鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

見えない努力

先日、経営コンサルタントの一圓克彦さん

が、ある焼肉店に痛く感動したと書いてい

るブログを読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/pGmnCG


概要は、一圓さんが知人の経営者につれて

いってもらったB級グルメの人気店は、味

もさることながら、換気扇、窓、壁、畳が

きれいに掃除されていた。


これは、毎日、時間をかけて掃除している

ということがわかるが、そういった姿勢

が、料理の味を工夫したり、接客の仕方を

改善したりするという行動となって表面化

している、というものです。


ところで、この記事を読んだとき、私は、

かつて、近所の病院で見た光景を思い出し

ました。


というのは、家族が急病となり、急患専用

の入り口から病院に入っていったとき、私

たちと入れ違いに、命が絶えてしまった、

ある患者さんが、霊柩車に乗せられて、病

院から出ていくところでした。


あとで分かったことですが、その患者さん

は、交通事故に遭った方のようで、病院に

運ばれたものの、手遅れだったようです。


そして、その患者の方を送り出した看護師

の方たちは、霊柩車が見えなくなるまで、

ずっと深々く頭を下げていました。


もちろん、看護師の方たちが頭を下げてい

る様子は、患者さんはもちろん、ご遺族の

方にも見えていないということは明らかで

あったにもかかわらず、看護師さんたちは

ずっと頭を下げていたわけです。


それでは、看護師さんたちがなぜ頭をずっ

と下げていたのかということは、直接は看

護師さんたちにはきいていませんが、おそ

らく、看護師さんたちの矜持があったから

ではないかと私は考えています。


命を絶ってしまったとはいえ、患者さんを

最期まで尊重する姿勢だったのであり、そ

れが、普段の患者さんに全力で接すること

につながっているのでしょう。


と、ここまで書いてきた内容は、見えない

ことにも努力を惜しまないことが、業績を

向上させることになるということを伝えた

いというように感じるかもしれません。


しかし、今回の記事の結論はそうではあり

ません。


実は、私は、経営コンサルタントとして、

「業績を上げるには、顧客には見えないか

らといって、手抜きをしてはいけません」

というような内容を、顧問先の方には言わ

ないようにしています。


その理由はいくつかありますが、そのひと

つは、「見えないところにも手を抜かな

い」というような、格言にも近い助言は、

わざわざコンサルタントが言わなくても、

多くの経営者の方は、すでに知識として頭

の中には入っているからです。


ですから、それをコンサルタントからきい

たとしても、ありがたみを感じることには

ならないでしょうし、仮にコンサルタント

がそれを伝えたとしても、それによって経

営者の方の行動が変わることはないでしょ

う。


もうひとつの理由は、会社の経営品質の成

熟度が高くないと、見えない努力を惜しま

ないという行動を実践することができない

と私は考えているからです。


この、経営品質の成熟度は、経営コンサル

タントの望月広愛さんが、「文句ばかりの

会社は儲からない!」

( http://amzn.to/2fiuPhw )という本に書

いているものですが、例えば、顧客との対

応については、経営成熟度を高めていくに

したがって「客のいう通りにやっていては

会社がつぶれてしまう」→「顧客にはいろ

いろな人がいるから、何を言われてもしか

たない」→「重要な顧客はどういう顧客か

ということを明らかにしよう」→「主要な

顧客の期待を追求するようにしよう」とい

うように、変わっていくそうです。


(なお、経営品質の成熟度については、こ

ちらの記事も参考にしてください。

https://goo.gl/SJyTfL


望月さんによれば、経営品質の成熟度を高

めるということは、ひとことでいうと、

「損して得取れ」「短期的視点ではなく長

期的視点に立って利益を獲れ」ということ

だそうです。


「損して得取れ」が賢い方法だということ

を分かっている人は多いと思いますが、で

も、事業で実践できている人は少ないと思

います。


これも、「頭ではわかっているけれど…」

ということだと思います。


そして、「見えない努力が大切」について

も同様に、多くの方が理解しつつも、なか

なか実践できないものだと思います。


よって、業績を高めることを目指して、事

業により高度な手法を採り入れて実践する

ためには、経営品質の成熟度を高めること

が大切だということが、今回の記事の結論

です。


そして、私が事業改善のお手伝いをしてい

る会社には、業績をよくするためのポイン

トである「見えない努力」を実践できるよ

う、経営品質の成熟度を高めることを中心

にご提案しています。

 

