認を得たうえで、ま

ず、経営者の自宅を第三者に売却します。


このとき、売却の条件として、売却後は、

当該住宅を売主に賃貸することを条件にし

ます。


こうすることによって、経営者は自宅の所

有権は他人に渡しますが、自宅には引き続

き住み続けることができます。


しかし、これは、実質的には、その経営者

に対して融資をすることと同じです。


すなわち、住宅の売買額が融資額に相当

し、家賃が毎月返済額に相当します。


業況が芳しくない会社の経営者に対して、

形式的には住宅の売買であっても、実質的

な融資をしようとする人は、なかなか現れ

ないでしょう。


そして、もし、経営者が、セールアンド

リースバックをした住宅の家賃を支払うこ

とが可能であるならば、本来は、その金額

を事業改善や、銀行への融資返済にあてる

ことが本筋でしょう。


ここで、「それでは、会社経営者は、銀行

に自宅を奪われるしかないのか」と考える

方もいるでしょう。


それはその通りです。


でも、そのような状態に至らないようにす

ることは可能だったはずです。


私は、業績がよいうちから事業の改善に心

がけるべきと、常にお伝えしています。


しかし、会社の赤字が数か年続いた状態の

会社のほとんどは、専門家に頼って業績を

改善しようとはしません。


そして、債務超過やそれに近い状態になっ

て、危機的な状況に至ってから、コンサル

タントなどになんとかして欲しいと相談に

訪れたりします。


でも、そのような状態では、選択の余地は

残っていません。


常に自社の状況を正確に把握し、一日でも

早く、どうすることもできなくなるような

状況に至らないようにすることが、経営者

に求められているのです。


厳しいようですが、会社がどうにも動きを

とれなくなった状態になったとき、自分が

被害者であるかのような言動をする経営者

を見ることがありますが、私は、会社をそ

のような状況になるまで至らしめた責任

は、まず、経営者にあると思います。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180831204001j:plain