 

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いい男がいない

私は、婚活コンサルタントの菊乃さんのブ

ログ記事をよく読みます。


理由は、彼女の人に対する洞察力が著しく

すばらしいと感じているからです。


先日も、「いい男がいない」と悩んでいる

独身女性に関する記事を興味深く拝読しま

した。


(ご参考→ https://goo.gl/skzW5B


主旨としては、いい男がいないと悩んでい

る女性は、出会った男性に対して、「清潔

感がない」「会話が面白くない」など、批

判ばかりしているが、批判ばかりしている

女性は男性から見て魅力的ではない。


また、見事結婚がかなった知人の女性に対

して「どこで結婚相手に出会ったのか」と

きいたりするが、出会った場所が問題なの

ではなく、大切なのはどれだけ結婚に向け

て努力したのかということであって、そこ

には目が向かない。


このような女性は、相手をコントロール

ようとするだけで、自分自身を変える努力

を怠っている、というものです。


この記事を読んだとき、私も似たような経

験があると感じました。


というのは、事業改善のためのご相談者か

ら、「事業が良くなる方法はないか」「こ

れから売れる商品はどういうものか」「良

い人材を得るにはどうすればよいか」とい

う質問を多く受けます。


これらの質問は、一見すると、切実な質問

のように思えます。


しかし、すべての方ではありませんが、中

には、経営者である自分はいままで通りの

やり方を変えるつもりはないが、コンサル

タントであるあなたにもうかるように事業

を変えて欲しい(または、売れる商品を探

して来て欲しい、従業員の能力を高めて欲

しいなど)というように、自分に合わせて

他者や環境を変えようと考えている方も少

なくないと考えています。


一方で、「社長のレベルが会社のレベル」

とよく言われているように、会社は社長自

らが能力を高めようとしないと、業績もよ

くならないと言われています。


だから、社長でありながら、自らは変わら

ずに周りを変えようとしている人は本当に

いるのか、と疑問を感じる方も多いでしょ

う。


これについては、割合としては少ないなが

ら、いわゆる自己中心的な経営者という人

もいるのは事実だと感じています。

 

ただ、それだけでなく、これは、私自身に

も言えることなのですが、会社経営者の方

は自分でも気づかないうちに、自己中心的

になってしまっているということがありま

す。


これもひとつの例ですが、いま、私が制作

しているポッドキャストにゲスト出演して

いただいている税理士の金成祐行先生は、

ご著書の中で、かつて、事務所の職員4人

全員からいきなり退職願いを突きつけられ

たことがあったそうです。


私は、金成先生をとても人徳のある方であ

ると思っているのですが、仕事の忙しさの

あまり、そのときは金成先生はだいぶ独り

善がりになってしまっていたようです。


この事件の結論としては、金成先生は自ら

を省みて、リーダーとしての行動を変える

ことで、職員全員が退職するという危機を

乗り切ったそうです。


今回の記事の結論は、人は、どうしても他

人をコントロールしようとしてしまいがち

なので、特に、経営者であれば、そのこと

が会社の業績に大きく影響してしまうの

で、なおさら注意することが大切だという

ことです。


では、それを防ぐためにはどうすればよい

かということは、また、別の機会に述べた

いと思います。

 

 

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利益額と利益率

よく、「経営者は利益額と利益率のどちら

を重視すればよいのか」という問いかけが

話題になることがあります。


この問いについては、私から見れば、昨年

日本シリーズの優勝チームであるソフト

バンクホークスと、J1リーグ優勝チーム

川崎フロンターレのどちらが強いかと問

われているようなものであり、答えること

が不可能と考えています。


しかしながら、なぜ、前述のように、利益

額と利益率を同じテーブルのせて比較して

しまうようなことが起きるのかという原因

について考えてみました。


ひとつは、事業の展開の方向を明確にして

いないことが原因だと思います。


利益額は絶対的な数値であり、利益率は相

対的な数値です。


すなわち、売上額、利益額も個別の数値で

すが、利益率は売上額と利益額によって導

かれます。


この利益率が使われる理由は、条件が異な

るものを比較するためです。


その条件とは、会計年度、製品、部門など

で比較するためです。


例えば、前々年の売上額が5,000万円

で利益額が400万円のときと、前年の売

上額が6,000万円で利益額が450万

円のときで、どちらが業績が良いかを見る

ときに、ひとつの比較方法として利益率が

使われます。


一方で、単に、絶対的な数値である、利益

額400万円と450万円を比較しただけ

では、数値が多いか少ないかということし

か分かりません。


もちろん、利益額は多い方が望ましいです

が、利益額だけで業績を比較することは、

限定的な判断しか導かれないでしょう。


話を戻すと、事業をより細かく分析しよう

とするときに、利益率を使うことの必要性

が高まります。


では、どのようなときに事業を細かく分析

することになるかといえば、事業を拡大し

ていくときでしょう。


したがって、事業を拡大していこうとする

経営者にとっては、利益率の重要性は高ま

ります。


一方で、事業をあまり大きくせず、小規模

のまま維持しようとする場合は、利益率を

使う必要性は低いでしょう。


事業が小規模な会社では、毎期目指すもの

は、利益率を高くすることよりも、利益額

を多くすることの方が適切といえるでしょ

う。


このように、自社の事業をどのように展開

するかが明確であれば、重視する数値もお

のずと明確になってきます。


もうひとつの原因は、事業管理の優先順位

が低いことです。


前述のような、事業展開を管理するにあ

たって重視すべき数値が何かということ

を、前もって理解しないまま事業を始めた

経営者は、利益額と利益率のどちらが自社

の管理にとって大切かという疑問を持って

しまうのかもしれません。


事業規模の小さい会社の経営者の方は、軸

足が事業にあっても問題はないと思います

が、だからといって、管理がおろそかに

なってもよいということにはなりません。


現在は、事業運営と事業管理のバランスの

よい会社が業績もよくなる時代ですので、

管理のポイントを理解して事業に臨めば、

冒頭にあげた疑問を持つことはなくなるで

しょう。

 

 

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会計の課題を1番目にする

先日、私が制作しているポッドキャスト

ゲスト出演していただいた、税理士の金成

祐行先生から、「顧問先には、営業よりも

会計を1番に考えるように伝えている」と

いうお話を聞きました。


(ご参考→ https://goo.gl/q1vsk7


実は、私は、会計を専門分野のひとつにし

ておきながら、金成先生のおっしゃったよ

うなことは、なかなか口にすることはして

きてきませんでした。


なぜなら、会計は、事業の成果を「お金の

論理」で映すもので、それだけで事業のす

べてを判断してはいけないと思っていたか

らです。


もう少しありていに言えば、会社を評価す

るときは、数字や金銭などの定量的な情報

に偏ってはいけないと考えていたので、ご

相談を受けた経営者の方には、「会計を1

番に考えるように」とは言うことは避けて

きたということです。


一方で、金成先生はなぜ「営業よりも会計

を1番に考えるようにしなさい」と言って

いるかというと、日本の会社では、昔から

会計は軽んじられる傾向にあり、経営者が

会計を最優先に考えるようにするというく

らいがちょうどいいということだからだそ

うです。


この金成先生の考え方も妙になるほどと

思ったのですが、後から考えてみれば、日

本では、経営者は会計をもっと重視した方

がよいと私も感じました。


経営者の方の役割は、それだけがすべてで

はないものの、管理業務が大きな部分を占

めているということは誰もがご理解される

と思います。


その管理業務は、購買管理、生産管理、販

売管理、労務管理、財務管理などがありま

す。


そして、これらのすべての管理には、「数

字」が使われます。


もちろん、数字だけがすべてではありませ

んが、やはり重要な部分を占めます。


ここで、もし、数字に向き合っていない会

社経営者がいるとすれば、果たして、財務

管理は後回しにはしているけれど、生産管

理、販売管理は優先しているというように

は言えないのではないでしょうか?


これを言い換えれば、中小企業では、「数

字に向き合う=管理業務を行う」というこ

とになっていると思います。


金成先生は「会計を1番」とお話ししてお

られますが、財務管理を通して、営業の状

況、生産の状況なども管理することは前提

になっておられると思います。


会計を通しての管理は、もちろん、財務管

理が中心になると思いますが、それでも事

業の多くの部分を管理の対象とすることに

なるでしょう。


そして、財務管理だけではものたりないと

限界を感じるような水準になったときは、

さらに、生産管理、営業管理にもっと直接

的にアプローチすればよいと思います。


今回の結論は、経営者は数字に向き合うこ

とは避けられず、数字に頼らない高度な管

理を目指しているとしても、まず、数字で

の管理方法を習得しなければならないとい

うことです。

 

 

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物理的定義と機能的定義

先日、九州大学ビジネススクール目代

史准教授が、ポッドキャスト番組で、ファ

イブフォース分析に関するお話をしておら

れました。


(ご参考→ https://goo.gl/fv4ciY


ファイブフォース分析は、ポーターの提唱

した分析手法で、経営戦略の立案にあたっ

て、その会社の属する業界の経営環境を、

5つの要因から分析するものです。


その5つの要因とは、供給企業の交渉力、

買い手の交渉力、競争企業間の敵対関係、

新規参入業者の脅威、代替品の脅威のこと

ですが、私は、最近は、代替品の脅威に関

する分析が重要になってきていると考えて

います。


前述の番組の中では、目代先生は、カジュ

アル衣料の代替品は、衣料品に限らないと

指摘しておられます。


すなわち、カジュアル衣料品は、衣服が欲

しい人が購入すると考えられがちですが、

その場合、フォーマルウェアやスポーツ

ウェアが代替品ということになります。


しかし、最近は、カジュアル衣料品を買う

人は、必ずしも衣料品そのものを求めてい

るのではなく、余暇のショッピングをした

いというニーズを満たすために購入されて

いるということが分かっているそうです。


そうであれば、余暇を過ごす他の手段も代

替品となるので、カジュアル衣料品店

とっては、カフェや習い事なども脅威にな

り得るということです。


ところで、カジュアル衣料品を衣料品を販

売する事業という見方をすることを、物理

的定義といい、一方、ショッピングを楽し

む手段を提供する事業という見方をするこ

とを機能的定義といいます。


このことは容易に理解されることと思いま

すが、一方で、実際の事業の現場では、自

社製品のライバルを物理的定義という狭い

範囲で考えられてしまいがちのようです。


その原因はいくつも考えられるのですが、

最も大きな原因は、自社の事業の範囲が狭

い方が、事業に携わる側としては楽である

ということでしょう。


確かに、自社の事業の範囲を広げすぎるこ

とも問題なのですが、範囲を狭くしすぎる

ことも、顧客の真のニーズをとらえること

ができなくなります。


最近の例では、シダックスが、カラオケは

グループで楽しむものという前提で事業を

続けてきたことから、ひとりカラオケの

ニーズをつかみきれず、カラオケ事業を運

営する子会社を売却することになったとい

う例があります。


経営者にとっては、事業へのこだわりがあ

り、そのこだわりが利益の源泉となる場合

もありますが、それと同時に、顧客のニー

ズを的確につかんでいるか、思わぬところ

に代替品の脅威が潜んでいないかというと

ころにも注意しなければなりません。


このような、自社事業の戦略の正しさを常

に検証することは、経営者の重要な役割で

す。

 

 

 

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KPIの活用

いま、ビジネスパーソンの方たちとお話し

をしていると、KPI( Key Performance

Indicator ,重要業績評価指標)という

言葉を、たびたび耳にするようになりまし

た。


私としては、多くの会社で活用して欲しい

と考えている、バランススコアカード(B

SC)と関連する言葉であるKPIが浸透

していることはうれしいと感じています。


ただ、「自社でKPIを使っている」と述

べている人であっても、BSCを前提とし

ている訳ではなく、単に自社で重要視して

いる目標数値という意味合いで使っている

ようです。


そのことが直ちに誤っているわけではない

ものの、せっかく「KPIを導入」してい

るのであれば、私はもう少し、本来のKP

Iに近い使い方をしてもらえればと考えて

います。


本来のKPIは、BSCを導入している会

社が立案した経営戦略を実践するにあたっ

て、その戦略がどれくらい奏功しているか

を測るための指標です。


例えば、BSCを導入して業績を改善した

米国のサウスウェスト航空では、定時運行

を行うことで顧客満足度を高めるという戦

略を実施し、それを測るためのKPIを定

刻離着率に、そしてその目標値を90%と

しました。


もちろん、KPIの目標を達成することが

望ましいのですが、本来はKPIの目標を

達成することではなく、その戦略である、

顧客満足度を高めることが最終的な目標で

す。


ただ、KPIの特徴は、戦略がどれくらい

奏功しているかを測定するということだけ

でなく、さらに上位の戦略やKPIと連関

しているということです。


前述のサウスウェスト航空の例では、定時

運行によって、顧客を増加させることや、

航空機を減らすことを戦略とし、それぞれ

のKPIに売上高、リース料を設定してい

ます。


したがって、定刻離着率というKPIは、

売上高やリース料という、さらに上位のK

PIを支える指標になっています。


すなわち、売上高を増やしたり、リース料

を減らすには、定刻離着率を高めることで

達成しようとしているわけです。


そして、売上高が増加したり、リース料が

減少すれば、最終的な目標値である、KG

I( Key Goal Indicator ,重要目標達成

指標)を高めることになります。


ちなみに、これまでの説明でわかる通り、

KGIはKPIの最上位にある指標であっ

て、それぞれ個別に設定されるのではな

く、まず、KGIを達成するための第一段

階のKPIが設定され、そのKPIを達成

するために、さらに第二段階のKPIが設

定されるというように、階層的になってい

る点が特徴です。


このように、個々のKPIが達成されるこ

とで、KGIも達成されるという点が、単

なる重要な目標値と異なる点です。


そこで、私は、いきなりBSCを導入する

ことが難しい会社に対しては、KGIとK

PIの設定だけを提案しています。


多くの場合、KGIは利益額となります


が、その利益額を増加させるには、いくつ

かの方法があります。


売上を増加させたり、粗利率を高めたり、

回転率を増加させたり、経費を減らしたり

といったいくつもの方法があります。


そして、それらのKPIを階層化していく

と、やがて、部門や従業員個人で達成すべ

きKPIに行きつきます。


そして、その部門や個人のKPIを、その

部門や個人のKGIとして、さらに、部門

や個人の達成すべき目標としてのKPIを

階層化していきます。


こうすることで、単にいくつものお互いに

無関係な目標が与えられるということでは

なく、お互いに連関性のある有機的な目標

が与えられることになり、的を絞った活動

ができるようになるほか、自分の達成すべ

き目標が、会社全体の目標につながってい

るということが明確になるので、士気の向

上にも寄与します。


ただし、注意する点が2つあります。


ひとつは、個々人の目標と会社全体の目標

の関係が明確になることは、仮に、会社全

体の目標が達成しなかったときに、その原

因もどこにあるのかも明確になります。


そのことが原因で従業員の士気が下がるこ

とのないよう、経営者の方は、達成しそう

にないKPIがある場合は、その部門や個

人を支援したり、KPIの設定が適切で

あったかどうかを検証したりする必要があ

ります。


もうひとつは、KPIを多くしすぎないこ

とが大切です。


KPIを多くしてしまうと、数字の達成だ

けに気を取られてしまい、本来の目標を見

失ってしまう可能性も高まります。


とはいっても、どれくらいのKPIが適切

かということも、一概には述べられません

が、過度にKPIだけを重視することのな

いように留意しなければなりません。

 

 

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指示は理由とセットにすると理解しやすい

経営者の方が自らの方針に従って人材を育

成したり、事業活動での従業員の方の動き

方を細かく指示することは、経営者の方の

思いを事業を通して実現するために、当然

のことです。


ところが、従業員の方たちが、経営者の方

の思いを汲み取ってくれたり、経営者の方

の方針にしたがって自立的に動いてくれる

ようになるになるまでには、ある程度の時

間が必要になります。


例えば、接客業であれば、最初は礼儀正し

さ、親切さというところからスキルを高め

ていき、それが定着してから自社の独自性

を身に着けて行ってもらうという手順を踏

むことになるでしょう。


そして、これらの基本的な手順を踏むこと

さえ、なかなか思うように進まないところ

が、多くの経営者の方たちの悩みとなって

いると思います。


そこで、この育成期間をどうやって短くし

ていくかということが会社経営における課

題の大きな部分を占めることになると思う

のですが、私は、基本的に育成期間は短く

はならないし、目標に到達しそうになって

も、また、新たな目標が現れるので、育成

自体は半永久的に続くものだと思っていま

す。


とはいえ、そうであっても、より効率的な

育成が望まれる訳ですが、東京ディズニー

リゾートを運営するオリエンタルランド

OBの福島文二郎さんのご著書「9割がバ

イトでも最高のスタッフに育つディズニー

の教え方」( https://amzn.to/2xGUqNg )

には、それを実現するために参考となる例

がいくつも書かれていました。


その中で、私が印象に残った点を2点ご紹

介したいと思います。


ひとつめが、指示をするときは必ず理由も

伝えるということです。


具体的には、東京ディズニーリゾート(T

DR)のカストーディアル(清掃担当者)

の育成では、次のように清掃の仕方を教え

ているそうです。


「特別なケースを除き、肩・腰・膝・くる

ぶしが一直線になるように立つ→体に負担

がかからないから。


ストパン(ちりとり)を持つときは、必

ずとってのところを持って、腰骨のあたり

につけて持ち、箒はちょっと前の方に持つ

→道具がゲストにあたらないようにするた

め。


ごみは箒で掃くのではなく、はじくように

とる→清掃作業が早くなり、見た目もよい

から。


汚物はすぐに白いペーパータオルで覆う→

ゲストに不快な思いをさせななくてすみ、

また、ペーパータオルがあれば誤って踏ん

でしまうことを防ぐことができるから」


この、指示と理由をセットにするというの

は、当たり前のようで、実はなかなか実践

することは難しいと私は感じています。


というのは、指示をする人は、指示そのも

のを納得している(または、理由が明確だ

と感じている)ので、それを他者に伝える

時は、理由を伝える必要性が低いと感じて

いたり、または、指示を伝えればその理由

も伝わるだろうと考えてしまいがちです。


ところが、自分が何かを指示したとき、改

めてその指示が必要な理由の説明を求めら

れると、意外とその理由を説明できないこ

ともあります。


すなわち、自分にとって当たり前のこと

は、必ずしも他者からみても当たり前のこ

ととは限らないので、指示をする側は、手

間がかかりますが、指示する内容の理由も

いつも説明できるように心がけることが、

相手にもすんなり受け入れられることにつ

ながると思います。


また、理由を考えてみたら、実は、意味の

ないことをこれまで指示していたというこ

とに気づくこともあるかもしれません。


そのよう場合は、気づかずに行っていた無

駄な指示を取り除くことにもなります。


もうひとつは、価値観を共有するというこ

とです。


この、価値観を共有するということはやや

抽象的ですが、もう少し具体的に言えば、

共通に理解する部分を広げるということで

す。


そして、この共通に理解する部分を広げる

というのは、お互いの情報を共有すること

であり、福島さんは、そのためには、上司

と部下の間でお互いに話をよく聞くことが

必要になると述べておられます。


これも多くの方は重要性を理解されると思

いますが、なかなか時間が取れないという

理由で、上司が一方的に部下に話をすると

いうことになりがちなのが現実ではないで

しょうか。


そうすると、会社は、上司の価値観だけで

動くことになり、指示を受けた部下は、受

動的にしか動けなくなります。


部下に上司の意図を汲んで自立的に仕事を

して欲しいと望むのであれば、上述の価値

観の共有という過程は欠かせません。


以上、2点、すなわち指示と理由をセット

で話す、価値観を共有するということをご

紹介したのですが、これらは当然すぎて、

真新しいことと感じない方が多いと思いま

す。


というのは、福島さんのご著書のAmaz

onレビューを見たところ、5段階評価の

3.3となっており、あまり高いものとは

言えないものとなっていました。


それは、同書を低く評価している方も多

く、そのような方の評価は、当たり前のこ

とが書かれているということが理由のよう

です。


私もある意味、当たり前のことが書かれて

いるとは思いますが、福島さんは、この当

たり前のことをTDRで実践されてこられ

た点に、本を読む側が価値を感じるべきだ

と思います。


これは意見が分かれることかもしれません

が、恐らく、当たり前のことしか書かれて

いないと同書を評価した方は、何かTDR

ならではの特別の育成法が書かれているこ

とを期待していて、その期待が外れたから

低く評価したのではないかと想像します。


私もコンサルタントとして、顧問先の会社

の人材育成に関わってきましたが、福島さ

んのご著書に書かれている当たり前のこと

を実践することでさえ、実際にはとても難

しいと感じています。


人材育成は有機的な存在である人が対象で

あるだけに、文字だけで、そして座学だけ

で学ぶことは不可能です。


まず、当たり前のことを着実に実践するこ

とが、遠回りのようで最短の方法だと私は

考えています。

 

 

 

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